「大丈夫ですか?」「……はい」溺れていると思って下着姿で湖に飛び込んだら、相手は訓練中の軍のダイバーだった話

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2020年6月、アメリカ南部の湖。朝のジョギング中だった女子大生は、約12メートル先の水面に、死んだように浮かぶ黒い人影を見つけた。周りには誰もいない。とっさに靴を脱ぎ捨て、下着姿になって湖へ飛び込んだ。ところが、目を閉じたまま必死に泳いでたどり着いた相手から返ってきたのは、「この人、正気か?」と言いたげな視線と、「……はい」のひと言だった。

※注:マーマンは英語で「男の人魚」のこと。湖の中から現れた彼のことを、投稿者もコメント欄もこう呼ぶようになった。

何をやらかした?

📌 2020年6月、きょうだいの家に居候しながら湖畔のバーで働く大学生の投稿者は、朝のジョギング中に湖に浮かぶ男性を見つけ、溺れていると思い込んだ。声もかけずに下着姿で飛び込んだが、男性は夜通し湖で訓練をしていた、軍の精鋭ダイバーを目指す訓練生だった。周りの水面からも次々とダイバーが顔を出し、投稿者は訓練のど真ん中に乱入していたことに気づく。岸まで「護送」されたあと、恥を忍んで彼と仲間を今夜のバーに誘ったところ、その夜、彼は本当に店に現れた。

事の発端

居候しながら、湖畔のバーで働く夏

投稿者は大学生。学費を稼ぐため、女きょうだいとその彼氏の家に転がり込み、ソファを寝床にしながら、その彼氏に雇ってもらって湖畔のバーで働いている。アメリカの大学は学費が高く、働きながら自分で学費を払う学生は珍しくない。

時は2020年6月、コロナ禍の真っただ中。投稿者の住む州では、すでに店の営業が再開されていた。正直あまり気は進まない。それでも学費のためには、この仕事も、やっと確保したソファの寝床も手放せない。

毎朝、湖のほとりを走るのが日課

居候先の2人に気をつかって家を空けるため、そして暗いニュースをスマホで延々と追いかけてしまう毎日から少し離れるため、投稿者は毎朝、湖のほとりを走っている。

この湖がまたすごいところで、湖の底には町がまるごと沈んでいて、それを目当てにダイバーが集まってくる。湖の名前は、のちに投稿者が追記で明かしている。サウスカロライナ州のジョカッシー湖で、ダムでせき止めてできた湖だ。

やらかしの一部始終

水面に浮かんできた「死体」

その朝も、投稿者は考えごとをしながら走っていた。すると、約12メートル先の水面に、黒いかたまりがぽっかりと浮かび上がった。そこは湖の岩だらけの側で、浮かんできた男は、どう見ても死んでいるようにしか見えなかった。体は向こうを向き、頭をのけぞらせて目を閉じたまま、釣りの浮きのようにぷかぷか揺れている。

周りには誰もいない。投稿者は「こんな夜明けにひとりで潜るなんて正気じゃない。潜水病(深い所から急に浮上すると体に起きる障害)か何かになったに違いない」と思い込んだ。

声もかけずに、下着姿でダイブ

ここで大声で呼びかけて、無事かどうか確かめればよかったのだが、投稿者はそうしなかった。靴を足で脱ぎ捨て、下着姿になって、このおバカさんを救いに向かったのである。

頭の中では映画の予告編が流れていた。華麗に3歩踏み込み、マーベル映画の凄腕女スパイ、ブラック・ウィドウばりに深い青の水へ飛び込む自分。ところが現実には、素足が尖った岩を踏みつけ、痛みで体がバネのおもちゃのようにぐにゃりとよじれた。そのまま不格好に湖へ倒れ込み、横っ腹から水面に落ちた。

しかもコンタクトレンズをしていたので、目を閉じたまま、彼のいるほうへ全力で泳いだ。

「大丈夫ですか?」「……はい」

目を開けると、彼が「頭がどうかしたのか」と言わんばかりの顔で、こちらをまじまじと見ていた。とっさに口から出たのは「大丈夫ですか?」。

彼はくわえていたレギュレーター(ダイバーが口にくわえる呼吸用の器具)を外し、信じられないという様子で「……はい」と答えた。

立ち泳ぎをしながら、投稿者の思考は完全にフリーズした。足の下の湖が、底なしに深く感じられる。頭の中で映画『ジョーズ』のテーマ曲が鳴り出す前に、ここから逃げなければ。くるりと向きを変え、言い訳がわりに肩越しに叫んだ。「助けが必要なのかと思って!」

気づけばダイバーに囲まれていた

向きを変えたその瞬間、反対側の約9メートル先で、別の男が咳払いをした。物音ひとつ聞こえていなかったので、投稿者は心底びっくりして、耳をつんざくような悲鳴を上げてしまった。

2人の男が笑い出すと、周りの水面からさらにいくつも頭が浮かんできた。投稿者はいつの間にかダイバーたちに囲まれていて、全員がこの全力のやらかしを心から楽しんでいた。

最初の「救助対象」だったマーマンが、投稿者と岸を交互に指さした。投稿者がうなずくと、彼は慎重に近づいてきて、岸まで投稿者を「護送」してくれた。

「引っぱっていこうか?」「絶対イヤ!」

岸は思っていたよりずっと遠かった。本当は空気中の酸素を全部吸い込みたいくらい息が上がっていたが、投稿者はそれを隠して、何でもないふりで呼吸を整えようとした。そのうち状況のおかしさがこみ上げてきて、くすくす笑いが止まらなくなった。そしてとうとう、こう軽口をたたいた。「ねえ、本当に死にかけてなくてよかったね。ここまであなたを引きずってくるだけで、私の全力を使い果たしてたと思うよ」

彼はくすっと笑い、「引っぱっていこうか?」と申し出た。

「絶対イヤ! ありえない」。犬かきになろうとも、そんな負けを人前で認めるわけにはいかない。

岸に着くまでの間、彼は小声でずっと投稿者をからかい続けた(のちにコメント欄で明かしたところでは、平泳ぎの効率の悪さをさんざんいじられたらしい)。投稿者いわく、実はそういうのに弱い。

相手は軍の訓練生だった

彼らは士官学校の学生か、卒業したばかりの若者たちで、夏の間この湖に来ていた。これまでプールで訓練を積み、この日はプールではなく湖での潜水訓練の最中。少なくとも夜のうちから水の中にいたらしい。何の訓練だったにせよ、投稿者がぶち壊したのは間違いない。

彼が目指しているのは「潜水学校に入る前の課程(?)」だという。投稿者自身もよく分かっていない様子で、「ネット検索の達人」を自称する彼女の推測では、戦闘ダイバー(水中から潜入して任務に当たる兵士)の養成のことらしい。

胸を張って、下着姿で退場

岸に着くと、投稿者は精いっぱい胸を張り、たぶんかなりの猛者ぞろいであろう男たちの前を、下着姿のまま堂々と水から上がった。そして彼と「謎めいた仲間たち」に、今夜うちのバーでばか高いビールをどうぞ、と声をかけてから、恥ずかしさを抱えて林の中へ走って戻り、脱ぎ捨てた服を拾いに行った。

のちにコメント欄で明かしたところでは、立ち去る投稿者の背中に、彼は「じゃあな、救世主さん」と声をかけたという。

その後

投稿者自身による要約は、「ケガをしたダイバーを助けようとしたら、何かの軍事訓練に乱入していた」。この投稿には、その日のうちから追記が次々に付いていく。

最初の追記はこうだ。「あのマーマン、ずるかった。浮き具になるベストとフィン(足ひれ)まで着けてたんだから」。そして「謎めいた登場には正直惹かれてる。でも、それ以上に面白くて優しい人だった。気の利いた皮肉を連発するところも好みで、聞いてみたいことが山ほどある」。

バーの仕事中に書いた2つ目の追記では、あの朝の下着(コメント欄で告白していた、くたびれた蛍光色のトンボ柄)は家に置いて、かわいいサンドレスで決めてきたと報告した。きょうだいの彼氏が一部始終をしゃべってしまったせいで、店のスタッフは総出で投稿者をいじっていたが、それも案外楽しいという。ところが夕食どきの客がひと通り入っても、マーマン(コメント欄では「カエルの王子さま」とも呼ばれ始めていた)は現れない。その1時間後の追記は、「まだ来ない(泣)」のひと言だけだった。

そして5つ目の追記。「来た! ついさっき!」。皆の想像どおりぎこちなくなってしまい、またトイレにこもってこれを打っているという。彼はハンサムで面白くて、いい匂いがした。ハグもした。「私は南部の人間だから、そうするものなの。匂いを嗅ぐほうじゃなくて、ハグのほうね」。本人の前でうっかり「マーマン」と呼びそうになる悪友たちからも、彼は何度も投稿者をかばってくれた。一緒に来た仲間1人は、さっそく投稿者の同僚を口説き始めた。投稿者の友人が「この子のトンボ柄の下着、見た?」と彼に直球で聞いたときは、彼は何も答えず、友人が去ってから、にやりと笑って「見た」と白状するような顔をした。彼のほうも「助けられた男」として一日じゅうからかわれていたらしく、自虐のユーモアのセンスがそっくり。「いい感じだと思う」。

翌日の6つ目の追記で、投稿者は「これで最後」と区切りをつけた。「昨日までは、二度と会うこともないと思っていた人をめぐる笑い話だった。でも一緒に過ごした今は、彼のことをここで話すのは違う気がする。彼のことが好き。相性もいいし、好きなものも似ていて、また会う約束もしてる。台無しにするのは私の得意分野だから、ネットのプレッシャーにまで手伝ってもらう必要はない」。

それでも「続報は!?」の声はやまず、3週間後に7つ目の追記が付いた。「マーマン、カエルの王子さま、闇の世界の王(ほかにも皆がつけたあだ名は多数)は、今もしっかり私の人生にいます。人間の言葉では言い表せないくらい素敵な人」。

ちなみにコメント欄での返信によると、その夜彼がバーに来るより前に、誰かがこの投稿を見つけていて、彼はすでに一部始終を読んでいた。彼と仲間たちは「コメント欄に紛れ込んでからかってやった」と言い張るものの、どのアカウントかは白状しないという。

海外の反応

1. やらかし名無しさん
男の人と知り合いたいなら、もっと簡単な方法がいくらでもあると思う。でも、体を張ったその努力には満点をあげたい。

2. やらかし名無しさん(>>1への返信)
(投稿者)つまり、とびきりおバカなことをしても、それでモテるわけじゃないってこと?

3. やらかし名無しさん
夜通しの退屈な訓練のあとに、これだもんな。ダイバーの皆さんにとっても最高の朝になったはず。それにしても、暗いニュースばかりのこのご時世に読んだ話の中で、いちばん明るいかもしれない。

4. やらかし名無しさん
教官「いいか、ここはプールじゃない。自然の中では、予想もしないものに出くわすからな……」

5. やらかし名無しさん(>>4への返信)
で、次の講習のテーマが「プールに野生動物(と女性)を近づけない5つのコツ」になるわけだな。

6. やらかし名無しさん(>>4への返信)
いや、教官ならむしろこう言うね。「諸君、見たか。訓練を修了すれば、女性のほうから飛び込んでくるぞ!」……これ以上のやる気の出させ方はない(笑)

7. やらかし名無しさん
(動物番組のナレーションで)こちらはアメリカの戦闘ダイバー。オスはつがいの相手を探すとき、湖の真ん中まで泳いでいって死んだふりをします。ひと晩じゅう水に浮かび、岸からメスが見つけてくれるのを待つのです。オスに気づいたメスは、すばやく服を脱ぎ捨てて、助けに泳いでいきます……

8. やらかし名無しさん(>>7への返信)
で、岸が遠くて必死なメスに、オスが「引っぱっていこうか?」と申し出る。ところがこのメスは「絶対イヤ」と断るんだよね。野生の誇り。

9. やらかし名無しさん
正直、すごく立派で心温まる話だと思う。見ず知らずの人のために迷わず水に飛び込めるなんて、優しくて勇気のある人だよ。

10. やらかし名無しさん(>>9への返信)
(投稿者)ありがとう。でも、本当のところを知ったらそうは言えないと思う。あのときはいてたのは、ゴムが見えるほどくたびれた綿のパンツで、しかも蛍光色のトンボ柄。元カレにすら見せたことのない代物です。ああ、恥ずかしさで顔が熱い。

11. やらかし名無しさん
見ず知らずの人を助けに飛び込んだんだから、勲章のひとつくらいもらってもいいと思う。何かもらえた?

12. やらかし名無しさん(>>11への返信)
(投稿者)もらいましたよ。「安くてダサい下着で賞」。それから「この子はノリがいいのか、ただのポンコツなのか」っていう、えくぼつきの笑顔。極めつけは「自分が犬かきで岸に戻るのもやっとなのに、どうやって俺を助けるつもりだったんだ」っていう苦笑い。まだまだ増えそうです。

13. やらかし名無しさん
救急隊員です。誰かの命を救おうとしたその気持ちには、心からお礼を言いたい。誰にでもできることじゃないから。ただ、自分の命を危険にさらすのだけはやめてほしい。素足で岩場、深い湖、目を閉じたまま全力で泳ぐ……助けに行った人のほうが溺れるのは、本当によくある話なんだ。まずは大声で呼びかけて、返事がなければ通報。これが基本だよ。

14. やらかし名無しさん(>>13への返信)
それはそうなんだけど、投稿者をかばうと、本当に溺れている人は叫んだり手を振ったりできないことが多いらしい。顔を水の上に出して息をするだけで精いっぱいだから、静かに沈んでいく。声も出さずにぷかぷか浮いている人を見て最悪を考えたのは、間違った判断じゃないと思う。

15. やらかし名無しさん
元沿岸警備隊員。海軍の拠点が近い海で働いてたけど、こういうのは意外とよくある。下着で飛び込む人はさすがにいないけど、「水に死体が浮いてる」って通報はしょっちゅう来た。厄介なのは、海軍は訓練をしているかどうかまでは知らせてくれても、機密の関係で、どんな訓練か、水の中に人がいるのかまでは教えてくれないこと。だからこっちは念のため、毎回出動するしかなかった。

16. やらかし名無しさん
元軍人です。訓練中の人間は、訓練と関係ないことに自分の都合で時間を使えないことが多い。週末も軍の用事で埋まってたりする。だから、もし彼が来なくても気を悪くしないで。2週間は待ってあげてほしい。それにしても、とっさに人を助けに飛び込めるなんて大した人だよ。

17. やらかし名無しさん(>>16への返信)
2週間は待てって言われてたのに、まさかのその日の夜に来たっていうね。仲間を1人連れてきたあたり、本人もかなり来る気だったんだろうな。

18. やらかし名無しさん
今夜バーで本格的に口説く前に、指輪をしてないかだけは確認しときなよ。そこ大事だから。

19. やらかし名無しさん(>>18への返信)
(投稿者)岸で誘う前に、ちらっと確認済みです。年は私と同じくらい。だからといって、もう結婚してないとは限らないけど。

20. やらかし名無しさん
いずれ子どもに「こうしてママは、パパを確実な死から救い出したのよ」って盛って語り継ぐやつだ。

21. やらかし名無しさん(>>20への返信)
(投稿者)まさにそう語り継ぐつもりです。本当のことを知っているのは、ここにいる皆さんだけ。

22. やらかし名無しさん
最初の3行を読んだところで引き返して、海軍にいる夫に最初から音読して聞かせた。2人でずっと笑いっぱなし。うちの出会いは大みそかの人混みで、夫の友達が夫にワインをこぼして、夫が私に「ズボンを交換してくれない?」と聞いてきたのが始まり。「無理。でも替えのスカートならあるよ」と答えてから13年、今も仲良くやってる。マーマンをつかまえておいで、トンボちゃん。

まとめ

溺れていると思った男性を助けようと、下着姿で湖に飛び込んだ大学生。相手は夜通し訓練中だった軍のダイバーの訓練生で、救助どころか訓練に乱入していた。それでも恥を忍んでバーに誘ったその夜、彼は本当に現れ、3週間後も2人の縁は続いている。コメント欄には「まず大声で呼びかけて、自分の身を守って」という忠告と、迷わず飛び込んだ優しさへの称賛が並んだ。盛大なやらかしが、思わぬ出会いに化けることもある。

元ソース: 下着姿で湖に飛び込んで男性を助けようとしたら、相手は訓練中の軍の精鋭ダイバーだった

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