「今では流れるように話せます。フランス語では『液体で話す』と言うそうで」が通じなかった日

「今では流れるように話せます。フランス語では『液体で話す』と言うそうで」が通じなかった日 家族

「今では流れるように話せます。フランス語では『液体で話す』と言うそうで」——初対面の義理の両親を笑わせようとして放ったこの一言が、まったく通じなかった。通じないどころか、二人はそれを本物のフランス語だと受け取ってしまった。訂正する機会を逃した投稿者は、そこから6年間、フランス語がペラペラの婿を演じ続けることになる。そして来年、その両親に旅費を出してもらってパリへ行くことが決まった。

※注:欧米では、フランス語は「教養のある言葉」として憧れの対象になりやすく、話せるというだけで一目置かれることがある。そこに「結婚相手の親に初対面で気に入られたい」という圧が重なると、こういう事故が起きる。

何をやらかした?

📌 投稿者は6年前、妻の実家で義理の両親と初めて顔を合わせた。空気がぎこちないなか、話題がフランス語に流れたので、場を和ませようと寒い言葉遊びをひとつ披露した。ところが両親はそれを冗談だと理解できず、「この人はフランス語が話せるのだ」と受け取ってしまう。「どこで習ったの」「私たちにも教えて」と目を輝かせて詰め寄られた投稿者は、気まずさに耐えきれず、とっさに「話せます」と嘘をついた。そこから6年。クリスマスにはフランスワインを贈り、わざと物を落として「メルド」とつぶやき、バゲットの焼き方まで覚え、ときどきベレー帽をかぶり、義理の両親に溺愛されるフランス通の婿として振る舞い続けてきた。そして両親は結婚30周年の記念に、家族全員でパリへ行くと決めた。投稿者の旅費まで出したうえで、「現地では通訳をお願いね」と言っている。投稿者はフランス語を一言も話せない。

事の発端

田舎育ちの娘を、都会の男に持っていかれた両親

6年前、投稿者は妻(当時は交際相手)の実家を初めて訪ねた。もちろん、良い第一印象を残そうと気合いは入っていた。ただ、迎える側の温度はそれほど高くない。義理の両親から見れば、田舎で大事に育ててきた娘が、都会から来た男に持っていかれようとしている場面である。歓迎ムードとは言いがたかった。父親は、素手で木を倒しそうな体格の人だった。

会話は終始ぎこちなく、沈黙のほうが長いくらいだった。当たり障りのない話題を探しては数往復で尽き、また間が空く。投稿者の記憶では、たしか南北戦争のあたりの話をしていたはずだ。それがどういう経路をたどったのか、やがて話はフランス語のほうへ流れ着いた。義母が「若いころからずっとフランス語を習ってみたかったのよ」と言った。

場を和ませようとして、寒い言葉遊びを投下する

ここで空気を変えられれば勝ちだ——投稿者はそう考え、とっておきの(と本人だけが思っている)小咄を口にした。

「数年前までフランス語なんて一言も話せなかったんですが、今では流れるように話せます。なんでもフランス語では『液体で話す』と言うそうで」

※この言葉遊びの仕組み:英語で「流暢に」を意味する fluent は、もともと「流れる」という意味の語から来ている。それをわざと「液体(フランス語で liquide)」に置き換えただけの、いわゆる寒いダジャレである。フランス語にそんな言い回しは存在しない。

やらかしの一部始終

誰も笑わない。代わりに、なぜか拍手された

両親には、この機知がまるで伝わらなかった。フランス語も分からなければ、皮肉のニュアンスも通じていない。ところが反応は、投稿者の予想と正反対の方向へ振り切れた。それまで良くて「冷淡」だった二人の態度が、その瞬間から一変したのである。投稿者いわく、まるでフランスの王妃のように扱われた。それも、革命が起きる前の王妃としてである。

最初、投稿者は「ジョークが刺さったのだ」と思った。おお、と感嘆の声が上がり、「もっとフランス語を聞かせて」とせがまれる。妙だな、とは感じていた。そこまで面白い話ではないからだ。それでも、この家ではフランス語ネタが好まれるのかもしれない、と勝手に納得して、投稿者は手持ちのもう一つのネタを披露してしまった。

「『1、2、3』という名前の猫と、『アン、ドゥ、トロワ』という名前の猫が川を渡ろうとしました。渡りきれたのはどっち? 答えは『1、2、3』のほうです。だって、もう一匹は……アン、ドゥ、トロワ、キャトル、サンク」

※フランス語で1から5は「アン、ドゥ、トロワ、キャトル、サンク」。この「キャトル、サンク」が、英語の「猫が沈んだ(cat sank)」とそっくりに聞こえる、というだけの言葉遊びである。

両親はこれにも大喜びした。あとから振り返れば、二人はどちらの話もまったく理解していなかった。ただ「フランス語を操る若者が、フランス語で何か面白いことを言っている」という絵だけを受け取って感動していたのである。

「どこで習ったの」と聞かれた瞬間に、血の気が引く

雲行きが変わったのは、質問が具体的になったときだった。どこで習ったのか。習得までどれくらいかかったのか。よかったら私たちにも教えてくれないか。ここでようやく投稿者は、自分の言葉が冗談として一切受け取られていないことに気づく。

そこは初対面の場だった。気まずくなるのが何より怖かった。目の前には、素手で木を倒しそうな父親が座っている。投稿者はコンマ数秒で判断し、嘘をつくほうを選んだ。話せます、と。

6年かけて、小さな嘘が雪だるまになる

そして投稿者は、その嘘を6年間つき続けることになった。義理の両親との関係は、そこから順調そのものだった。当初の想定よりはるかに濃い付き合いになり、一緒に過ごす時間も増えていった。本来なら、どこかで白状する機会はあったはずである。ところが、それができない事情ができてしまった。「フランス語ができる人」であることが、両親にとっての投稿者の人格そのもの、存在価値そのものになっていたのだ。投稿者の表現を借りれば、自分はもはやフランスの戯画になっていた。

しかも厄介なことに、疑われるのが怖くて序盤で盛りすぎた。だから以降も、その水準を全速力で維持し続けるしかなかった。事情を知っている人物はただ一人、妻である。妻はこの状況をひたすら面白がっていて、だから両親には何も言わない。共犯というより、観客だった。

投稿者が6年間で積み上げたものを並べると、こうなる。毎年クリスマスには、家族にフランスワインを贈る。もちろんフランスへ行ったことは一度もない。両親の前でわざと物を落としては「メルド」とつぶやいてみせる。バゲットの焼き方も覚えた。ときどきベレー帽をかぶる。両親は、そんな婿をますます愛した。

その後

愛されすぎた結果が、今回の事態である。義理の両親は結婚30周年の記念に、家族全員をパリへ招待すると決めた。来年、感染症の流行が落ち着いたら出発する予定だという。二人は決して裕福ではない。それでも婿の旅費まで負担してヨーロッパ旅行を計画するというのは、この家にとって相当に大きな決断だった。

両親はすっかり浮かれていて、旅行の話になるたびに投稿者へこう言う。現地では通訳をお願いね。地元の人しか知らないような場所へ連れて行ってね。あなたのおかげで、ようやくフランスへ行く決心がついたのよ——。

逃げ道は、投稿者の計算ではすでに塞がっている。今さら旅行そのものを断ることはできない。そんなことをすれば妻に殺される。かといって、現地に着いてから自然にバレるのを待つのも論外で、これも妻に殺される。残された道は、旅立つ前に自分の口から白状することだけだ。とはいえ、6年分の敬意と好意を一度に返上する場面を思い浮かべると、足がすくむ。

投稿者がいちばん悔しがっているのは、そこである。始まりは、誰も傷つけていない、ほんの小さな失敗だった。それが6年かけて転がり続け、気づけば手に負えない大きさになっていた。打ち明けたあと何が起きるのかは分からない。そして、あまり知りたくもない。

※注:この投稿は2020年、世界的な感染症の流行で各国が渡航を制限していた時期のもの。文中の「来年」はその翌年を指している。投稿者がその後どうしたのか、旅行が実現したのかは、元のスレッドからは確認できない。

海外の反応

1. やらかし名無しさん
まだ1年あるじゃないですか。今日から本気でやれば、旅行までに日常会話くらいは間に合います。健闘を祈ります。というかこれ、やらかしの話というより「1年でフランス語を身につけた男」の第1話では。

2. やらかし名無しさん(>>1への返信)
その考え方、好きです。今日やらかした男が、1年後には義理の両親の目の前で流暢なフランス語を披露して全員をひっくり返す。人生でいちばん気持ちのいい伏線回収になりますよ。

3. やらかし名無しさん
個人的には、奥さんがとっくに両親へバラしていて、三人がかりで「この人はどこまで行くのか」を見物している説を推したいです。婿がベレー帽をかぶってバゲットを焼き始めた時点で、そりゃパリまで連れて行きたくなる。

4. やらかし名無しさん(>>3への返信)
それが真相だったら、6年がかりの壮大な仕返しですね。空港に降り立った瞬間、義母が完璧な発音で「さあ、ここからは通訳をお願いね」と切り出すところまで見えました。

5. やらかし名無しさん
かつてフランス語がペラペラだった人間として断言しますが、6年も使わなければ人は本当に忘れます。だから基礎だけ詰め込んでおいて、現地では「久しぶりすぎて全然出てこない」と本気で悔しがってみせればいい。つかなければいけない嘘の量が一気に減ります。

6. やらかし名無しさん(>>5への返信)
自分も昔は小説を丸ごと読めて、現地の人に「あなたフランス人でしょ」と言われるくらいでした。今は簡単な注文でも詰まります。あれは本当に情けない気持ちになるので、演技ではなく素で再現できると思いますよ。

7. やらかし名無しさん
白状するなら、旅費を出してもらう前です。ご両親は裕福ではないのに、婿の分まで払ってフランスへ行こうとしている。そのお金が実際に動いたあとで現地でバレるのが、考えうるかぎり一番ひどい終わり方だと思います。

8. やらかし名無しさん(>>7への返信)
同意します。今なら「6年間ずっと笑わせてくれてありがとう」で着地できる可能性がまだ残っている。旅先の路上で「実は」と言い出したら、その旅行そのものが台無しになりますからね。

9. やらかし名無しさん
正直に言うと、6年引っ張ったのはさすがにやりすぎだと思います。最初の一週間で「あれ冗談だったんです」と言っていれば、全員が笑って終わった話です。ベレー帽をかぶり始めたあたりからは、もう事故ではなく本人の選択ですよ。

10. やらかし名無しさん
フランス人です。わざと物を落として「メルド」と言ってみせる、というくだりで笑いすぎて、怒るべきタイミングを完全に逃しました。本来ならもう少し腹を立てていいはずの話なんですが。

11. やらかし名無しさん(>>10への返信)
同じくフランス人ですが、ベレー帽ですって? こちらで普段からかぶっている人なんて、街を歩いていてもまず見かけませんよ。

12. やらかし名無しさん
パリなら何とかなります。詰まったら英語の単語をフランス語っぽい発音で言えば、だいたい意味は通じますし、相手のほうから英語に切り替えてくれる。あとで「向こうが私の訛りを聞き取れなかったんですよ」と言っておけば体裁は保てます。

13. やらかし名無しさん(>>12への返信)
一応言っておくと、パリでも全員が英語を話せるわけではありません。フランス人はわりと英語が苦手です。市内の観光地から一歩外へ出たら、その作戦は通用しないと思っておいたほうがいい。

14. やらかし名無しさん
パリで生まれ育った者から実用的な助言を。ルーヴル美術館を一日で全部回ろうとしないこと、必ず途中で力尽きます。観光客があまり行かないところならピカソ美術館がおすすめ。朝食はカフェではなくパン屋で買うほうが、安いうえに断然おいしい。ワインは25ユーロも出せば十分に良いものが買えます。あとモンマルトルで、勝手に手首へミサンガを編み始める人がいたら、その場ではっきり断ってください。

15. やらかし名無しさん(>>14への返信)
言葉より街の歴史を勉強しろ、という助言もそこに足しておきたいです。建物や料理の由来を語れるだけで「長年フランスに親しんできた人」に見えますし、肝心の会話のほうは現地の人が英語に切り替えて助けてくれますから。

16. やらかし名無しさん
すみません、最初の言葉遊びが何度読んでも理解できません。

17. やらかし名無しさん(>>16への返信)
大丈夫です。英語で読んでもフランス語で読んでも面白くないので、理解できないのがむしろ正常な反応です。

18. やらかし名無しさん
元フランス語講師です。会話ができるようになりたいなら、単語を当てずっぽうに並べるだけの練習アプリに頼りきるのはやめたほうがいい。まず日常でよく使う動詞の活用と基本文法、次に「食べ物」「仕事」「色」のように分野ごとにまとめて単語を覚える。一日20語でも、一年あればかなりの量になります。映画やドラマで耳を慣らすのは、その土台ができてからです。

19. やらかし名無しさん
逆に、嘘を完成させる方向はどうでしょう。パリに着いてすぐ「昔の友人」役の協力者と落ち合って、義理のご両親の目の前で複雑そうなフランス語の会話を披露する。あとは滞在中ずっと「みんな親切だから英語で話してくれるんだ」で説明がつきます。

20. やらかし名無しさん(>>19への返信)
増築に増築を重ねた家がどうなるかを想像したほうがいいですよ。協力者が当日ドタキャンした瞬間、6年分がまとめて崩れます。

21. やらかし名無しさん
バゲットを一から焼けるようになった時点で、この人はもう半分フランス人でしょう。足りないのは言葉だけです。1年あるのだから、その足りない部分だけ埋めて、堂々と本物になってしまえばいい。

まとめ

通じなかった寒いダジャレひとつが、6年かけてベレー帽とバゲットとフランスワインにまで育ち、最後はパリ行きの航空券になって返ってきた。海外の反応は「今から1年で覚えろ」「いや旅費を出させる前に白状しろ」で真っ二つに割れ、そこへ現地のフランス人が「ベレー帽はさすがにやりすぎだ」と横から口を挟む展開になった。訂正のタイミングを逃した経験は、多くの人に心当たりがあるはずだ。あなたなら、白状しますか。それとも1年で覚えますか。

元ソース: やらかした——6年前に義理の両親へ「フランス語はペラペラです」と嘘をつき、いまその両親とパリへ行くことになった

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