「大丈夫、そのころにはお隣の銀河と合体してるから」。恋人を安心させるつもりの一言だった

「大丈夫、そのころにはお隣の銀河と合体してるから」。恋人を安心させるつもりの一言だった 恋愛

「大丈夫、そのころにはお隣の銀河と合体してるから」。恋人を安心させるつもりで、彼が口にしたのはそういう類の言葉だった。始まりはダイヤモンドの雑学である。そこから星の一生に飛び、太陽の最期に飛び、慰めるつもりでお隣の銀河まで持ち出した結果、ビデオ通話の向こうで彼女は息ができなくなった。どこで話を止めるべきだったのか、本人はいまも考えている。

※注:この記事に出てくる天文の話について。太陽のような星は、一生の終わりごろに大きく膨らんで「赤色巨星」と呼ばれる状態になると考えられている。太陽の場合、それが起きるのはおよそ50億年後というのが一般的な目安。アンドロメダ銀河は天の川銀河のお隣にある大きな銀河で、数十億年先に天の川銀河と近づいて一つになると考えられている。「宇宙の熱的死」は、そこからさらにけた違いに遠い未来に、宇宙全体が冷えきって何も起こらなくなる、という考え方のこと。いずれも人間の一生とは比べようがないほど先の話である。

何をやらかした?

📌 投稿者はネットの掲示板で、見知らぬ相手に「ダイヤモンドは実はありふれた石だ」という長文の返信を書いていた。そのあいだ恋人とはビデオ通話をつなぎっぱなし。「さっきから何を書いてるの?」と聞かれて説明を始めたところ、話はダイヤモンドの成り立ちから星の一生へ、さらに太陽の最期へと脱線していく。彼女が「太陽系から生き物がいなくなる」ことを本気で心配し始めたので、彼は慰めようとした。ところが持ち出したのが「そのころにはお隣のアンドロメダ銀河と合体していて、どのみちここに居場所は残っていないから」という話だった。彼女の中で話は人類の終わりにまで行き着き、体が固まり、息が吸えなくなり、そのまま五分ほど泣き続けた。

事の発端

ダイヤモンドは、実はそんなに珍しくない

その夜、投稿者はネットの別の掲示板で、見ず知らずの相手に向けて長い返信を書いていた。話題は「ダイヤモンドは実際にはかなりありふれた石で、値札ほどの価値はない」という、その手の場所では定番のテーマである。彼はこういう話題になると止まらなくなるたちで、自分でもそれを自覚していた。指はキーボードの上を勢いよく動いていた。

ビデオ通話の向こうで、彼女が気づく

このとき彼は、恋人とビデオ通話をつなぎっぱなしにしていた。顔を見ながら、ときどき言葉を交わす、いつもの夜の過ごし方である。ところが彼女は、画面の向こうの彼がさっきからやたらとキーボードを叩いていることに気づいた。そして聞いた。「ねえ、何書いてるの?」。いま振り返れば、この一問がすべての分岐点だった。「知らない人と掲示板で言い合ってるだけ」とだけ答えていれば、この夜は何事もなく終わっていたはずである。だが彼は、聞かれたからには丁寧に説明しようとした。悪意はどこにもない。むしろ律儀すぎたと言っていい。

やらかしの一部始終

石の話から、星の話へ

彼はダイヤモンドの説明を始めた。どうやってできるのか、どこから来るのか。炭素が地中の深いところで高い圧力と温度にさらされて——というあたりまでは、ただの気の利いた豆知識である。ところが彼の頭は、本人いわく「いつものように」脱線を始めた。ダイヤモンドをつくる話は、いつのまにか星をつくる話になり、星をつくる話は星の種類の話になり、そして星が「死ぬ」ときに何が起きるのかという話になった。ここまで来たら、行き先はひとつしかない。私たちの太陽は、最後にどうなるのか。

彼女の顔が曇る。ここでやめればよかった

太陽もいずれは膨らんで、赤色巨星と呼ばれる状態になる。そのとき地球はどうなるのか。彼が話し続けるあいだ、画面の向こうの表情は少しずつ変わっていった。彼女は、太陽系から生き物がいなくなる未来のことを、本気で心配し始めたのである。ここが二度目の分岐点だった。相手の顔が曇ったら話題を変える、というのはたいていの人ができる。投稿者はそうしなかった。正確に言えば、彼は彼女を安心させようとして、そのためにまた脱線したのだ。

「大丈夫、その前に銀河ごと合体してるから」

彼が持ち出した慰めはこうだった。太陽に地球が飲み込まれる心配はしなくていい。なぜなら、そのころにはお隣のアンドロメダ銀河が天の川銀河と合体していて、どのみちここに私たちの居場所は残っていないのだから——。慰めになっていない。規模を大きくすれば怖くなくなるだろう、という発想がまず間違っている。しかもこの「居場所が残らない」という部分は、後で掲示板の住民たちにこぞって指摘されるとおり、天文学的にも正しくない。銀河どうしが重なり合っても、星と星のあいだの距離は桁違いに広いため、太陽系がそれで直接どうにかなる見込みはほとんどない、というのが一般的な見方だからだ。彼は良かれと思って、しかも間違った知識で、彼女をより深いところへ突き落としたことになる。

五分間

彼女の中で、話はもう太陽や銀河を超えていた。人類はいずれ完全にいなくなるのではないか。だとしたら、いま自分がこうして生きていることに何の意味があるのか。そこまで行き着いたところで、彼女は動けなくなった。体が固まり、息がうまく吸えなくなり、そのまま五分ほど泣き続けた。パニック発作である。しかも二人が向き合っているのは同じ部屋ではなく、画面越しだった。手を握ることも、背中をさすることもできない。彼にできたのは、小さな画面の中の彼女に向かって声をかけ続けることだけだった。

その後

投稿者はいま、彼女を落ち着かせようとしながら、同時にこの顛末を掲示板に書き込んでいる。この「同時に」の部分については、後でさんざん突っ込まれることになる。新しく持ち出した慰めは「人類はまだ生まれたばかりの若い種で、これからどうするかを考える時間はたっぷりある」というもの。それなりに筋は通っているが、本人も「これが効いているのかどうか、正直よくわからない」と書き添えている。最後に彼が付けた要約の一文が、この夜のすべてを物語っている。「太陽はいずれ燃え尽きて地球を飲み込み、生命は消える、と彼女に話した結果、寝る前にパニック発作を起こして泣かせてしまった」。誰も嘘をついていないし、誰も意地悪をしていない。聞かれたから答えて、心配させたから慰めようとして、慰めるためにもっと大きい話を持ち出した。その素直な積み重ねだけで、恋人の夜は完全に潰れたのだった。

海外の反応

1. やらかし名無しさん
とりあえず、宇宙の熱的死の話だけは絶対にしないでやってくれ。あれは太陽が膨らむとかいう話とは比べものにならないくらい容赦がない。今夜のところは、明日の朝ごはんの話でもしておくのが正解だと思う。

2. やらかし名無しさん(>>1への返信)
あれは本当にきつい。結局どうやっても最後には何ひとつ残らない、という話なので、逃げ道が用意されていない。個人的には、宇宙がまた縮んでいって、そこからもう一度始まる、みたいな筋書きであってほしかった。

3. やらかし名無しさん(>>1への返信)
気候変動の話もやめておいたほうがいい。というか不思議なもので、何十億年も先の宇宙の終わりには本気で震えるのに、今世紀のうちに起きそうな話は平然と受け流している人のほうが、実際には多い気がする。

4. やらかし名無しさん
一点だけ訂正させてほしい。アンドロメダ銀河と天の川銀河が一つになったところで、太陽系にはまず何も起きない。銀河というのは中身のほとんどが空っぽの空間で、星と星の間隔があまりにも広いので、恒星どうしがぶつかる見込みはほぼないというのが今の一般的な理解だ。彼氏が最後に足した情報は、慰めとして下手なだけでなく、内容としても間違っている。

5. やらかし名無しさん(>>4への返信)
つまり……可能性はゼロではない、ということですね。そう聞こえた瞬間に、また別の誰かが眠れなくなるので、その言い方はやめてあげてほしい。

6. やらかし名無しさん(>>4への返信)
彼女が動揺したのは、宇宙の話が怖かったからじゃなくて、恋人が自信満々に間違ったことを言い出したからかもしれない。そう考えると急に別の話になってくる。

7. やらかし名無しさん
この人の慰め方が完全に裏目なのが面白い。「そんなに遠い先の話じゃないから安心して」ならまだ分かるが、「その前にもっと大きいことが起きるから、どのみち関係ないよ」は慰めじゃなくて上書きだ。怖いものを消したいときに、より大きい怖いものを持ってきてはいけない。

8. やらかし名無しさん
笑い話として消費されているけれど、パニック発作は本当に苦しい。息が吸えなくなって体が固まるあの感覚は、経験した人でないと想像しづらいと思う。それに「いつか全部なくなる」という不安は、程度の差こそあれ誰の中にもあるものだ。彼女が特別に弱いわけではまったくない。

9. やらかし名無しさん(>>8への返信)
自分も、初めて宇宙の終わりの話を知った夜は眠れなくなった。子どもの頃の話だけれど、大人になった今でも、夜中にふと思い出して同じところへ落ちることがある。慣れるものではない。

10. やらかし名無しさん(>>8への返信)
うちの妻も死の話題が苦手で、老いのことを口にしただけで崩れてしまう。だからその手の話は自然と避けるようになった。何を言っても安心させられないと分かっているので、こちらも黙るしかない。

11. やらかし名無しさん
むしろ逆で、終わりがあるから今日の飯がうまいんだと思っている。無限に続くと言われたほうが、自分は落ち着かない。永遠に終わらない夏休みを想像してみると、たいていの人は途中で怖くなるはずだ。

12. やらかし名無しさん(>>11への返信)
それで納得できる人は本当にうらやましい。頭ではそのとおりだと分かっていても、心のほうが追いつかない夜がある。理屈で片づく話なら、そもそも誰も泣いていない。

13. やらかし名無しさん
彼女をなだめるより先に掲示板に書き込んでいる時点で、やらかしはもう一つ増えている。「ねえ、ちょっと抱きしめて」「しっ、いま書いてるところだから」という図が浮かんでしまって、そっちのほうが心配になった。

14. やらかし名無しさん(>>13への返信)
そもそもビデオ通話をつなぎながら別の場所で見知らぬ相手と長文をやり取りしていたわけで、やらかしは宇宙の話より前から静かに始まっていたと思う。画面をちゃんと見ていれば、彼女の顔が曇った時点で気づけたはずだ。

15. やらかし名無しさん
六、七歳のころ、幼いきょうだいに「いつかみんな死ぬんだよ」と教えてしまったことがある。相手は二日間泣き続けて、なぜか叱られたのは自分だった。あのときの理不尽さを、この投稿を読んで久しぶりに思い出した。

16. やらかし名無しさん(>>15への返信)
泣いたのは向こうなのに叱られたのはあなた、という部分だけで妙に納得してしまった。だいたいこういうものは、事実を言った側が悪いことになる。

17. やらかし名無しさん
テレビで宇宙を語って人気を集めた天文学者カール・セーガンに、「リンゴパイを一から作りたいなら、まず宇宙を作らなければならない」という有名な言葉がある。あれを日常会話でやると、こういうことになるわけだ。パイの作り方を聞いただけの人が、気づいたら宇宙の始まりまで連れていかれている。

18. やらかし名無しさん
そもそもの発端であるダイヤモンドの話にも触れておきたい。ダイヤモンドの値段は、みんながその値段を払う気があるから成立している。実用的な価値とは関係がなく、高くて光るから欲しがられるのであって、そういう意味では「高いのが理由で高い」商品だ。ありふれているから無価値、という話ではない。

19. やらかし名無しさん
何十億年も先のことが、なぜ今この瞬間に怖いのかと不思議がる人がいるけれど、人間の頭は「いつか必ず終わる」と「もうすぐ終わる」をあまり区別してくれない。終わるという一点が引っかかったら、あとは距離の問題ではなくなる。彼女の反応はごく普通だと思う。

20. やらかし名無しさん
結論としては、心配している人に情報を足してはいけない。この場面で必要だったのは事実でも数字でもなくて、「うん、大丈夫だよ」の一言だけだった。知識が多いことと、人を安心させられることは、まったく別の技能なのだと思い知らされる話だ。

まとめ

ダイヤモンドの雑学から始まって、星の一生、太陽の最期、隣の銀河との合体まで一気に走り、恋人を五分間泣かせてしまった夜の話である。海外の反応は「アンドロメダの部分はそもそも間違っている」という訂正、「なだめる前に書き込むな」という呆れ、そして「その不安は誰にでもある」という擁護に分かれた。共通していたのは、彼に足りなかったのが知識ではなく引き際だったという見立てである。相手が不安そうな顔をしたとき、話を大きくして安心させようとするのは、たいてい逆効果になる。あなたなら、どこで話を止めますか。

元ソース: やらかした——恋人に太陽系の最期を語って、パニック発作を起こさせてしまった

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