面接は、最後の一問まで完璧だった。場は和み、笑いも起き、手応えは十分。そこで部署のトップが投げてきたのは「もし何でも好きなテレビ番組を作れるとしたら、何を作りますか?」という、雑談のような一問だった。投稿者は少し考えて、自信を持って答えた。その瞬間、部屋の温度が確実に下がったのだという。
※注:オポッサムは北米に広く住む有袋類で、大きさは猫くらい。ネズミに似た顔と長いしっぽを持ち、夜になると街のゴミ箱をあさりに来る、日本でいうタヌキやハクビシンのような立ち位置の動物である。最大の特徴は、身の危険を感じると本当に気を失ったように倒れて「死んだふり」をすること。英語では「死んだふりをする」ことを playing possum(オポッサムをやる)と言うほど、この習性が知られている。また、この記事に出てくる『ウィッシュボーン』(Wishbone)は1990年代のアメリカで放送された子ども向け番組で、ジャック・ラッセル・テリアの犬が衣装を着て名作文学の主人公を演じるという内容。当時の子どもには馴染み深い番組である。
何をやらかした?
📌 失業から数年ぶりの面接に臨んだ23歳の女性。緊張しつつも場の空気は良く、手応えを感じていた終盤、部署長から「何でも一つテレビ番組を作れるとしたら?」と聞かれる。彼女は自信満々に「オポッサムが古典文学を再演する番組です。小さな衣装を着せて、『ロミオとジュリエット』とか『グレート・ギャツビー』とか」と答えた。部屋は完全に凍りつき、誰ひとり笑わなかった。
事の発端
条件が良すぎる求人にたどりついた
投稿者は23歳の女性。少し前に仕事を失い、求職中の身だった。そんなときに面接までこぎつけたのが、ある事務職の求人である。福利厚生が手厚く、家からとても近く、しかもデスクワーク。それまで接客業をしていた彼女にとっては、望みうる限り理想的な条件がそろっていた。「完璧だった」と本人が書いているとおりである。
ただし、条件が良い求人ほど、落としたときの痛手も大きい。しかも彼女にとって、これは数年ぶりの面接だった。オフィス勤めの経験そのものがなく、面接のためにきちんとした服を着ること自体が初めてである。ジャケット、タイトスカート、ストッキング、バレエシューズ。鏡の前で整えた自分の姿は、どう見ても自分ではなかった。公的機関の仕事だという事実も、緊張に上乗せされていく。
受付でいきなり空回りする
会場に着き、受付の男性に名前を告げたところで、彼女は最初のつまずきをやらかす。「こんなに早く来てしまってすみません」と謝ってしまったのだ。時計を見れば、面接の15分前。社会人として、まったく早すぎない時間である。
受付の男性は妙な顔をして、「そんなに早くはないですよ……」と返した。おそらく相手は安心させようとしただけなのだが、緊張の極みにいる本人には、そう受け取る余裕がない。開始前から、彼女の中では「もう変なことを言ってしまった」というカウンターが1から始まっていた。
やらかしの一部始終
面接そのものは、むしろうまくいっていた
ところが、始まってみると面接は良い方向に転がった。緊張のあまり喋りすぎている自覚はあったし、話があちこちに飛んでいる感触もあった。それでも彼女なりに、落ち着いて、きちんとした受け答えを心がけた。
そして何より、部屋の空気が良かった。面接官たちはよく笑い、彼女の話に乗ってくれた。手応えがはっきりある。これは押せている、気に入られている——終盤に差しかかったころ、彼女はそう確信できるところまで来ていた。
「何でも一つテレビ番組を作れるとしたら?」
あと少しで終わるというところで、部署長が予想外の質問を投げてきた。「もし何でも好きなテレビ番組を作れるとしたら、何を作りますか?」。アメリカの面接では、こうした仕事と直接関係のない質問で応募者の人柄を見ようとすることがよくある。「10年後どうなっていたいですか」「自分を動物に例えると?」の親戚のような一問だ。
「いい質問ですね!」と応じて、彼女は少しだけ間を置いた。そして、はっきりとした声でこう答えた。
「オポッサムたちが古典文学を再演する番組を作ります。ほら、『ロミオとジュリエット』とか『グレート・ギャツビー』とか。小さな衣装を着せたりして」
誰ひとり笑わなかった数秒
部屋が凍った。誰も何も言わない。笑い声どころか、面白がる顔も、驚いた顔もない。全員が、頭が二つある人間を見るような目でこちらを見ていた。
永遠に感じられた数秒——実際にはほんの数秒だったはずだ——のあと、部署長がためらいがちに口を開いた。「それは……なぜですか?」。
ここで彼女は完全に言葉に詰まる。「えっと……オポッサムが一番好きな動物で。古典文学も好きで。だから、まあ、はい」。自分の頭の中では、気さくで、ちょっと不器用だけど感じのいい人という、まわりからよく言われる自分の空気をうまく出せているつもりだった。だが現実は違った。気まずさは一瞬で場を覆い、彼女はただ沈黙を埋めようと必死になっていた。
そのあと彼女のほうから質問をいくつかして、今後の流れの説明を受け、退室。廊下に出るまでのあいだ、頭の中では「あの質問で」という言葉だけがぐるぐる回っていた。よりによって、あの質問で。
その後
投稿の時点で、彼女はまだ結果を知らされていなかった。それでも本人の見立ては悲観的だ。「たぶん面接を台無しにした。怖くて仕方ない」。あの手の性格を見る質問では、いつも笑いを取ってきたという自負があっただけに、落差も大きい。しかも本人は、自分の答え自体には今も納得している。犬が名作文学を演じる『ウィッシュボーン』が成立したのなら、オポッサム版だって見たい人はいるはずだ——もちろん、全員イギリス訛りで喋るのである。
投稿は思わぬ数の共感を集め、彼女は追記でいくつか補足している。数年ぶりの面接だったこと、あんなにかしこまった服を着るのも初めてだったこと、そして「公的機関の仕事」といっても、実際は仕切りのある机で書類とファイルを確認するだけの、まったく大がかりでない事務だったこと。想像されているような、ものものしい職場ではないという説明である。
そして翌朝、彼女のもとに雇用主からのメールが届いた。採用である。身元確認の手続きが残っているうえに休暇の予定も入っているため、実際の勤務開始は数週間先になるという。「完全に嫌われたわけじゃなかったなんて、正直びっくりしている。自分がどれだけ人の顔色を読めないかがよく分かった。もう接客業をやっていなくて本当によかった」と、彼女は書いている。凍りついたと思っていた数秒は、少なくとも不採用の理由にはならなかったわけだ。
ちなみに投稿には「この話、AIが書いたのでは」という疑いのコメントも付いたそうで、それに対する返答も追記されている。「AIではありません。ただ、疑ってくれてありがとう。本物の人間の気まずさだけは、AIには絶対に再現できませんので」。この一文だけで、彼女が面接で狙っていた空気がどういうものだったのか、なんとなく伝わってくる。
海外の反応
1. やらかし名無しさん
正直に言うと、その答えを聞いたらこっちが採用したくなる。書類を確認するだけの仕事だとしても、そういう頭の中を持っている人と同じ部屋で働きたい。
2. やらかし名無しさん(>>1への返信)
相性を見る質問としてはよくできていると思う。あの答えを面白がれない職場だったなら、入る前に分かってよかったということだ。入社してから気づくよりずっといい。
3. やらかし名無しさん
面接官が『ウィッシュボーン』を見ていなかっただけの話だろう。犬が衣装を着て名作文学の主人公を演じる番組が実在して、しかも子ども番組として何年も続いたんだぞ。オポッサム版は動物を差し替えただけで、発明ですらない。
4. やらかし名無しさん
想像し始めたら止まらなくなった。オポッサムの『ハムレット』が「生きるべきか、死ぬ……」まで言ったところでばたりと倒れて動かなくなり、しばらくしてから「……べきか」と続ける。あの動物、死んだふりに関しては演技指導がいらない。
5. やらかし名無しさん(>>4への返信)
オポッサムでシェイクスピアをやるのに、死んだふりの見せ場が『ハムレット』でいいのか。仮死の薬を飲んで倒れる『ロミオとジュリエット』こそ、この企画の本命だろう。投稿者が真っ先にその題名を挙げたのは偶然じゃないと思う。
6. やらかし名無しさん(>>4への返信)
『不思議の国のアリス』も見たい。アリス役のオポッサムが木を見上げると、枝からしっぽ一本でぶら下がったチェシャ猫役のオポッサムが、限界まで口を横に広げて笑っている。もう頭の中では第1話が完成している。
7. やらかし名無しさん
これは面接官側の落ち度だ。何でも自由に答えられる質問をしておいて、自由な答えが返ってきたら固まるというのは筋が通らない。自分は「あなたの弱点は?」と聞かれたら、必ず「まずクリプトナイト(スーパーマンの唯一の弱点とされる架空の鉱物)ですね」から始めることにしている。そこで誰も笑わない会社は、自分には合わない会社だ。
8. やらかし名無しさん(>>7への返信)
自分はその流れで「宿敵は、自分の名前を逆さから読んだやつです」まで言うことにしている。面接は一方通行の審査じゃない。こっちも相手を見ている、というのを分かってもらう手っ取り早い方法でもある。
9. やらかし名無しさん
役所の事務仕事には創造性が余りすぎている気がする。それはそれとして、自分ならその一言だけで採用を決める。履歴書の資格欄を10行読むより、その答え一つのほうが人柄が分かる。
10. やらかし名無しさん(>>9への返信)
公的機関の面接チェックリストで採点してみよう。緊張しがち ✅/権威を前にするとすぐ謝る ✅/到着時刻を異常に気にする ✅/自由な発想 ❌。三つ通って最後で落ちる、実に惜しい候補者である。
11. やらかし名無しさん
失敗したというより、面接官が創造性に絶句しただけだと思う。あの質問に対して、そんな答えを出した応募者が今まで一人もいなかったんじゃないか。沈黙イコール否定とは限らない。
12. やらかし名無しさん(>>11への返信)
投稿者自身、面接の場で「本当に退屈な仕事ですよ」と念を押されたと書いている。単調な作業のほうが創作の元気を私生活に取っておけるから向いている、という理屈も添えていた。だとするとあの答えは、向いていない証拠どころか向いている証拠だ。
13. やらかし名無しさん
面接という制度そのものが本当に嫌いだ。緊張をほぐす雑談くらいは分かる。だが仕事と関係のない質問を投げて、それで人を測ろうとする意味が分からない。自分も昔スポーツ用品店の店長だったころ、上から言われて「好きなアニメのキャラクターは?」と全員に聞いていた。今は電気工事の見習い4年目だが、その面接で聞かれたのは「時間通りに来られるか」「重いものを持てるか」「高い所は平気か」の三つだけだった。あれで十分だったと思う。
14. やらかし名無しさん(>>13への返信)
あの手の質問の正体は「聞くけれど、正直な答えは求めていない。こちらが聞きたい答えを言ってほしい」だ。しかもその『聞きたい答え』は、面接官の機嫌と時間帯と、その日の天気で変わる。当てられるほうがおかしい。
15. やらかし名無しさん
その面接官たち、相当退屈な人たちに見える。自分だったらその場で吹き出していたし、ユーモアの点数を加算していた。台本を書く仕事の面接でもない限り、そういう質問をするならそういう答えが返ってくる覚悟くらいしておくべきだ。
16. やらかし名無しさん(>>15への返信)
一瞬「オポッサムが退屈」と言っているのかと思って身構えた。ただ読み返すと、確かに投稿者はオポッサムの説明にほとんど字数を割いていない。あの企画の魅力を伝えきれなかったのが、この面接の唯一の敗因かもしれない。
17. やらかし名無しさん
そのオポッサムたちに濃いオーストラリア訛りをつけて、そのうえで内容と全然合っていない字幕を流そう。それで完成だ。採用。もう配信サービスの契約を用意して待っている。
18. やらかし名無しさん(>>17への返信)
訛りの動物が違う。オーストラリア訛りでやるなら、北米のオポッサムではなくフクロギツネ(オーストラリアに住む、名前のよく似た別の有袋類)を使わないと辻褄が合わない。企画会議はこういうところでもめる。
19. やらかし名無しさん
自分も似たようなことをやったことがある。「あなたを動物に例えると?」と聞かれて、真顔で「フクロウです。夜しか働きたくないので」と答えた。空気は完全に死んだのに、なぜか採用された。あの職場は5年続いたので、たぶん間違っていなかったのだと思う。
20. やらかし名無しさん
自分は「10年後、どうなっていたいですか」に「生きていたいです」と答えたことがある。冗談のつもりだったのだが、面接官が真顔で「それは……最低限の目標ですね」と返してきた。あの数秒の沈黙は今でも思い出す。ちなみにその会社にも受かった。
21. やらかし名無しさん
正直さと素直さがそのまま出ている答えだと思う。取り繕った模範解答を並べるより、よほど人柄が伝わる。いい返事が早く来ますように。
22. やらかし名無しさん
即座に採用するし、その番組は自分の心の支えになると思う。というより、その企画の存在を知ってしまったせいで、実在しないことが今けっこう悲しい。ナレーションはイアン・マッケラン(『ロード・オブ・ザ・リング』のガンダルフ役の俳優)で頼みたい。
まとめ
面接の終盤、和んだ空気の中で投げられた「何でも番組を作れるとしたら?」に、好きな動物と好きな文学を正直に掛け合わせて答えたら、部屋が凍りついた——という一件。海外の反応では「その答えを笑えない職場のほうが問題だ」「自由に答えていい質問をしておいて固まるのは面接官の落ち度」という擁護がほとんどで、途中からは番組の配役や訛りの議論に発展していた。そして結末は採用。凍った数秒は本人が思っていたほど致命的ではなかったわけで、面接で言ってしまった一言を今も夜中に思い出す人には、少しだけ効く話ではないかと思う。

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