「迎えは外に来ています」——病院を出るために、投稿者がついた嘘はそれだけだった。引っ越してきたばかりの街に、半日つぶして迎えに来てくれるような相手が一人もいなかったからである。ところがその数時間後、本人は膝から血を流しながら、かかりつけの動物病院の受付で泣き叫んでいた。しかも、その間の記憶がほとんどない。自分が何をやったのかを知ったのは、あとから届いた1通のメールと、なぜか傷だらけになっていた自分の膝を見たときだった。
※注:アメリカでは、全身麻酔を使う手術のあと、患者を家まで連れ帰る「付き添いの大人」を病院に届け出るのが決まりになっている。ひとりでの帰宅も、タクシーや配車アプリでの帰宅も原則として認められない。また記事に出てくるフェンタニルは、手術後などに使われる非常に強い医療用の鎮痛剤で、依存性の高さから乱用が社会問題になっている薬でもある。
何をやらかした?
📌 全身麻酔と強い鎮痛剤を使う手術を受けた投稿者。だが引っ越したばかりで付き添いを頼める相手がおらず、「迎えは外に来ています」と嘘をついて配車アプリで一人で帰宅した。そこから記憶はほぼ真っ白。その空白の時間のあいだに、飼い猫を連れて出国するための書類の件でかかりつけの動物病院へ電話をかけ、内容は不明ながら「今後、当院ではお引き受けできません」というメールが届く事態に。さらに自転車でその動物病院へ向かい、道中で転びまくって膝から血を流したまま受付で号泣。病院で付けられたままの腕のリストバンドを振りかざし、「私は今、麻酔と鎮痛剤が効いてるの!」と叫んだ。
事の発端
引っ越したばかりの街に、迎えを頼める人がいなかった
出来事があったのは2週間ほど前。投稿者が受けたのは、規模としては小さいものの、全身麻酔と強めの鎮痛剤を使う手術だった。事前に病院からは「終わったあと、必ず誰かに迎えに来てもらってください」と念を押されている。よくある案内で、書類にもそう書いてある。問題は、投稿者がその直前に国の反対側へ引っ越してきたばかりだったことだ。知り合いはまだほとんどいない。平日の昼間に半日つぶして病院まで来てくれる相手など、どう考えても一人も思い浮かばなかった。
そこで出てきたのが、あの一言である。「迎えはもう外に来ています」。実際には誰も来ていない。手術を終えた投稿者は、そのまま配車アプリで車を呼び、一人で家に帰った。本人としては「タクシーで帰るくらい、大した話ではない」という感覚だったという。ここまでは、たぶん多くの人が同じことを考える。実際、これで問題なく帰れてしまう人もいる。
翌週に迫っていた出国と、猫の書類
もうひとつ、この日の投稿者の頭には引っかかっている用事があった。翌週、投稿者は国外へ発つ予定で、飼っている猫も一緒に連れて行くつもりだったのである。そのためには、かかりつけの動物病院に書いてもらわなければならない書類がある。動物を連れて国境を越えるには、健康状態やワクチンについて獣医の証明が要るうえ、いつ発行されたものかという日付の条件まで細かく決まっている。要するに、期限つきで、面倒で、絶対に忘れてはいけない案件だった。
そして麻酔から覚めたばかりの、まともに物を考えられない頭の中にも、その「やらなきゃいけないこと」だけはしっかり残っていた。よりによって、そこだけが残っていたのが、この日の運の尽きだった。
やらかしの一部始終
記憶のない時間に、動物病院へ電話をかけてしまう
手術のあと、その日の大半について投稿者に記憶はない。目は開いていて、体は動いていて、人と喋ってもいたはずなのに、後から思い出せることがほとんどない状態である。そしてその空白のどこかで、投稿者は動物病院に電話をかけた。猫の書類の件で、である。何を話したのかは、本人にも一切分からない。
分かっているのは結果だけだ。しばらくして、動物病院から一通のメールが届いた。要約すると「今後、あなたを飼い主としてお引き受けすることはできません」。アメリカの動物病院は、飼い主との信頼関係が壊れたと判断した場合、こうして正式に関係を打ち切ることができる。とはいえ、そう頻繁に出てくる措置ではない。つまりあの電話は、そこまでさせるだけの内容だったということになる。
自転車で動物病院へ、道中で標識に激突
次に記憶がつながるのは、なぜか自転車をこいでいる場面である。行き先は、たった今こちらを切ったばかりの動物病院。幸い数ブロック先で、車道を延々と走るような距離ではなかった。ただし本人いわく、道中は「あちこちで転びまくっていた」。しかも、途中で道路標識にぶつかった記憶がうっすらあるという。気がつけば膝からは血が出ていた。
言うまでもないが、麻酔のあとは車の運転が禁止される。自分の判断でハンドルを切り、自分の足で進む乗り物だという意味では、自転車も何ら変わらない。この日、投稿者の中で判断を下していたのは投稿者本人ではなく、体に残っていた薬のほうだった。
受付で、腕のリストバンドを振り回しながら
そして気がつくと、投稿者は動物病院の中に立っていた。「出禁にされた」というショックで号泣し、大声を出している。手首には、病院で付けられたままのリストバンドが残っていた。投稿者はそれを職員に向かって振りかざし、こう叫んだそうである。
「私は今、麻酔と鎮痛剤が効いてるの!」
本人としては、事情を説明しようとしていたのだろう。ただ、受け止める側から見れば、膝から血を流した人物が受付で泣きながら薬の名前を叫んでいる、という絵面である。投稿者自身も後になって「あれは完全にその筋の人に見えたと思う。そもそも本当にあの薬が使われていたのかも怪しい」と書いている。叫ぶ内容までが、薬まかせだったわけである。
その後
動物病院との関係は、そのまま終わった。スレッドで「結局その後、戻れたんですか」と聞かれた投稿者は、「いいえ。というより、もう二度とあそこに顔を出せる気がしません」と答えている。歩いて数分の距離にあった猫のかかりつけを、たった一日で失った形である。
そして、いちばん気になる「電話で何を言ったのか」については、実は答えが存在する。関係の打ち切りを伝えるメールに、その理由がちゃんと書かれていたのである。ところが投稿者は、それを掲示板に書かなかった。「メールには書いてありました。でも恥ずかしすぎて、ここにも書けません」。1300以上の支持が集まったスレッドで、肝心の一行だけが永久に伏せられた。
投稿者自身が最後に書いた教訓は、いたってまっとうなものだった。病院が「麻酔のあとは誰かについていてもらってください」と言うのは、心配しすぎているからではない。配車アプリで帰るくらい平気だろう、と思っていると、気がついたときには膝から血を流しながら動物病院で叫んでいる側に回っている。次に同じことがあれば、術後に付き添ってくれる有料のサービスを使うつもりだ、とも書き添えていた。
海外の反応
1. やらかし名無しさん
うちのかかりつけの病院は、迎えに来た人が受付まで上がってきて、名前と本人との関係を名乗らないと患者を帰してくれない。軽い鎮静で終わるような処置のあとですら、そこだけは絶対に省略されなかった。
2. やらかし名無しさん(>>1への返信)
この1年で何度か処置を受けたけど、どこも「付き添いの人は待合室にずっといてください」が条件だった。建物の外で待たせておくのも駄目。だから今回の話は、正直かなり驚いている。
3. やらかし名無しさん(>>2への返信)
うちのところは、迎えが誰で自分とどういう関係かまで先に登録させられる。処置の進み具合が向こうから連絡されて、終わったら車椅子で出口まで運ばれて、車が横につくまで立たせてもらえない。
4. やらかし名無しさん
まず、動物病院で麻酔を受けるのをやめるところから始めたほうがいいと思う。人間には人間用の病院というものがあって、そちらのほうが設備も人手もそろっています。
5. やらかし名無しさん(>>4への返信)
投稿者です。人間のほうの病院でしたよ! そのあとなぜ動物病院に向かったのかについては、こちらが教えてほしいくらいです。自分でもまったく説明がつきません。
6. やらかし名無しさん
股関節の手術のあと友人を迎えに行って、処方薬を受け取る数分だけ車に一人にした。戻ったときは何も変わった様子はなかった。ところが翌週から、本人に覚えのない荷物が次々に届きはじめた。履歴を見たら、注文はすべてあの数分間。以来その友人は、術後24時間はスマホを取り上げられている。
7. やらかし名無しさん(>>6への返信)
自分は手術直後の24時間で、テレビのリモコンを42個買っていた。手元のを何度も見失って、そのたびに買い直していたらしい。ついでにバスローブも4着届いた。あの日の自分が何と戦っていたのか、今でも分からない。
8. やらかし名無しさん(>>7への返信)
自分は「処置のあとはネットで大きな買い物をしないでください」と念を押されて帰宅し、その足で好きなバンドのライブチケットを取った。念押しの効き目が、家に着くまでも持たなかったことになる。
9. やらかし名無しさん
正直に言うと、これは笑い話として消費していい話ではないと思う。全身麻酔のあとに付き添いをつけるのは基本中の基本だし、ふらつきながら自転車で走っていたら、巻き込まれるのは他人だった可能性がある。
10. やらかし名無しさん(>>9への返信)
言いたいことは分かるし基本的には同意する。ただ、病院側も迎えの人の顔を一度も見ないまま帰してしまったわけで、そこはそこで問題があると思う。嘘をついた本人が悪いのは大前提としても。
11. やらかし名無しさん
「麻酔が効いている」だけならまだしも、薬の名前まで叫んでしまったのが致命的だったと思う。受付から見たら、事情のある人物が押しかけてきたようにしか見えない。
12. やらかし名無しさん(>>11への返信)
投稿者です。絶対にそう思われたはずです。しかも冷静に振り返ると、あのとき本当にあの薬が使われていたのかどうかすら怪しいんですよね。叫ぶ内容まで薬に決められていました。
13. やらかし名無しさん
それで、動物病院とはその後どうなったんですか。事情が事情だし、こちらから落ち着いて説明すれば分かってもらえそうな気もするんですが。
14. やらかし名無しさん(>>13への返信)
投稿者です。いいえ、戻れていません。というより、もうあそこに顔を出せる気がしないというのが正直なところです。猫には申し訳ないけれど、別のところを探すことにしました。
15. やらかし名無しさん
もし関係を続けたいなら、お詫びの品を持って一度行ってみるといいと思う。向こうもそれなりに怖い思いをしたはずだから。動物病院のスタッフは一日中書き物をしているので、書き味のいいペンが意外なくらい喜ばれるという話を聞いたことがある。
16. やらかし名無しさん(>>15への返信)
動物病院で働いている者ですが、いいペンは本当に嬉しいです。備品はだいたい安いものしか置いていないので。あと油性のマーカーもありがたい。そこにチョコレートを添えてもらえたら、もう完璧です。
17. やらかし名無しさん
大腸の検査のあと、当時の同僚に車で送ってもらったことがある。あれから何年も経つのに、帰り道の車内で自分が何を喋ったのかだけは、今も絶対に教えてもらえない。
18. やらかし名無しさん
4年で4回目の手術のあと、自分は2時間ほど暴れ続けたらしい。点滴を全部引き抜こうとして、付き添いに押さえ込まれ、肩を痛めるのではと心配されるほどだったとか。記憶はまったくない。普段は麻酔のあとは眠くなるだけのおとなしいタイプで、こんな反応は初めてだった。証拠は体じゅうに残ったアザだけ。
19. やらかし名無しさん(>>18への返信)
自分は処置の途中で起き上がって、器具を掴んだまま研修医を部屋の隅に追い詰めたらしい。体重は45キロしかないのに。目が覚めたときには押さえられていた。次の受診で謝りたかったのに、その人は部屋に入ってきてもくれなかった。体質に合わない薬というのは本当にあると思う。
20. やらかし名無しさん
歯の手術のあと、母と一緒に薬局で薬ができるのを待つと言い張ったことがある。自分では大丈夫なつもりだった。母が少し目を離した隙に、陳列棚のいちばん下の段を全部払い落として、その場で寝ていたそうだ。もちろん記憶はない。
21. やらかし名無しさん
麻酔のあと一人にするなと言われるのは、ふらつくからだけではない。判断力が落ちた状態で酒や別の薬を足してしまって、そのまま呼吸が止まる人がまれにいるからだと聞いた。今回は動物病院との縁が切れただけで済んだ、と考えたほうがいい。
まとめ
迎えを頼める相手がいないというだけの理由でついた小さな嘘が、記憶のない数時間を経て、動物病院の受付で泣き叫ぶ自分に化けた。失ったのは猫のかかりつけと、電話口で口にしたらしい「恥ずかしすぎて書けない何か」である。海外の反応は、「うちの病院は迎えの人が名乗るまで帰してくれない」という制度の話と、「自分も術後24時間でリモコンを42個買った」という同類の告白でおおむね埋まり、そこへ「笑い話として消費していい話ではない」という厳しい声と、動物病院の中の人による「いいペンをください」という妙に実務的な助言が加わった。麻酔から覚めた直後の自分の判断力を、いちばん過信しているのは、たいていその本人である。


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