「野生動物? いや、平気」——友人がそう言った直後、角を曲がった先に現れたのは「クマ出没注意」の大きな看板だった。アメリカの山奥のキャンプ場。友人たちが星空の下でぐっすり眠るなか、心配性の投稿者はひとりテントの中で身を固くしていた。やがて闇の向こうから、低い唸り声が響いてくる。グオオオオオ——。声は夜通しやまず、投稿者はほとんど眠れないまま朝を迎えた。そして帰りの車がキャンプ場を出ようとしたそのとき、あの声がもう一度聞こえてくる。
※注:この話の舞台は、アメリカのコロラド州と、その南隣のニューメキシコ州。どちらも標高の高い山地が広がり、クマやクーガー(日本ではピューマの名で知られる大型のネコ科動物)といった野生動物がすむ地域もある。
何をやらかした?
📌 数年前、都会育ちで大の心配性の投稿者は、アウトドア慣れした友人たちと車で音楽イベントに出かけた帰り、ニューメキシコ州の山奥でキャンプをした。クマなどの出没を警告する看板に不安を募らせながらテントで横になると、夜中に遠くから低い唸り声が聞こえてくる。クマだと思い込んだ投稿者は一晩中おびえ続け、眠れたのは合計20分ほど。ところが翌朝、キャンプ場を出る車の中で、その声の正体がクマではなかったと判明する。友人たちには、今でもこの一件でからかわれ続けている。
事の発端
野生児ぞろいの仲間と、ひとりだけの都会っ子
これは数年前の出来事である。
本人いわく、投稿者はかなりの心配性。いまは薬を飲んでいるが、この話はそれより前のことだという。そしてもうひとつ、欠かせない前提がある。投稿者の友人グループは、野生に還る一歩手前のような山男ぞろいで、投稿者だけがインドア派の都会っ子だった。なかでもいちばんの野生児が、幼なじみのエディ(名前はすべて仮名)である。
音楽イベント帰りの、ボロボロの車旅
当時、一行は20代前半から半ば。コロラド州のレッドロックス(巨大な赤い岩に挟まれた野外円形劇場で、コンサート会場として有名)で開かれる音楽イベントを見るために、みんなで車の長旅に出た。物語の舞台は、その帰り道。ニューメキシコ州の、どこかの人里離れた山奥である。
この頃には、全員が日焼けと脱水と空腹で、若者の形をかろうじて保った干物のようになっていた。とりわけ投稿者は調子が悪く、ひどい高山病にまで苦しんでいた。おまけに直前には、それまで見たこともないほど巨大な嵐の雲の中を、車で突っ切ってきたばかり。ここまで長々と説明した投稿者いわく、要するに”ほんのちょっとだけ”平常心を失っていた、ということらしい。
やらかしの一部始終
「平気」の直後に現れた看板
その夜に泊まるキャンプ場に着いたところで、投稿者は聞いてみた。「このへん、野生動物とか気にしたほうがいい?」
「いや、平気」とエディは請け合った。
ところが、笑ってしまうほど絶妙なタイミングで車が角を曲がると、目の前に大きな看板が立っていた。「危険:クーガー出没地帯。クマ出没地帯。ヘビ出没地帯。マジで死ぬ地帯」。
……最後の一行は書いてなかったかもしれない、と投稿者は付け加えている。それはさておき、エディは「車がすぐ近くにあるから、何かあっても大丈夫」と投稿者をなだめた。野営の準備を終えると、友人たちは星空の下でそのまま寝ると言い出す。投稿者はその勇気に心から拍手を送り、ひとりテントにもぐり込んだ。
闇の向こうから「グオオオオ」
くたくたに疲れているのに、何かに食べられるんじゃないかという不安で落ち着かない。それでもようやく、まぶたが重くなってきた——そのときだった。
「グオオオオオオオ……」
投稿者は凍りついた。全身がこわばり、口の中に10円玉をなめたような金属っぽい味が広がる。スティーブ・アーウィンのような動物の達人ではないけれど、投稿者の耳にはそれがクマの唸り声に聞こえた。すぐ近くというわけではない。だが投稿者にとっては、少しでも近ければもう近すぎる。
※ スティーブ・アーウィン:オーストラリアの動物番組『クロコダイル・ハンター』で世界的な人気を集めた野生動物の専門家。ワニやヘビに体当たりで迫る姿で知られた。
投稿者は友人たちを起こした。みんなでしばらく耳を澄ませてみたが、何も起こらない。友人たちはそのまま寝直してしまった。投稿者も眠ろうとしたが、また聞こえる。慌ててもう一度起こそうとしたものの、友人たちは今度こそ完全に眠りこけていて、起きてくれなかった。
眠れたのは、ひと晩で合計20分
結局その夜、投稿者が眠れたのは合計しても20分ほど。うとうとしかけるたびに、あの低い唸り声が聞こえてくる。そのたびに全身が固まり、夜の闇へ全速力で逃げ出したいという本能を、必死で押さえ込まなければならなかった。
帰りの車で、もう一度あの声が
翌朝、一行は車に乗り込んだ。友人たちはぐっすり眠れたらしく、元気いっぱいで上機嫌。投稿者はというと、まったくそうではなかった。
いよいよ帰り道の最後の区間へ。車がキャンプ場を出ようとしたそのとき、投稿者の耳に、またあの声が届いた。
「グオオオオオ……」
「グオオォォォォ……」
「……モオオオオオオオ」
その後
声の正体は、牛の群れだった。800メートルほど離れた場所から、しかも不安で張りつめきった耳で聞くと、牛の鳴き声はかなりクマっぽく聞こえるものらしい。
その瞬間、車内の友人たちは大爆笑。投稿者はそれ以来、何年たってもこの一件でからかわれ続けているという。
投稿者自身による要約は「キャンプで一晩中クマの声が聞こえた気がして、一睡もできなかった。正体は牛だった」。それでも最後はこう締めくくっている。「まあ、旅行そのものは最高に楽しかったけどね」。
海外の反応
1. やらかし名無しさん
うちは森の中に住んでたから、ヘラジカやクマには普段から気をつけてた。ある晩、泊まりに来た友達と2人で、庭のトランポリンの上で毛布にくるまって寝ることにしたんだ。そしたら遠くから、森の中をバキバキ踏み荒らして進んでくる音と、聞いたことのない動物の声がする。しばらく様子を見てたら、音はどんどん大きく、近くなってきた。クマはのそのそ歩くから、せいぜい枝を踏んだパキッて音が聞こえるくらいのはず。なのにこれは、クマにしてはうるさすぎるし荒々しすぎる。結局2人とも怖くなって家の中に逃げ込んだ。正体は、脱走したお隣の牛。牛を飼ってる家なんてほとんどない土地だったから、逃げ出すような牛がいること自体知らなかったよ。オチはもうひとつあって、その牛たちにうちの畑をほぼ丸ごと食べられた。1年の大半をまかなってた、広さ約4000平方メートルの畑。母はしばらく立ち直れなかった。その年だけは、畑に頼れなかったんだ。
2. やらかし名無しさん(>>1への返信)
クマじゃなくてよかった、で終わらないのがつらすぎる。1年の大半の食べ物をまかなってた畑をほぼ丸ごと食べられるなんて、ある意味クマよりよっぽど手ごわい侵入者だよ。お母さんの気持ちを思うと笑えない。
3. やらかし名無しさん(>>1への返信)
子どもの頃、キャンプ場のピクニックテーブルの上で寝袋にくるまって寝てたら、茂みの中を大きな動物がドスドス歩き回る音がしたことがある。こんな音を立てるなんていったい何の動物だ、と思ってたら、今度は自分の頭のすぐ下あたりでガサゴソ音がする。小さな懐中電灯で地面を照らしてみたら、スカンクがこっちを見上げてた。「どうぞ、続けて」と声をかけて、そのまま寝直したよ。その夜学んだのは、スカンクは自分がどれだけうるさいかなんて気にしちゃいないってこと。
4. やらかし名無しさん
つまり牛のせいで、何の意味もなく人生最悪の夜を過ごしたってことか。まあ、少なくとも牛がどんな声で鳴くのかは勉強になったね。
5. やらかし名無しさん(>>4への返信)
投稿者です。はい、おかげさまで身をもって勉強しました。牛はクマそっくりの声で鳴く、ってね!
6. やらかし名無しさん
野生動物は大丈夫かって聞かれて、エディが「いや、平気」って答えた直後に角を曲がったら警告の看板。コントだったら完璧な間だよ。エディの「平気」の信用が、この時点できれいにゼロになってる。
7. やらかし名無しさん(>>6への返信)
そのあとで「最後の一行は書いてなかったかもしれない」ってわざわざ訂正してるのが律儀で笑った。実際には書いてなくても、あの夜の投稿者の目にははっきり読めてたんだと思う。
8. やらかし名無しさん
「口の中に10円玉をなめたような味が広がった」って表現が生々しい。自分も本気で怖い目にあったとき、まったく同じ味がした。心配性の人間にとっては、テントの布1枚なんてあってないようなものなんだよね。一晩中耳を澄ませてた気持ち、痛いほどわかる。
9. やらかし名無しさん
冷静に考えると、いちばん無防備だったのはテントの中の投稿者じゃなくて、クーガーやクマに注意しろって看板が立ってる場所で、テントにも入らず星空の下で熟睡してた友人たちのほうなんだよな。一回起こされてもすぐ寝直せるその神経、ちょっと分けてほしい。
10. やらかし名無しさん
うちの両親が、クマの出る地域にキャンピングカーで出かけたときの話。夜中に父がトイレに起きたら、外で何か物音がした気がしたらしい。用を足したあと、ベッドの横の窓から外をのぞいてみることにした。気持ちのいい夜だったから、窓は開けっぱなし。ブラインドを上げたら、黒いクマと真正面から目が合ったんだって。父いわく「右手で窓をスッと閉めながら、左手では拳銃に手を伸ばしてた。ブラインドを下ろして、止まってた心臓がまた動き出したところで、ベッドに戻ったよ」。
11. やらかし名無しさん
自分はアウトドア派の子どもだったから、「本当に危ないくらいクマが近くにいたら、たぶん先に臭いで気づく。あいつらはとにかく臭いから」って教わってきた。
自分の場合の似た体験は、子どもの頃に初めて発情期のクーガーの鳴き声を聞いたとき。おじが持ってた広い山の中で、しかも真っ暗。あのときの恐怖は言葉にできない。子どもたちは全員「女の人が死にかけてる!」と信じ込んで、大人のところへ走った。想像してみてほしい。8〜11歳の子ども4、5人がエアガンを握りしめて、「かわいそうな女の人を助けに行くから一緒に来て」とおじに必死で頼み込んでる。その横で、おじと10代後半のいとこ2人は、息もできないくらい笑い転げてる。みんなは焚き火を囲んでて、犬たちは牛の様子を見に走り回ってた。何の声だったのか教えてくれたのは、大人たちがようやく笑い終わってからだったよ。
12. やらかし名無しさん(>>11への返信)
エアガンを握りしめた小学生くらいの子たちが、見知らぬ女の人を助けに行こうと大人を説得してる絵面、笑うけどちょっと胸が熱くなる。怖くて仕方ないのに助けに行こうとしてるの、立派すぎるよ。
13. やらかし名無しさん
子どもの頃、外にプテラノドンがいると本気で思って、夜中にトイレに閉じこもって震えてたことがある。どれくらいそこにいたのかは覚えてないけど、最終的に親に見つかった。正体はキツネ。庭にキツネが1匹いただけだった。
14. やらかし名無しさん(>>13への返信)
わかる、夜の動物の声って正体を知らないと本当に怖い。自分はシカでやられた。初めて山の中で夜にシカの鳴き声を聞いたとき、誰かが悲鳴を上げてると思い込んで、懐中電灯を握りしめたまま朝までテントから一歩も出られなかった。
15. やらかし名無しさん
キャンプ中にクマが来たことがある。食べ物は(クマ対策で)全部木の上に吊るしてあったんだけど、1つだけ下に置きっぱなしにしてた、おやつ入りの小さな容器を持っていかれた。テントから少し離れたところまで運んで、中身をきれいに平らげてたよ。でも、唸り声なんて一度も上げてなかったと思う。
16. やらかし名無しさん(>>15への返信)
前にキャンプ場の管理人さんに聞いた話だと、クマはたいてい静かに近づいてくるから、唸り声で自分の居場所を知らせてくれることのほうが珍しいんだって。だから一晩中グオオって鳴いてた時点で、むしろクマじゃない可能性のほうが高かったのかもね。もちろん、夜中のテントの中でそんな冷静な判断ができるわけないけど。
17. やらかし名無しさん
実家で牛を飼ってるけど、夜の牛の声は本当に怖いよ。とくに子牛を母牛から離した日の夜は、母牛が一晩中、地の底から響くような声で鳴き続ける。家族はもう慣れっこだけど、泊まりに来た友達は毎回「外に何かいる」って青い顔をしてた。800メートル先からでもクマに聞こえたっていうの、まったく不思議じゃない。
18. やらかし名無しさん(>>17への返信)
牛つながりで。森の中の放牧地で調査の仕事をしてたとき、昔の金の採掘で掘られた水路沿いの、ものすごく急な土手を越えなきゃいけなかった。勢いをつけて一気に駆け上がり、てっぺんからひょいと顔を出したら、向こう側の死角にいた牛と鉢合わせ。お互いビクッと飛び上がって、そのあとしばらくにらみ合った。牛があんなに高く跳べるなんて知らなかったよ。番号札167番のあいつのことは、今でも忘れられない。
19. やらかし名無しさん
笑い話になってるけど、投稿者の警戒は間違ってなかったと思う。「クマ出没注意」の看板がある場所で、暗闇から正体不明の唸り声が聞こえたら、怖がらないほうがおかしい。今回はたまたま牛だっただけで、本物のクマだった可能性だってゼロじゃなかったんだから。
20. やらかし名無しさん(>>19への返信)
怖がるのは当然だと思う。ただ、アウトドア慣れした友人たちが一度聞いただけであっさり寝直したのは、声の感じから無意識に「これは危ないやつじゃない」って判断してたからなんじゃないかな。結果的に、勘が当たってたのは友人たちのほうだったわけだし。
21. やらかし名無しさん
「グオオオオ」「グオオォォォ」「モオオオオ」の三段オチで、声を出して笑った。話の運び方がうますぎる。最初から最後まで存分に楽しませてもらったよ、ありがとう。
22. やらかし名無しさん(>>21への返信)
投稿者です。ありがとう! 大学で英文学を専攻したんだから、こういうところで役立てないとね。
まとめ
「クマ出没注意」の看板が立つ山奥で、クマの唸り声だと思った声に一晩中おびえていた投稿者。その正体は、800メートル先の牛の群れだった。コメント欄には、夜の物音や鳴き声の正体を取り違えた体験談が次々と集まり、「看板のある場所で警戒するのは当然」とかばう声も。暗闇で聞く正体不明の音は、誰にとっても怖いもの。朝に笑い話にできたなら、それも旅のいい思い出だ。

コメント