外国語で暮らすというのは、単語ひとつの取り違えで場の空気が一瞬で変わる世界に住むということだ。ブラジル出身の投稿者がアイルランドに移って2年目、当時の彼氏の実家に初めて招かれた日曜の昼食会。「お母さんはどんなお仕事を?」という何気ない質問に、彼女はごく落ち着いた声で答えた。その一言で、テーブルの向かい側にいた二人が吹き出した。
※注:アイルランドやイギリスでは、日曜の昼に一家が集まってローストを囲む食事が定番の習慣。堅苦しい席ではないが家族が全員そろう場なので、交際相手が初めて紹介されるのはたいていこの席になる。日本でいう「実家に挨拶に行く日」に近い。
何をやらかした?
📌 母親の仕事は手作りの工芸。それを「手を使って働いている」と英語で説明しようとしたところ、選んでしまった言い回しが、英語では性的な奉仕を指す俗語にしかならないものだった。彼氏の父と兄はその場で爆笑。彼の母と姉が「言いたいことは分かるでしょう、面白くないからやめなさい」と即座に止めに入った。11年後、この話は一家のクリスマスの恒例ネタになっている。
事の発端
英語は「日常会話ができる」レベルだった
投稿者はブラジル出身。この出来事が起きた2013年の時点で、アイルランドに移り住んで2年ほどが経っていた。買い物や世間話に困らない程度には英語が話せたが、語彙はまだ限られていた。本人が投稿の冒頭で「この点が重要です」とわざわざ念を押しているとおり、この日の落とし穴はまさにそこにあった。
失敗できない食卓だった
その日は、当時の彼氏の両親に初めて会う日だった。彼の実家での日曜の昼食。改まった席ではないけれど、それでも大きな節目には違いない。付き合い始めてまだ間もない時期でもあり、彼女は「礼儀正しく、感じよく、とにかく変なことを言わない」ことだけを考えていたという。相手の家族がどういう人たちなのかも、まだ分かっていなかった。自分自身はブラジル人であることで嫌な思いをした経験はなかったが、そういう目に遭った友人は知っている。だからこの昼食が悪い方向に転ぶ可能性も、頭の片隅にはあった。
やらかしの一部始終
質問は和やかに進んでいた
食卓を囲んで、例の「お決まりの取り調べ」が始まった。出身はどこか。アイルランドに来てどれくらいか。きょうだいは何人か。どれも答えやすい質問ばかりで、投稿者は少しずつ緊張がほどけ、「今日はうまくやれている」と思い始めていた。
「で、お母さんは何のお仕事を?」
そして誰かがこう尋ねた。「で、お母さんは何のお仕事をされてるの?」
投稿者の母は職人だ。スクラップブック作り、絵付け、手作りの小物——要するに手仕事の人である。ポルトガル語なら、こういうときは「手を使って働いている」と言えばそれで伝わる。彼女の頭はそのポルトガル語の言い回しにしがみつき、コンマ何秒かで最悪の直訳をはじき出した。そして自分でも止める間もなく、実に落ち着いた調子でこう言ったのである。「ええ、母は手の仕事をしています」——英語で言うところの、あの二語で。
※注:彼女が口にしたのは英語の “hand job”。字面だけ追えば「手の仕事」だが、実際の英語ではこの二語は手を使った性的な奉仕を指す俗語としてしか使われない。手仕事・工芸を言いたいなら “handicraft”(手工芸)という一語を使うか、”she works with her hands”(母は手を使って働いています)と文の形にするのが正解で、ポルトガル語の「手を使って働く」をそのまま名詞にしてしまったのが分かれ目だった。
反応は一瞬だった
彼氏の父と兄が吹き出した。戸惑いの笑いでも、ワンテンポ遅れた笑いでもない。即座の、止まらない笑いだった。彼氏も笑いをこらえきれず、真顔を保とうとして失敗していた。
笑い声が上がったその瞬間、投稿者の頭がようやく追いついた。「今あなたは、母親が手を使った性的な奉仕で生計を立てている、とこの人たちに言った」。顔が熱くなり、英語が頭から完全に消えた。その場で泣きたかった、と本人は書いている。
その後
笑いと沈黙を断ち切ろうとして、彼氏がすかさず説明を入れた。「彼女のお母さんは職人なんだよ。手芸とか、スクラップブック作りとか、絵を描いたりする人」。すると彼の母と姉もすぐに加勢し、「何を言いたかったかなんて分かりきってるでしょう」「面白くないからやめなさい」と男性陣を黙らせた。あのときの二人には、うまく言葉にできないほど感謝している——投稿者はそう書いている。
昼食はそのまま続いた。「なんとか生き延びました。ぎりぎりで」と本人。
それから11年。投稿者は当時の彼氏と結婚し、彼の家族との付き合いは12年になった。義理の家族のことは心から好きだという。そしてこの話は、いまや一家のクリスマスの恒例行事になっている。毎年どこかのタイミングで、誰かが必ずあの日の一言を持ち出すのだ。当時は「取り返しがつかないほど恥をさらした」と本気で思い込んでいたが、今は自分でも笑える。そうならなくて本当によかった、と。
ただし最後に、まだ誰にも言えていないことがひとつある。投稿者は、母親本人にこの話をしていない。母は言葉がまったく通じないにもかかわらず夫の家族が大好きで、もしこの話を聞いたら悶絶するに決まっているからだ。だからこの話は、夫の一家と、掲示板と、クリスマスの食卓の中だけに置いてある。母には内緒のままで。
海外の反応
1. やらかし名無しさん
「何を言いたかったかなんて分かりきってるでしょう、面白くないからやめなさい」と義母さんたちが止めてくれたそうだが、そこだけは異議を唱えたい。何を言いたかったかは全員分かっていた。その上で、面白かった。
2. やらかし名無しさん(>>1への返信)
それでも、投稿者が固まっているのに気づいて即座に助け舟を出したのは本当に優しいと思う。初対面であの空気を放置されたら、二度とあの家の玄関をくぐれなくなる。
3. やらかし名無しさん
アメリカでラトビアの子を数か月ホームステイで預かっていたとき、リサイクルショップで寄せ木細工の箱を手に取った彼女が「見て、これハンドジョブだよ!」と大きな声で言い放った。もちろん「手仕事」と言いたいのは分かっていたけれど、なぜその言い方だけは避けなければいけないのかを、その場で説明する羽目になった。本人は真っ赤になっていた。かわいそうに。
4. やらかし名無しさん(>>3への返信)
分かる。あの「意味は完全に理解しているけど、今ここで訂正しておかないと後でもっと大変なことになる」というやつ。説明する側も地味に気まずいんだよな。
5. やらかし名無しさん
ポルトガル在住のポルトガル人です。知り合いのブラジル人女性の話が忘れられない。彼女は夫の家族(ポルトガル人)と初対面で仕事を聞かれ、「昼は幼稚園の清掃、夜は工業団地のあたりで単発の仕事をしています」と答えた。ブラジルのポルトガル語で「bicos(ビコス)」は「単発のアルバイト」の意味。ところがポルトガル本国では、同じ語が性的な行為を指す下ネタの俗語なんです。※ 同じポルトガル語でも、国が変わると俗語の意味だけ丸ごと入れ替わる 義母は青ざめ、全員が凍りつき、当の本人だけがなぜ空気が変わったのか分からず困惑していた。
6. やらかし名無しさん(>>5への返信)
言語そのものは同じなのに俗語だけが完全に別物、というのが一番おそろしい。外国語なら最初から身構えるけど、通じる言語だと油断しきっているところに直撃する。
7. やらかし名無しさん
アイルランド人の友人がスペインの家庭に招かれて、料理を褒めるつもりで「preservativos が入っていなくて素晴らしい」と言ってしまった件を思い出した。あちらでも似たような笑いが起きたらしい。
8. やらかし名無しさん(>>7への返信)
分からなかったので調べた。スペイン語の preservativo は「避妊具」。保存料は conservantes。※ 英語の preservative(保存料)に引っ張られると事故る 食卓で口にする単語ではない。最高だ。
9. やらかし名無しさん
1987年、子どもの頃に家族で日本へ引っ越した。母が近所へ挨拶に行って自己紹介したのだけれど、日本語がまだ怪しくて、「主婦」と言うつもりで「娼婦」と名乗ってしまった。※ 日本語の「しゅふ」と「しょうふ」。母語話者でも早口だと危うい しかも母はそこに「これから家にたくさん男の人が来ます」と付け足していた。実際には作業の職人が出入りする予定だっただけなのだが。ご近所さんがうちをしっかり見張っていたのは間違いない。
10. やらかし名無しさん(>>9への返信)
一番効いているのが「男の人がたくさん来ます」の追い打ち。単語ひとつの間違いなら誤解も解けるのに、そこに補足が乗ると全部つじつまが合ってしまうのが恐ろしい。
11. やらかし名無しさん
スウェーデン人で、ノルウェーで働いていたときの話。両言語はよく似ていて大体は通じるが、たまに意味の違う単語がある。ある日、上司(女性)に小さな執務室へ呼ばれた。女性の同僚が数人集まっていて、社員旅行で泊まる有名ホテルの相談をしていたらしい。外に客がいるので上司は声をひそめてこう言った。「会議の前に、私の部屋でみんなと förspel しない? 楽しいわよ、私たちだけだし」。スウェーデン語で förspel は前戯という意味だ。※ ノルウェー語では「本番前の軽い飲み会」の意味。日本語の「前飲み」に近い 部屋中の女性が私の返事を待っている。意を決して「申し訳ないが意味が分からない、私の言語ではこういう意味になる」と説明したら、全員が羞恥と爆笑で同時に爆発した。上司は真っ赤だった。そういう類いの誘いではなく、会議の前にみんなで一杯やろうという話だったのである。
12. やらかし名無しさん
英語しか話せない人でも普通にやる。2000年代に、ある政治家が「手作業の仕事は現地でやるしかないから輸出できない」と言おうとして、「手を使った性的な奉仕は輸出できない」と言い切ってしまった。知る限り、あの人が話せる言語は英語だけだ。
13. やらかし名無しさん(>>12への返信)
カナダのトルドー首相は、感染症が広がっていた時期の全国放送で「しっとりと喋るのは避けましょう」と言い放った。※ 唾が飛ぶ話し方を戒めたかったらしいが、英語としてかなり気持ちの悪い言い方になった 手話通訳の人が完全に固まっていた。脳はときどき「文法とか知るか」と勝手に暴走する。
14. やらかし名無しさん
平和部隊※ 米政府の海外ボランティア派遣制度。若者が途上国の村で数年暮らすの研修で、10週間ほど現地の村に住み込んだことがある。運の悪いことに、その土地の言葉では「洗濯物」と「尻」がそっくりで、同期の一人がホームステイ先の母親に「洗濯の仕方を教えてください」と言うつもりで「尻の洗い方を教えてください」と頼んでしまった。相手のお母さんは笑い死にしかけたあと、優しく直してくれたそうだ。
15. やらかし名無しさん
高校のとき、スペインからの交換留学生が来ていた。数学好きが昼休みにトランプをしていると聞いて「混ぜてほしい」と言うので歓迎したのだが、後日まったく別の場面で、彼が「数学の子たちと昼を食べるのが楽しい、僕は一人で遊ぶのが好きだから」と話しているのを聞いてしまった。※ 一人トランプ(ソリティア)のこと。英語の直訳だと自慰を指す遠回しな表現と一致してしまう 「ソリティアのことだよ」と全力でフォローしたが、彼のあだ名は結局そっち方面で定着してしまった。気の毒すぎる。
16. やらかし名無しさん
うちの娘が幼稚園のとき、学校から緊急の面談に呼び出されたことがある。娘が先生に「パパと一緒に大人向けの雑誌を読んでるの、二人で写真を見るんだよ」と報告したせいだった。ナショナルジオグラフィックです。いまだに娘をいじり倒す、我が家の鉄板ネタになっている。
17. やらかし名無しさん(>>16への返信)
これ、うちにもいずれ来ると思って身構えている。子どもたちが絵本以外の本や映画を全部「大人向け」と呼んでいるんだけど、なぜその言い方が外では通じないのかを説明したくなくて、まだ直せていない。
18. やらかし名無しさん
メキシコ出身の彼女がいた。うちの家族の家でトランプをしていたら、いとこが彼女に勝った瞬間に「Gotcha!(やった!)」と叫んだ。彼女はそれをスペイン語の「gacha(不細工)」と言われたと受け取って泣き出してしまった。※ 音がほとんど同じ 双方に事情を説明して場が元に戻るまで、居心地の悪い数分間が必要だった。
19. やらかし名無しさん
自分はスペイン語がそこそこ話せる、集中しているときは。ある日職場で昼飯は何かと聞かれて、七面鳥(pavo)という単語がどうしても出てこず、苦しまぎれに「巨大なチキン」と答えてしまった。ものすごく変な顔をされた。
20. やらかし名無しさん
娘に「お友達のお父さんは何のお仕事をしてるの?」と聞いたら、「夜に薬を作ってる」と返ってきた。思わず笑ったら睨まれたが、娘もすぐに噴き出して「病院の薬剤師で夜勤なの!」と言い直した。職業をそのまま言葉にすると、たまにとんでもない響きになる。
まとめ
外国語で暮らすというのは、こういう地雷原の上を毎日歩くようなものだ。投稿者のやらかしは「語彙が足りなかった」というだけの、誰の身にも起こりうる取り違えだった。海外の反応も「笑ったけれど責める気は一切ない」で一致していて、コメント欄はいつのまにか各国の言い間違い自慢大会になっている。救いは、あの食卓で彼の母と姉がすぐに止めに入ってくれたこと。11年後にクリスマスの定番ネタとして生き残っているのは、あの日の家族が優しかったことの証拠でもある。

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