行きつけの手羽先チェーンに、皮肉たっぷりの苦情の手紙を書いた。きょうだいを笑わせるのが目的で、送るのはおまけのようなものだった。ところが数週間後、本社から「お会いしたい」と電話が来る。改善案を求められたと思い込んだ2人が、図解とキャッチコピー、それに特許まで出願した紙皿を抱えて店に行くと、待っていたのは社長をはじめとする幹部8人だった。2019年のアメリカで起きた、気合いの空回りの告白である。
※注:ここでいう手羽先(チキンウィング)は、揚げた鶏の手羽に辛いソースなどをからめた料理。アメリカでは、スポーツ中継を見ながら飲み食いする店(スポーツバー)の定番で、食べ終えると手もとに骨が残る。配達証明付きの郵便は、相手が受け取った記録が残る郵便のこと。
何をやらかした?
📌 行きつけの手羽先チェーンに送った皮肉まじりの苦情の手紙が、本社の幹部たちにまで届いた。「お会いしたい」と言われて改善案を求められたと思い込み、きょうだいと2人で、図解・解決策・キャッチコピーに、特許まで出願した紙皿を用意して面会に乗り込んだ。ところが、そろって現れた幹部8人は、案を聞きに来たのではなかった。手紙を受けてすでに実行した改善を、見せに来ていたのだ。用意した提案は、口を開く前から出番を失っていた。
事の発端
家族で通い詰めた手羽先の店
投稿者の一家は、全国チェーンの手羽先(チキンウィング)店に、ほとんど住んでいると言っていいほど通っていた。妻も子どもたちも大のお気に入り。ただ投稿者だけは、我慢ならない点がいくつかあって、少しずつ限界に近づいていた。
なかでも大きかったのが、料理の出し方だ。皿というものが一切出てこない。出てくるのは、厚紙を舟の形にした、わびしい小さな入れ物(以下「ボート皿」)だけ。投稿者いわく「スポーツバーというより、チャッキーチーズで出てきそうな代物」。チャッキーチーズは、子ども向けの遊び場がついたピザ店チェーンである。
きょうだいを笑わせるために書いた手紙
とうとう我慢できなくなり、投稿者は苦情の手紙を書いた。ユーモアをたっぷり盛り込み、本気の指摘をいくつか混ぜた、皮肉まじりの一通である。もっとも本人によれば、ほとんど、きょうだいのアリー(女性)を笑わせるためだけに書いたもので、送るかどうかは二の次だった。
「すべてを変える一手を教えよう……皿だ!」
投稿者がコメント欄に載せた手紙の実物(店名は黒塗り)を見ると、日付は2019年2月7日の夜。料理に不満はなく「問題はそれ以外の全部」だと断り、店員がなかなか席に来ない、ビールがグラスの上まで入っていない、と並べていく。「私がビールに何を求めているか、ご存じだろうか。……なみなみ入ったビールだ」。
そして本題に入る。「すべてを変える一手を教えよう……皿だ! あのばかげた小さなボート皿は、冗談としか思えない。私は52歳の男であって、チャッキーチーズの誕生会に来た8歳の子どもではない」。皿が無理なら、せめてボート皿を1人に2つ。「1つは食べる物用、もう1つは骨の山用だ」。
結びには、こうある。「本気で受け止めるつもりなら、お偉いさんを誰か、こっそり飛行機で寄こしてほしい。一緒に店へ行って問題点を見せたうえで、解決策を考える会を無料で開いてあげよう」。
アリーの一声で、配達証明付きの郵便に
手紙を見せられたアリーは笑い転げた。そして、配達証明付きの郵便で送るべきだ、そうすれば本社の誰かが嫌でも読むことになる、と言って譲らなかった。投稿者はのちに、これこそがすべてを動かしてしまった間違いだった、と振り返っている。
やらかしの一部始終
本社からの電話と、万全すぎた準備
数週間後、チェーンの本社から投稿者に電話が来た。「お会いしたい」という。投稿者はすぐアリーに電話した。自分たちが何を引き起こしたのか、2人ともさっぱり分からなかった。
2人は、手紙に書いた問題の解決に力を貸してほしいのだろう、と受け取った。そして投稿者いわく「考えうるかぎり最悪の決断」をする。本格的な提案(プレゼン)を用意したのだ。図解、解決策、キャッチコピー、さらには特許を出願したアイデアまで。「準備は万全だった。たぶん、万全すぎた」。
真ん中に柵が立つ紙皿「ディヴィ・ディッシュ」
そのアイデアのひとつが「ディヴィ・ディッシュ」。真ん中に、折って立てる小さな柵(庭を囲う、先のとがった板の柵のミニチュア)が付いた紙皿だ。食べ終えた手羽先を柵の向こうへ放り込めば、まだ手をつけていない手羽先が「骨置き場」に触れずにすむ。本人の評価は「天才的か。その通り。ばかばかしいか。その通り。特許は取ったのか。残念ながら、その通り。私たちの財布は、いまも後悔している」。
投稿者はコメント欄にその図面も載せていて、特許は出願から認められるまでに1年以上かかった、と補足している。
待っていたのは幹部8人
それから2か月後。2人が約束の店に入ると、チェーン全体の経営幹部が上から8人そろっていた。会社のトップである最高経営責任者(CEO。以下「社長」)、業務全体を取りしきる最高執行責任者(COO。以下「業務の責任者」)、副社長……。会社は幹部をまるごと飛行機で呼び寄せていたのだ。
「客の苦情をここまで真剣に受け止める会社は、めったにない。そこは認めたい」と投稿者は書く。だが同時に、頭の中はパニック一色だった。皮肉まじりの手紙1通に、幹部が8人。「自分たちは何をしてしまったんだ」。
案を聞きに来たのではなく、見せに来ていた
挨拶が終わると、2人はすぐに事情をのみこんだ。幹部たちは、2人の案を聞きに来たのではない。自分たちの案を見せに来たのだ。
投稿者の手紙は、どういうわけか会社じゅうを駆けめぐっていた。投稿者のたとえを借りれば、映画『ザ・エージェント』(原題 Jerry Maguire)で、主人公が会社じゅうに配った提言書のように、である。会社は手紙を本気で受け止めたらしく、すでにいくつかの改善を実行に移していた。2人はそれを最初に見せてもらえる幸運な客で、いわば非公式の「最初のお試し客」になった。
それでも提案をねじ込んだ
困ったことに、2人はこの準備に、ばかばかしいほどの時間と、泣きたくなるほどの特許費用をつぎ込んでいた。だから、口を開く前からもう古くなっていた案を、それでも無理やりねじ込んだ。
一方、会社側が見せてくれた新しい入れ物は、クッキングシートを敷いた小さなアルミの皿だった。アリーと投稿者は、信じられない思いで目を見合わせ、すぐさま「刑務所トレー」とあだ名をつけた。もちろん、幹部たちに面と向かっては言っていない。
女子トイレのごみ箱に望みを託す
提案の途中、どの案も社長にまるで響いていないと分かる瞬間が何度かあった。投稿者はアリーに、声には出さず念を送ったという。女子トイレのごみ箱で小さなぼやを起こして、みんなの気をそらしてくれ。せめて体面のかけらくらいは保って退散したい――。アリーは念を受け取ったものの、実行は見送った。「たぶん、それでよかった」と投稿者。もちろん冗談で、火は出ていない。
「天才か、変人か」
その夜の終わり近く、投稿者は業務の責任者と社長にたずねた。自分たちに会うためだけに、なぜ幹部を全員飛行機で呼んだのか。業務の責任者の答えはこうだ。あの手紙を書いた人たちには、会わずにいられなかった。ただ正直なところ、現れるのが創造力あふれる天才なのか、まったくの変人なのか、自分たちにも分からなかった、と。
投稿者は「それは面白い。こちらも、あなたがたについてまったく同じことを考えていたので」と返した。まずい相手だったらすぐ席を立てるように、合言葉まで決めてきたのだ、と。その合言葉は「ルンペルシュティルツヒェン」。グリム童話に出てくる小人の名前で、その名前を言い当てられるかどうかが物語の鍵になる。
業務の責任者は体を折って笑った。そして、2人が手に負えない人物だった場合に備えて、自分たちも合言葉を決めていたと打ち明けた。しかも「うちもルンペルシュティルツヒェンだった」と言い張ろうとする。投稿者はすかさず突っ込んだ。そこまで気の利いた言葉を、彼らが思いつくはずがない。責任者は吹き出して、本当はずいぶん冴えない言葉だったと認めた。
その後
お開きになるころには、2人は、同社が翌年ラスベガスで開く大きな大会(関係者が集まる催し)に、VIPとして招かれていた。ところが、そこへ新型コロナがやって来る。大会は中止。「この筋書きは、ここでおしまい」。
だが、別のことが起きていた。アリーと投稿者の中で、創作のスイッチが入ったのだ。面白い案、大きな案、妙な案、世界まるごとの構想。アイデアが急にあふれ出し、2人は発明品を形にし、物語を書き、パズルの本を作りはじめた。いまは、さらに大きな企業に2つの大型企画を持ち込む準備をしているという。
「皮肉まじりの苦情の手紙1通から、創作に明け暮れる暮らしがまるごと生まれた。あの面会が世に送り出したのは、商品ではなかった。私たちだった」。そして何よりの収穫として、投稿者の仕事場の壁には、まったく使い道がなく、やたらと高くついた特許証が、飾りとして掛かっている。
海外の反応
1. やらかし名無しさん
正直、にわかには信じがたい。経営陣がまるごと飛行機に乗って、たった2人の客に新しい皿を見せに来るなんてこと、本当にあるのかな。
2. やらかし名無しさん(>>1への返信)
でも投稿者は手紙で、文字どおり「お偉いさんを飛行機で寄こしてくれ」と頼んでいるんだよね。自分が同じ立場なら、少しは驚くだろうけど、そこまでは驚かないかな。
3. やらかし名無しさん(>>2への返信)
投稿者です。頼んだのは「お偉いさんを誰か1人」だよ。8人も来るなんて思いもしなかった。全員そろっているのを見たときは、血の気が引いたね。2人とも、人前で何かを提案した経験なんて一度もなかったし、自分は人前で話すのが死ぬほど苦手なんだ。そうそう、店に入ったら業務の責任者が出迎えてくれて、こう言ったんだよ。「お偉いさんは、これだけいれば足りるかな?」。2人そろって下に潜り込めるほど大きなテーブルは、あいにく無かった。それでもなんとか踏ん張ってやり切って、そのあとは楽しい時間を過ごせたよ。
4. やらかし名無しさん(>>3への返信)
その日の店員たちの様子を見てみたかった。店長クラスは全員大あわてで、誰もがきびきび働いて、店内はぴかぴかに磨き上げられていたはずだよ。
5. やらかし名無しさん
特許ってそんなに早く取れるものなの? 何か月も、下手をすれば何年もかかると思っていたんだけど。
6. やらかし名無しさん(>>5への返信)
投稿者です。出願はそのときにしたけど、認められるまでには1年以上かかったよ。今なら分かる。先に「仮出願」(正式な出願の前に、簡単な書類で出願日だけ確保しておけるアメリカの制度)にしておくべきだった。費用はおよそ100分の1で済むし、正式に出願するまでの1年間、アイデアを買ってくれる先を探して回れるんだ。人生の授業料は高い。ちぇっ!
7. やらかし名無しさん
最初に「特許の費用」と読んだときは、何かの書き間違いだと思った。違った。本当にそのままの意味だった。いやはや、変わった2人だなあ(笑)
8. やらかし名無しさん(>>7への返信)
投稿者です。アリーと自分は、どちらがよりばかばかしいことをやれるか、いつも張り合っているんだ。今回は2人そろって高くついた。完全に裏目に出たよ(笑)。まあ、いい話のタネは手に入ったけどね。
9. やらかし名無しさん
特許を出願する前に、折り返しの電話を1本入れて「ところで、どういったご用件でしょうか」と聞いておけば済んだ話なのでは……。でも、聞かずに図解とキャッチコピーまで作り込んでしまう2人だからこそ、あの手紙が書けたんだろうね。
10. やらかし名無しさん
図面を見た。「骨置き場(ボーンヤード)」は英語で墓場を指す言葉でもあるんだから、柵じゃなくて小さな墓石を並べたほうが洒落ていたんじゃない?
11. やらかし名無しさん(>>10への返信)
投稿者です。うまい。でも、特許をもう1つ取るお金はないんだ……じゃなかった、壁の飾りをもう1つ、だね(笑)
12. やらかし名無しさん
これ、ほかの手羽先チェーンに売り込めばいいのに。しまいやすいように、四角い形のものも考えてみたらどうかな。
13. やらかし名無しさん(>>12への返信)
投稿者です。150社ほどに売り込んでみたけど、返事は1通も来なかった。そのうち、打たれ弱い自分のほうが、その沈黙に耐えられなくなってね。そもそも2人とも、自分たちが何をやっているのか、まるで分かっていなかった。行き当たりばったりだったんだよ(笑)
14. やらかし名無しさん
店名は黒塗りにしてあったけど、どの店の話かすぐに分かってしまった。あのぺらぺらのボート皿はひどかったけど、紙を敷いた金属の皿は、なぜかそれよりもっとひどいんだよ。手紙が訴えていた「骨の置き場がない」という問題も、結局は解決していないし。
15. やらかし名無しさん(>>14への返信)
投稿者です。たしかに、見当をつけるのは難しくないよね。それにこの話は、あの会社のいいところを伝えていると思うんだ。苦情の手紙を本当に読んで、真剣に受け止めてくれる。……少し真剣すぎるくらいに。あれだけの人数の出張を手配したんだから、うちの手紙のせいで、注文1件につき8セント(約12円)は値上がりしたんじゃないかな。申し訳ない。
16. やらかし名無しさん
細かいことを言うと、刑務所のトレーが金属のはずはないんだ。刑務所では、金属でできた物はどれも床にボルトで留めてあるからね。
17. やらかし名無しさん
ちょうどその小人の名前をユーザー名にしている者です。まずいときに席を立つための合言葉にされるのは、あまりいい気がしないなあ。
18. やらかし名無しさん
自分も、ずっと小さな規模で同じことをやったことがある。酔った勢いで、アイスキャンディーの会社に、棒に印刷してあるジョークについて皮肉たっぷりの手紙を送ったんだ。送ったこと自体を忘れたころに、心のこもったおわびの手紙と無料引換券が届いた。あの手紙が机に回ってきて、返事を書くはめになった実習生のことを思うと、いまだに申し訳ない。
19. やらかし名無しさん
手紙の実物も読んでみた。自分には、笑えるというより、ただ怒っている文面に見えたかな。あれを読んで幹部が会いたがったというのが、どうも腑に落ちない。
20. やらかし名無しさん
本当にあった話なのかもしれない。ただ、文章をAIに手伝わせたような書きぶりのせいで、かえって作り話のように読めてしまうのが残念だ。
21. やらかし名無しさん(>>20への返信)
気になって調べてみたら、その会社は実際に、紙の入れ物から金属のトレーに切り替えていたよ。少なくともそこは、投稿者の話とつじつまが合っている。
22. やらかし名無しさん
投稿者です。いい勉強になった。この掲示板には来たばかりで、奇妙だけど本当にあった話を聞いてもらいたかっただけなんだ。楽しんでもらえたなら何より。そうでなくても気にしないで。自分が読む側だったら、やっぱり疑ったと思うから。
まとめ
きょうだいを笑わせるための皮肉まじりの手紙が、幹部8人を店に呼び寄せ、頼まれてもいない提案と特許の出願まで生んだ。コメント欄では、話ができすぎていると疑う声が目立つ一方、会社が実際に入れ物を切り替えていたと確かめた人もいた。紙皿は商品にならなかったが、創作に明け暮れる暮らしと壁の特許証は残った。気合いの空回りも、無駄ばかりではないらしい。

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