送金アプリの「非公開」ボタンを押した瞬間、たいていの人は「これでもう守られた」と思う。ところがその設定、押した日から先の取引にしか効いていなかったとしたら——。友人のふざけた書き込みが、6年間ずっとアカウントの一番上に居座り続けていたことに、投稿者は上司の何気ない一言で気づいてしまった。
※注:この話に出てくる「Venmo(ベンモー)」は、アメリカで広く使われている個人間の送金アプリです。日本のPayPay送金やLINEの送金と決定的に違うのは、取引の相手・日付・メモ欄が、初期設定のままだと誰にでも見られる状態になっていること(金額だけは他人に表示されません)。友達の送金履歴が、まるでSNSの投稿のように並んで流れてくる——そういう設計のアプリだと思ってください。
何をやらかした?
📌 2020年、友人が送金アプリのメモ欄にふざけて下ネタの略語を書き込んだ。投稿者はすぐアカウントを非公開に切り替えたが、その設定が効くのは「これから先の取引」だけ。過去の分は公開されたまま残り、6年間、投稿者のアカウントを開いた人が最初に目にするのはその一行だった。気づいたのは、昼食代を立て替えた上司から「面白い取引履歴があるわね」と言われたとき。
事の発端
始まりは、なんてことのない昼食代の立て替え
2020年のある日のこと。投稿者は友人の昼食代か何かを立て替えた。いくらだったかも覚えていない、ほんの数千円の話である。後日、友人が送金アプリで代金を返してくれた。ここまでは誰の日常にもある、ごく平凡な光景だ。
メモ欄にくだらないことを書き合うのが、二人の遊びだった
問題はメモ欄だった。このアプリには送金のたびに「何のお金か」を書き添える欄がある。本来は「ランチ代」「タクシー代」と書く場所だが、投稿者とその友人は、そこにわざとくだらない言葉を入れて笑い合う間柄だった。そしてその日、友人が書き込んだのは、アルファベット3文字の略語と、ご丁寧にもその意味を書き添えた一文。ここには到底書けない類の、完全な下ネタのスラングである。悪気はまったくない。ただのおふざけだ。
やらかしの一部始終
受け取った直後、投稿者は「非公開」に切り替えた
そのメモを見た投稿者は、さすがにこれはまずいと思ったらしい。すぐに設定画面を開き、取引の公開範囲を「非公開」に変更した。判断としては完璧である。これでもう誰の目にも触れない——そう信じ切って、投稿者は以後6年間、この件を一度も思い出さなかった。
その設定が守ってくれるのは、押した日から先の取引だけだった
ところが、このアプリの「非公開」設定が適用されるのは、変更後に発生する取引だけ。押した日より前の取引は、公開されたまま置き去りにされる。結果どうなるか。以降の送受金はすべて他人から見えなくなり、公開状態で残っているのはあの一件だけになった。つまり、投稿者のアカウントを開いた人が最初に、そして事実上そこにしか表示されない取引が、6年間ずっとあの下ネタだったのである。隠したつもりが、その一行だけをスポットライトで照らし続けていた。
その後
発覚したのは6年後の今日。投稿者が同僚たちの昼食をまとめて買ってきて、上司が自分の分を送金で返してくれたときのことだった。上司はこう言った。「あなた、面白い取引履歴があるわね」
投稿者は凍りついた。一瞬なんのことか分からず、慌てて自分のアカウントを開いて、6年前のあの一行と再会したという。血の気が引いたのはその瞬間である。
そして恐ろしいのは上司だけではない。この6年間に投稿者へお金を送った人は、全員があの表示を見ていた可能性がある。毎年誕生日に律儀にお祝いを送ってくれる遠い親戚のおばさんも、である。何人に目撃されたのか、投稿者に知る術はない。
救いは、上司が話のわかる人だったこと。笑って流してくれたそうだ。ただ投稿者としては、これから一生あの3文字と結びつけて記憶されるのだけは勘弁してほしい、というのが正直なところらしい。
海外の反応
1. やらかし名無しさん
うちの国には同じアプリが無いんだけど、送金の履歴が他人から見えると書いてあるところを三度見した。何かの読み間違いだと思いたい。誰か「そんなわけないだろ」と言ってくれないか。
2. やらかし名無しさん(>>1への返信)
残念ながら読み間違いじゃない。あれは「みんなで見せ合う送金アプリ」として作られていて、最初から公開が初期設定なんだ。運営しているのは決済大手のペイパル。
3. やらかし名無しさん(>>2への返信)
補足しておくと、金額そのものは他人には見えない。でも相手と日付とメモ欄は丸見え。つまり「いくら払ったか」は隠れて「何のために払ったか」だけが晒される。順番が逆では?
4. やらかし名無しさん
アメリカ在住だけど、正直ずっと不思議に思っていた。送金の履歴を1件でも公開したい人が世の中にいる、という前提で設計されているのがどうしても理解できない。
5. やらかし名無しさん(>>4への返信)
高校のとき、父に「お前がビール代を受け取ってるの、こっちから見えてるぞ」と言われてから非公開にしてる。あの日ほど素早く設定画面を開いたことは後にも先にもない。
6. やらかし名無しさん
友達が昨日、別の友達からピザ代を受け取ったことが分かってしまう。自分はその場にいなかったし、そもそも呼ばれてもいない。知りたくない情報を毎日供給されている気分になる。
7. やらかし名無しさん
これはアプリの話というより「設定変更が過去に遡らない」という落とし穴の話だと思う。写真の共有でも掲示板の書き込みでも、同じ地雷を踏んだ人はいくらでもいるはず。
8. やらかし名無しさん(>>7への返信)
ちなみにあのアプリ、設定のもう一段奥に「過去の取引もまとめて非公開にする」ボタンがちゃんとある。今これを読んでいる人は、読み終わったらすぐ押しに行ったほうがいい。
9. やらかし名無しさん
一番こわいのは6年という数字だよ。その間に何十人も見ているはずなのに、誰ひとり「あれ出てるよ」と教えてくれなかった、ということでもあるわけで。
10. やらかし名無しさん(>>9への返信)
全員が見た瞬間に「これは触れないでおこう」と判断したんだと思う。優しさだったのか、単に関わりたくなかっただけなのかは、もう誰にも分からない。
11. やらかし名無しさん
上司の「面白い取引履歴があるわね」という言い方、地味にすごくないか。内容には一切踏み込まないのに、本人には確実に伝わっている。距離感の取り方がプロの仕事。
12. やらかし名無しさん
同じ3文字の略語が、心理療法の世界ではまったく別の、ごく真面目な意味で毎日使われているんだよな。今回は意味まで書き添えてあったせいで、その逃げ道も塞がれている。
13. やらかし名無しさん(>>12への返信)
うちの開発現場でも別の意味で普通に飛び交う3文字で、会議のたびに真顔を保つのに必死になっている。この手の略語、業界をまたいだ瞬間に事故る運命にあると思う。
14. やらかし名無しさん
もっと怖い話をすると、あのアプリは携帯の連絡先に入っている人の取引まで表示してくる。連絡先を一度も整理していないので、10年前の同級生の履歴が今も流れてくる。
15. やらかし名無しさん
遠い親戚のおばさんが気の毒すぎる。毎年誕生日にお祝いを送るたび、あの一行を見せられていたわけでしょう。何も言わずに送り続けたその胆力のほうがすごい。
16. やらかし名無しさん
救いは、あのメモ欄が「くだらないことを書く場所」だと利用者全員に知られていること。投稿者の名誉のために言うと、あれを本気の自己紹介として受け取った人はたぶんいない。
17. やらかし名無しさん
読み終わって最初にしたのが、自分のアプリを開いて履歴を上から確認することだった。この記事の実用性、たぶん今年読んだ中でいちばん高い。
18. やらかし名無しさん(>>17への返信)
自分も見に行った。大学時代の飲み会の精算メモが延々と並んでいて、下品ではないんだけど、生活の記録としてはそれなりに恥ずかしかった。
19. やらかし名無しさん
こっちの国は銀行のアプリから相手のメールアドレス宛てに送るだけなので、そもそも「送金を公開する」という発想自体が存在しない。文化の差というより設計思想の差だと思う。
20. やらかし名無しさん
教訓は一つだけ。設定を変えたら「これは今日から先の話なのか、過去の分も含むのか」を必ず確かめること。その一手間で、6年分の羞恥心はまるごと防げていた。
まとめ
友人のちょっとしたおふざけと、「非公開」ボタンへの過信。この二つが重なっただけで、6年分の羞恥が静かに積み上がっていた。海外の反応も、書き込みの中身より「送金履歴が初期設定で公開される」という仕様そのものへの驚きに集中し、記事を読みながら自分のアプリを開いて確認しに行った人が続出していた。設定を変えたら、それが今日から先の話なのか、過去の分も含むのか。押した直後に一度だけ確かめる——それだけで防げる種類のやらかしである。


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