ある日、左足が痛くなった。寝違えたか、ひねったか、そのうち治るだろう——最初はその程度の話だった。ところが痛みは引くどころか両足に広がり、3か月後には歩行器なしでは立てず、大学を辞めることまで考える状態になっていた。血液検査も画像検査もひと通り受けて、それでも原因は分からない。最後に答えを引き当てたのは、投稿者が自分でやった10分ほどのネット検索だった。
※注:この話に出てくる「感覚過敏」は、自閉症などにともなって、味やにおい、舌ざわりといった刺激を人より強く受け取ってしまう特性のこと。投稿者の場合はやわらかい食感が受けつけず、果物と野菜のほとんどが食べられない。好き嫌いではなく、無理に口に入れると体のほうが拒否してしまうタイプの困りごとです。
何をやらかした?
📌 自閉症の感覚過敏があり、果物と野菜をほとんど食べられないまま大学生活を送っていた投稿者。足の痛みから始まった不調は、足底腱膜炎と診断されても良くならず、やがて両脚があざだらけになり、最後は歩行器と車いすが必要なところまで悪化した。原因は、大勢の専門医が誰ひとり疑わなかったビタミンC不足——壊血病だった。
事の発端
「まずい」のではなく、体が受けつけない
投稿者は自閉症で、食べ物の食感に対する感覚過敏がある。とくに苦手なのが、果物と野菜の多くに共通する「やわらかさ」。そのため子どものころから、果物と野菜がほとんど食卓に上がらない食生活が続いていた。
本人が後にコメント欄で書いているが、これは味の好き嫌いとはまったく別の話だ。「まずいから食べない」のではなく、口に入れると吐きそうになる。自閉症と診断されたのが14歳と遅かったこともあり、それまでは単なる偏食として扱われ、「四の五の言わずに皿のものを食べなさい」と言われ続けてきた。吐き気をこらえている最中にそう言われるのだから、食べ物の話題は投稿者にとってずっと気まずいテーマだった。両親は投稿者が成長するにつれて「一時的な好き嫌いではない」と理解してくれたが、自閉症に詳しくない相手が向かいに座っていると、つい説明をはしょってしまう癖がついた。診察室でも同じだったという。
春学期の終わりに、左足が痛みだす
異変が起きたのは今年の春、大学2年目の春学期を終えようとしていた時期だった。左足が痛い。寝相が悪かったか、足首をひねったか。そう思って歩く量を減らし、治るのを待った。ところが痛みは消えず、それどころか反対の足まで痛みだした。
やらかしの一部始終
足底腱膜炎、という診断
2週間たっても良くならない。大学から実家に戻ったタイミングで、投稿者はかかりつけの診療所に連絡し、その日に空いていた別の医師の診察を受けた。歩けば歩くほど痛む、痛みは主に腱のあたりに感じる、どこかにぶつけたわけでもないのに突然始まった——症状をひと通り説明した結果、下された診断は足底腱膜炎(足の裏の膜に炎症が起きて、かかとや土踏まずが痛む症状)だった。
処方された中敷きを靴に入れてみると、かえって痛みが増した。もう一度診療所へ行き、今度はまた別の医師にかかると、勧められたのはリハビリと専用の靴。それでも足の状態は落ちる一方で、まっすぐ立つのが難しくなり、足の裏を床にぺたりとつけられず、つま先立ちでしか体を支えられなくなった。
あざが出はじめる
ちょうどそのころ、太ももに紫と黒の大きなあざのような腫れが現れ、右のふくらはぎにも少し出てきた。リハビリでは太ももの裏の筋肉がひどく硬くなっていると指摘され、毎日ストレッチをするように言われた。姿勢が崩れているせいで歩くだけで疲れ果ててしまうことを相談すると、歩行器を使ってみてはどうかと提案された。
1週間後、2回目のリハビリに行ったときには、投稿者はすっかり歩行器に頼りきりになっていた。つま先立ちのまま足を引きずり、少し前かがみで、両脚はあざで覆われ、バランスもまともに取れない。わずか1週間での変わりようにリハビリの担当者は青ざめ、その日の予約も、以降の予約もすべて取り消された。何が起きているのか分からない、これ以上悪くしたくないから、時間外の救急クリニックへ行ってほしい——そう言われて帰された。
検査、検査、検査。それでも原因は分からない
言われたとおり救急クリニックへ行き、血液検査を受けた。異常なし。あざだらけの脚を超音波で診てもらった。これも異常なし。「もっと悪くなるようなら大きい病院の救急外来へ」と言われて、その日は家に帰された。
そして実際に悪くなった。一瞬立っているのもつらくなり、ほとんどベッドから出られない。シャワーを浴びるにも椅子が要る。ひどい立ちくらみが続き、座った状態から立ち上がるのにも苦労するようになった。
父親の運転で大きな病院の救急外来へ。滞在時間はおよそ12時間。血液検査を何本も、脚の超音波をもう一度、CT、MRI、さらに心理士との面談まで受けて、それでも答えは出なかった。帰りに渡されたのは紹介状の束だ。神経の問題を疑って心理士へ、がんを疑って血液内科・腫瘍内科へ、そして体が自分自身を攻撃してしまう自己免疫の病気を疑ってリウマチ科へ。医師も看護師も、自己免疫のどれかだろうと考えている様子だったという。
自分で頼んだ、たった1項目の血液検査
ここで時間を少し巻き戻す。2回目のリハビリの後、救急クリニックに行くより前に、投稿者は自分から特定の項目の血液検査を頼んでいた。ビタミンCである。
きっかけは、かかりつけの主治医から受けた「ネットでは何を調べたのか、自分では何だと思っているのか」という質問だった。そのときはろくに調べていなかったので答えられなかったが、後から検索してみると、ビタミンC不足の症状に自分の状態と重なるものがいくつもあった。それで、ものは試しと1項目だけ検査に加えてもらった。
結果が戻ってきたのは、血液内科・腫瘍内科の初診の朝。数値は「0.1未満」。基準値が0.4〜2.0とされるところ、正確な数字すら出せないほど下回っていた。
「ビタミンCだけのはずがない」
それでも予定どおり大きな病院へ向かった。駐車場は道路の向こう側の立体駐車場。歩行器を押しながらゆっくり進み、エレベーターに乗って横断歩道を渡ったところで、もう限界だった。痛みと疲労がひどく、ぜんそくの発作まで起きた。なんとか座れる場所までたどり着いたが、そこから先は一歩も動けない。付き添っていた父親が車いすを見つけてきて、目的の科まで押していった。
体重を測るために何にもつかまらず立つことすら難しく、大きくふらつき、息を切らせながらどうにか耐えた。姿勢が崩れきっていて、身長の測定は最初からあきらめた。診察で投稿者がビタミンCの結果を持ち出すと、医師の答えはこうだった。ビタミンCだけでここまでになるはずがない、裏に何か別の原因があるはずだ。追加の検査が組まれ、脚の生検(組織を少しだけ取って調べる検査)の予定まで入った。
その後
1週間半で、歩けるようになった
その日から投稿者は、少しでも足しになればという気持ちで、1日1,000mgのビタミンCを摂りはじめた。当時の精神状態はかなり落ちていたという。自分の身の回りのことができない、ベッドから出られない、働けない。一人暮らしで犬もいる状況で、車いすのまま全部の授業に出るのは無理だと判断し、次の学期は休むつもりでいた。大学そのものを辞めることも頭をよぎっていた。
ところが、1日ほどで立ちくらみが減った。あざは広がるのを止め、やがて薄くなりはじめた。痛みが消えた。1週間ほどで、腱の突っ張りで多少ぎこちないながらも、足の裏を床につけて歩けるようになった。家の中を歩く、料理をする。体力を戻すために少しずつ動く量を増やしていき、1週間半が過ぎるころにはほぼ元どおりになっていた。
ここまで来て、投稿者はようやく察した。裏に別の病気などなかったのだ。あったのは重度のビタミンC欠乏——つまり壊血病(かいけつびょう)だけだった。ビタミンCが極端に足りなくなると、血管や皮膚、腱などを支えるコラーゲンがうまく作れなくなり、あざができやすくなったり、体のあちこちが痛んだりする。大航海時代、長い航海に出た船乗りを苦しめた病気として知られている。診てくれた医師自身が「1800年代の教科書でしか読んだことがない」と口にするような病名だった。
「見て、この見事な歩きっぷり」
最初の異変から解決まで、およそ3か月。目まぐるしい3か月だった。今の投稿者は大学に戻り、19単位(アメリカの大学ではかなり詰め込んだ履修数)を取りながら働いている。自分で料理をする回数を増やし、以前より食生活に気を配るようになった。周囲の誰も、投稿者がついこの間まで車いす生活に片足を突っ込みかけていたことを知らない。
「おかげで、今の健康と、自分にできることのありがたみが分かるようになった。それまで考えもしなかった問題について考えるきっかけにもなった」と投稿者は書いている。ちなみに、足の裏を床につけて歩けるようになった最初の日、帰宅した父親をつかまえて「見て」と自慢し、見事な歩きっぷりを披露したそうだ。
※注:これは投稿者ひとりの体験談です。検査も診断も医療機関で進んだ話であり、似た症状が出たからといって同じ原因とはかぎりません。体の不調が続くときは自己判断で済ませず、医療機関に相談してください。
海外の反応
1. やらかし名無しさん
ようこそ船乗りの世界へ、と言いたくなる話。まさか21世紀の大学生が壊血病になるとは思わなかった。しかもこの病気、こういうケースでじわじわ増えてるらしいと聞いたことがある。
2. やらかし名無しさん(>>1への返信)
気になって調べたら、なりやすいのは自閉症の人と大学生なんだって。自分はその両方に当てはまるので、読みながら普通に背筋が寒くなった。
3. やらかし名無しさん
言いにくいんだけど、2段落目を読んだ時点で壊血病だと思った。よく自分で気づいて、しかも医者にちゃんと言えたね。医者が思いつかないのも無理はないと思う。この病気、帆船と一緒に歴史の向こう側へ消えたようなものだから。
4. やらかし名無しさん(>>3への返信)
そもそもタイトルにほぼ答えが書いてあるからね。読者側だけ有利すぎる。当事者は3か月かけてそこにたどり着いてるわけで、後出しで当てても威張れない。
5. やらかし名無しさん
何を食べていたのかが気になる。ここまで栄養が偏るのって、狙ってやろうとしても逆に難しそうな気がするんだけど。
6. やらかし名無しさん(>>5への返信)
本人がコメント欄で答えてた。9割はパスタに粉チーズをかけたやつ。あとはプレーンなパンケーキ、肉、乳製品、炭酸、お菓子。野菜はごくたまにミニにんじんかミニきゅうりで、これが後から調べたらビタミンCはあまり入っていなかったという落ちまで付いている。
7. やらかし名無しさん
自分も食べられるものが少ないタイプで、ここまでではないけど他人事とは思えない。うちは果物をミキサーにかけて飲み物にすることで乗り切ってる。やわらかさそのものは消えないけど、固形じゃなくなるだけでだいぶましになった。
8. やらかし名無しさん(>>7への返信)
いちごやベリーの種のつぶつぶが苦手だったんだけど、ある程度ちゃんとしたミキサーだと粉々にしてくれる。安すぎるやつだと逆に食感が残るので、そこはケチらないほうがいいというのが個人的な結論。
9. やらかし名無しさん
これだけの状態で血液検査に何も引っかからないのが、どうしても腑に落ちない。あれだけ本数を採っておいて素通りするものなんだろうか。
10. やらかし名無しさん(>>9への返信)
引っかかるよ、その項目を調べたときだけは。血液検査は「一滴で全部わかる」ものじゃなくて、疑った項目を選んで調べるもの。ビタミンC不足は先進国ではまず起きないことになっているから、そもそも最初の候補に入っていない。
11. やらかし名無しさん
画像検査を積み重ねる前に、普段何を食べているかを聞く流れがあってもよかったんじゃないかと思う。栄養は問診で聞けるのに、そこが最後まで空白のままだった。
12. やらかし名無しさん(>>11への返信)
聞いても正しく伝わらないことがあるんだよね。投稿者も、自閉症に詳しくない医者だと「食べられない」を「好き嫌い」と受け取られるのが怖くて、つい詳しく言えなかったと書いてる。どちらが悪いというより、両側でかみ合わなかった話に見える。
13. やらかし名無しさん
うちの大学でも似た話を何度か聞いた。寮に入った新入生が炭水化物とたんぱく質しか食べなくなって、じわじわ壊血病になる。若いと「なんか最近しんどいな」で流してしまうのが厄介なところ。
14. やらかし名無しさん
今って人類の歴史で唯一、加工食品だけで生きていけてしまう時代なんだと思う。昔は近所で採れるものを食べるしかなかったから、いやでもいろいろ口に入った。選べるようになったぶん、片側に振り切ることもできてしまう。個人的な感想なので話半分に聞いてほしいけど。
15. やらかし名無しさん
食べられるものが少ない自覚がある人は、まず主治医に事情ごと話してみてほしい。うちは相談したら足りない分をどうするか一緒に考えてくれて、自己流であれこれ試すよりずっと早かった。
16. やらかし名無しさん(>>15への返信)
気持ちは分かるけど、投稿者の場合はもうその段階を通り越してると思う。食べることの困りごとと発達特性の両方が分かっている医者にたどり着けるかどうかが、いちばん大きい。
17. やらかし名無しさん
「大勢の専門家が誰も調べなかったのに、自分の10分の検索が学業を救った」の一文が刺さる。医者はネットで調べてくる患者を煙たがりがちだけど、実際に自分で自分を助けられることはある。検索は医療の代わりにはならないが、補助としてはかなり優秀だと思う。
18. やらかし名無しさん
自分も自閉症だけど、感覚の出方が正反対で、家で作ったものしか受けつけない。ファストフードや出来合いのものを食べると調子が悪くなるし、何日か野菜を切らすと体が明らかに重くなる。同じ特性でここまで逆に出るのかと、読んでいて不思議な気分になった。
19. やらかし名無しさん
ハンドルネームにキウイが入っている人が壊血病になるの、話としてできすぎている。ビタミンCの塊みたいな名前を掲げておいて、それか。
20. やらかし名無しさん(>>19への返信)
本人いわく、キウイは好きでもないし、そもそも食べたことがあるかどうかも怪しいらしい。12歳のときに気に入った名前へ語呂で足しただけで、それ以来ずっとこの名前なので今さら変えられないとのこと。
21. やらかし名無しさん
そこから復帰して19単位を取りながら働いてる、というのがいちばん驚いた。自分は12単位でも仕事と家庭の両立でひいひい言っていたのに。ともあれ元気になって本当によかったと思う。
まとめ
やわらかい食感が受けつけない。ただそれだけの理由で果物と野菜が食卓から消え、3か月かけて歩けなくなる。診断がついてしまえば単純な話なのに、途中で会った医師は誰もそこにたどり着かなかった。コメント欄も「現代で壊血病とは」という驚き一色では終わらず、食べられない側の事情、栄養を最後まで疑わなかった診察の流れ、そして自分で調べることの功罪へと広がっていった。復帰した投稿者が父親に最初に自慢したのは、足の裏を床につけて歩くという、たいていの人が意識すらしない動作だった。
元ソース: 果物と野菜を食べなかったせいで、やらかした話

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