口の中がいつも乾いてしかたない、という症状を治すための薬がある。ところがその薬は、唾液を出す仕組みだけを都合よく動かしてはくれない。汗も、涙も、鼻水も、まとめて出るようになる。飲み始めて3日目の投稿者は、朝食を食べ終えて着替えに向かう途中、何も考えずに2錠目を口に放り込んだ。1錠目を飲んだことを、きれいさっぱり忘れていたのである。15分後、その人は自分の部屋から一歩も出られなくなっていた。
※注:口腔乾燥症(こうくうかんそうしょう)は、唾液がじゅうぶんに出ずに口の中が乾き続ける症状で、日本では「ドライマウス」とも呼ばれる。この話に出てくる「サラジェン」は、その治療に使われる処方薬の商品名で、有効成分の名前がピロカルピン。唾液腺のように体の外へ液体を出す器官をまとめて外分泌腺(がいぶんぴつせん)と呼び、この薬はそこ全体に働くため、唾液のほかに汗・涙・鼻水なども増えると投稿者は説明している。実在の処方薬をめぐる体験談の紹介であって、効き目や安全性を保証するものではない。口の渇きや薬の飲み方で困っている人は、自己判断せず必ず医師・薬剤師に相談してほしい。
何をやらかした?
📌 ひどい口の渇きのために処方された薬を飲み始めて3日目の投稿者が、朝に1錠飲んだことを忘れて、着替えのついでにもう1錠飲んでしまった。15分後には服が汗で濡れ、めずらしく巻いた髪は汗まみれ、唾液が多すぎて喋るとこぼれ、涙腺まで動き出して泣いているように見える状態に。休暇の最終日だったが、部屋から出られないまま一日が終わった。
事の発端
「口が渇く」が生活を削っていく
口の中が乾く、と聞いてもたいていの人はピンとこない。水を飲めばいい話ではないか、と思う。ところが唾液が本当に出なくなると、話は急に生活の問題になる。パンやごはんが飲み込みにくくなり、長く喋っていられなくなり、口の中を守っていた唾液が減るぶん虫歯や口内炎も増える。夜中に口の乾きで目が覚めるという人もいる。日本でもドライマウスとして知られていて、専門の外来を置いている歯科があるくらいには、ありふれた悩みである。
投稿者はその症状がかなり重いほうだったらしく、歯科でこの薬を処方されていた。飲み薬で唾液を出させる、という発想そのものが、日本の一般的な感覚だと少し珍しい。市販のうがい薬や保湿ジェル、キシリトールのタブレットで足りる段階を、とうに超えていたということでもある。
歯医者の言葉が、そのまま予告になっていた
処方するとき、担当の歯科医はこう言い添えたという。「たいていの人はこの薬を好みません。効き方が強すぎるので。でも試してみて、自分で判断してもらってかまいませんよ」。ずいぶん正直な説明である。そして投稿者自身も、この薬について「ふざけたところがまるでない」と書いている。
強い、というのは効き目の話だけではない。投稿者の説明によれば、この薬は唾液を出す腺だけをねらい撃ちにするのではなく、体の外へ液体を出す器官をひとまとめに動かしてしまう。だから唾液と一緒に、汗が出る。涙が出る。鼻水が出る。気管支の粘液まで増える。口の渇きを一点だけ直すつもりが、体じゅうの蛇口をまとめてひねることになる、というわけだ。
飲み始めてこの日でまだ3日目。効き方の感触も、飲んだあと自分の体に何が起きるかも、まだ身についていない時期だった。おまけにこの日は休暇の最終日である。新しい薬をわざわざ休みのあいだに試し始めたのは、仕事の日に何かあっては困るからで、判断としてはむしろ慎重なほうだった。
やらかしの一部始終
朝の10分のあいだに、同じ動作を2回やった
その朝の行動は、書き出してしまえば何の変哲もない。起きて、1錠飲む。朝ごはんを作って、食べる。着替えに行って、1錠飲む。
——最後の1錠が余計だった。
投稿者は「もう飲んだことを忘れていた」とだけ書いている。言い訳らしい言い訳はどこにもない。ただ、これを読んで笑いきれる人はそう多くないはずだ。朝の薬というのは、歯磨きや鍵をポケットに入れるのと同じで、意識に引っかからないまま手が勝手に済ませてしまう動作である。しかも「飲んだ」という記憶は、そのあとの朝食や身支度にあっさり埋もれる。飲み始めて3日目なら、体に染みついた手順もまだない。玄関を出てから鍵をかけたかどうか思い出せない、あの感覚の親戚のようなものだ。
15分後、体じゅうの蛇口が開いた
異変が始まるまで15分もかからなかった。まず、着ていた服が汗で濡れた。しみ出すという程度ではなく、着替えが必要なくらいに濡れた。
投稿者が真っ先に嘆いているのが髪である。その朝、めずらしく気合いを入れて巻いた髪だった。本人いわく「自分にしてはめったにやらないこと」。それが汗でぐっしょりになった。せっかくの休暇最終日に、朝いちばんの努力から先に流されていったわけだ。
唾液のほうはもっと激しかった。飲み込むのが追いつかない。喋ろうとすると口からこぼれる。よだれが垂れる、という表現ではとても足りなくて、本人は「口いっぱいに水を含んだまま喋ろうとしているようなもの」と書いている。さらに涙腺まで動き出して、涙が出てくる。何も悲しいことは起きていないのに、鏡の中の自分は泣いている人の顔をしている。
タオルにくるまって動けなくなる
汗をかきすぎた体は、そのぶん一気に冷える。投稿者は寒気と震えに襲われ、服を脱いで床にタオルを敷き、もう1枚のタオルを体に巻いて、その上で丸まっているしかなくなった。着るものが片っ端から濡れてしまうので、それがいちばん現実的な対処だった、というだけの話である。
この日は休暇の最終日だった。どこかに出かけるつもりだったのか、誰かと会う予定があったのかは書かれていないが、少なくとも部屋から出るという選択肢は消えた。汗まみれで、口からはこぼれ、目からは涙が出ている状態で人前に立てる人はいない。
その後
投稿者は最後に、自分でも救いを見つけている。この薬は作用している時間がそれほど長くないので、数時間もすれば元の乾いた自分に戻れるはずだ、と。そのうえでこう締めくくった。「とりあえず今日は、人間の噴水として生きることにする」。
この一行のおかげで、話がじめじめした愚痴にならずに済んでいる。うまくいかない日にどう名前をつけるかで、その日の重さはずいぶん変わる。噴水になった、と言ってしまえるうちは大丈夫だ。
コメント欄がまず反応したのは、笑いどころではなく水分のほうだった。汗と唾液と涙で出ていったぶんは、水だけでは埋め合わせにならない。塩分やミネラルも一緒に減っているのだから、経口補水液のような飲み物で補ったほうがいい——という指摘が最初に伸びた。次に多かったのが、曜日ごとに小さな仕切りが並んだ薬ケースを買え、という助言である。仕切りに錠剤が残っていれば、まだ飲んでいない。空なら、もう飲んだ。記憶に頼らずに済むこの単純な仕組みは、実際に薬を毎日飲んでいる人ほど強くすすめていた。
そして、いちばん人が集まっていたのは「自分も薬を二度飲みしたことがある」という告白の列だった。抗てんかん薬を二度飲んで丸一日世界が回っていた人、集中力の薬を二度飲んで気づいたらカーディガンを1着編み上げていた人。人間はみんな、同じところでつまずいているらしい。
海外の反応
1. やらかし名無しさん
笑い話にする前にひとつだけ。出ていったぶんの水分はちゃんと戻してね。それだけの量の汗と唾液を長時間出し続けるようにはできてない体だから、脱水のほうが先に来る。水だけじゃなくて、塩分やミネラルの入った飲み物のほうがいいと思う。
2. やらかし名無しさん(>>1への返信)
本当にそう。ここまで抜けたときは経口補水液がまるで別物みたいに効く。「水を飲め」で済むのは軽いときだけで、一日じゅう出続けたあとは水だけだと逆にしんどくなる。書いてくれてありがとう、これがいちばん上にあるべきコメントだと思う。
3. やらかし名無しさん(>>1への返信)
脱水って自覚が後から追いかけてくるのが厄介なんだよね。喉が渇いたと思った時点でもう遅れてる。本人は「汗をかいてるだけ」のつもりでも、頭痛とふらつきが来てから気づくことになる。
4. やらかし名無しさん
これを機に、曜日ごとに仕切りが分かれてる薬ケースを買うのを本気ですすめる。朝の分の仕切りが空っぽなら、もう飲んでる。錠剤が残ってたら、まだ飲んでない。それだけのことなのに、二度飲みが物理的に起きなくなる。
5. やらかし名無しさん(>>4への返信)
自分もこれ。あの仕切りがなかったら、飲んだかどうかなんて絶対に覚えていられない。年配の人が使うものというイメージが強いけど、毎日1錠でも飲んでる人は全員買ったほうがいいと思ってる。
6. やらかし名無しさん(>>4への返信)
仕切りの話に付け足すと、水をがぶ飲みして埋め合わせようとするのもほどほどにね。塩分が薄まりすぎるのも体には良くないので、汗をかいた日は水と塩分を両方入れるのが結局いちばん安全だと思う。
7. やらかし名無しさん
自分は昔、発作を抑える薬を1回ぶん多く飲んでしまったことがある。丸一日、世界がずっと回っていた。楽しい体験ではまったくなかったし、あれ以来ケースなしで薬を飲むのはやめた。二度飲みって本当に誰にでも起きる。
8. やらかし名無しさん(>>7への返信)
それで思い出した。集中力の薬をうっかり二度飲みした日、気づいたらかぎ針でカーディガンを1着まるごと編み上げてて、危うくトイレにも行き損ね、一日じゅう何も食べてなかった。今はもちろん薬ケースを使ってる。
9. やらかし名無しさん(>>8への返信)
待って、1日でカーディガンを1着って言った?ふだんは何日かかるものなの?母への贈り物としては最高だけど、そのあと手首が無事だったのかのほうが心配になってきた。
10. やらかし名無しさん
同じ薬を飲んでたことがあるけど、自分には合わなかった。あれだけの汗と唾液に耐えたわりに、口の中が潤った感じがしないんだ。出てくる唾液が水っぽくて、効いている時間が過ぎるとむしろ前より乾いている気さえした。今は別の薬に変えて、副作用はだいぶ軽くなった。
11. やらかし名無しさん(>>10への返信)
唾液が水っぽい、という感覚はすごくよく分かる。粘り気がないから口の中に留まってくれない。同じことを感じてる人がいると知れただけでも、次に歯科に行くとき話しやすくなった。ありがとう。
12. やらかし名無しさん
投稿者ほど激しくはないけど、処方された目薬を1週間ほど使ったときに似たことが起きた。目にさしているだけなのに唾液が止まらなくなって、しかもその唾液が薬の味なんだ。目と口が体の中でつながっているという事実を、いちばん不愉快な形で知らされた。
13. やらかし名無しさん(>>12への返信)
子どもが結膜炎っぽくなって小児科に行ったとき、同じ話をした。「目薬の味って本当にひどいですよね。口に入れたわけじゃなくて、勝手に喉のほうに落ちてくるんです」って。そしたら先生が「わあ、鼻涙管がよく発達してるんですね。……いや、口説いてるわけじゃなくて、その、目と鼻をつなぐ管の話で」と大慌てで訂正し始めた。
14. やらかし名無しさん
なんで休暇中に新しい薬を始めたんだろう、と一瞬思ったけど、よく考えるとこれ以上ない判断だよね。何が起きるか分からないものを、途中で帰れない仕事の日に試すほうがずっと怖い。自分も新しい薬は必ず休みの日から始めることにしている。
15. やらかし名無しさん
自分も同じ薬を多く飲んでしまったことがある。唾を吐き続けなければいけないくらい出てきて、そのうち部屋がぐるぐる回り始めた。あれは二度と経験したくない。だから投稿者が部屋にこもると決めたのは、たぶんいちばん正しい選択だと思う。
16. やらかし名無しさん
自分は今もこの薬を飲んでいて、寝る前にうっかり二度飲みしたことがある。口にたまった唾液でむせて目が覚めた。それ以来、飲む時間を計算するようにしてる。汗が出きってからシャワーを浴びる、という順番にしないと、洗った意味がまるごと消えるので。
17. やらかし名無しさん
体調のことは他の人が書いてくれているので、自分は髪のことだけ言わせてほしい。めったに巻かない髪をわざわざ巻いた朝に、それが15分で汗まみれになる。この一点だけで、今日がどれだけ理不尽な日かが伝わってくる。心から同情する。
18. やらかし名無しさん
私の更年期のほてりなんて、これに比べたら足元にも及ばないな。急に汗が噴き出すあの感じは知ってるつもりだったけど、そこに唾液と涙まで加わるとなると、まったく別の競技という気がしてくる。
19. やらかし名無しさん
「今日は人間の噴水として生きる」の一行で完全に好きになった。全身から液体が出ている真っ最中に、こんなに気の利いた締めくくりを思いつける人はそういない。数時間後、無事に乾いたあなたに乾杯したい。
20. やらかし名無しさん
これを読んで「自分も口が渇くから同じ薬がほしい」と思った人へ。ちゃんと診断がついているわけでないなら、まずは市販の保湿ジェルやキシリトールのタブレットあたりから試すほうがいい。安いし手に入りやすいし、少なくとも部屋から出られなくなることはないので。
まとめ
飲み始めて3日目の薬を、飲んだことを忘れてもう1錠。それだけで汗も唾液も涙も一斉に出て、休暇の最終日が部屋の中で終わった話。コメント欄は、まず水分と塩分を戻せという心配から始まり、曜日つきの薬ケースをすすめる声、そして「自分も二度飲みした」という告白の列へと流れていった。記憶は思っているほど当てにならない。毎日飲むものほど、覚えていようとするのをやめて、目で見て分かる仕組みに任せてしまったほうがいい。

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