「ケンタッキーなら、その3分の1で済むよ」。クリスマス明けの日曜の夜、イギリスのある家庭で交わされたのは、どこの家でも週に一度はあるような、なんでもない会話だった。高いほうをやめて、安いほうにした。ただそれだけの判断だったはずである。ところがその晩、投稿者は車を1台まるごと失い、10万円を超える出費を抱え、そして肝心のチキンは駐車場でつまんだ数口が最初で最後になった。
※注:イギリスには持ち帰り専門の外食店(テイクアウェイ)が街ごとにいくつもあり、週末の夜に家族分をまとめて頼むことが多い。トルコ料理店はその定番のひとつで、ケバブなどを扱う持ち帰りの店を指す。文中の日本円は1ポンド=およそ190円で計算した、おおよその目安である。
何をやらかした?
📌 イギリス在住の投稿者が、クリスマス明けの日曜の夜、夕食の持ち帰りを頼もうとした。パートナーが希望したトルコ料理店の注文が合計70ポンド(およそ1万3000円)になったため、「ケンタッキーならその3分の1で済む」と提案。自分で買いに出た帰り道、対向車が追い越しのために自分の車線に入ってきて正面から衝突した。投稿者に大きな怪我はなかったが、車は全損。ここまでにかかった費用は560ポンド(およそ10万6000円)で、しかも買ったチキンはほとんど食べられずじまいだった。
事の発端
クリスマスの片づけが、ようやく終わった日曜の夜
投稿者はイギリスに住んでいる。パートナーの両親がクリスマスを過ごしに来ていて、その日曜の夕方にようやく帰っていったところだった。この時期は、好むと好まざるとにかかわらず料理が続く。何日も台所に立ち通しだった二人がその晩に出した結論は、単純である。今日はもう作らない。持ち帰りを頼もう、と。
合計70ポンドの注文画面を見て、つい口が出た
パートナーが試してみたいと言ったのは、近所のトルコ料理店だった。注文画面に食べたいものを入れていく。合計は70ポンド、日本円にしておよそ1万3000円になった。イギリスで家族分の持ち帰りをまとめて頼めば、この金額自体はさほど珍しくはない。それでも、画面のその数字を見た投稿者は言った。自分はケンタッキーの気分だし、そっちなら3分の1で済むよ、と。パートナーも同意した。この時点では、誰から見ても何の問題もない、ごく普通の節約の判断だった。投稿者本人が、その直後にこう書き添えている。「その考えが、どれだけ間違っていたことか」
やらかしの一部始終
駐車場で数口だけつまんで、車を出した
配達は頼まず、自分で車を出して買いに行った。店で商品を受け取ったあと、駐車場に停めたまま、バーベキュー味のチキンを少しだけつまんだ。それから家に向かって走り出した。この数口が、その日に食べられたチキンのすべてになる。
「まさか、こっちに突っ込んでは来ないだろう」
店を出て5分ほど走ったあたりだった。対向車線を走ってきた1台が、前の車を追い越すために投稿者の車線に入ってきた。まっすぐ、こちらへ向かって。そのときの頭の中を、投稿者はこう書いている。「まさかこのまま突っ込んでは来ないだろう……来ないだろう……来……あ、まずい」。そのあとに来たのが、何かがつぶれる音と、体ごと回される感覚と、しばらく何も考えられない時間だった。
車から降りようとしたが、運転席のドアが開かなかった。助手席側は開いたので、そちらから外へ出て、自分の体を上から下まで叩いて確かめ、それから車の状態を見た。幸い、大きな怪我はなかった。車のほうはそうもいかない。前が半分ちぎれかけ、窓は割れ、タイヤが片方外れかけている。本人いわく「この車を見たら、自分の足で歩いて帰ったことのほうに驚かれる」ありさまで、修理という選択肢は最初から存在しなかった。のちに投稿者が書いたところでは、車の前半分と燃料タンクの中身が路上一面に散らばっていたという。
その後
投稿者はまず、ぶつかってきた側の運転手に無事かどうか声をかけた。相手は助手席のほうへ身を乗り出しながら「大丈夫だ」と答えたので、投稿者はいったんその場を離れた。ところが数分後、周囲の人たちが「あいつは銃を持っている」と叫び始めた。イギリスで銃が出てくることは、まずない。投稿者も半信半疑だったが、先に言葉を交わしていた人から、相手の運転手が現場を去ろうとしたので止めに入ったところ銃で脅された、と聞かされた。投稿者自身は銃を見ていない。
追い越されかけていた車の運転手が、投稿者に「乗って」と声をかけてくれた。ただ、そのときにはもう遠くにパトカーの青い回転灯が見えていたので、投稿者はその場に留まることにした。結局、同じ説明を何度も繰り返しながら4時間ほど現場にいることになる。相手の運転手は最終的に警察に発見され、警察はその運転手に発砲した。この一件はイギリスで全国ニュースとして報じられ、投稿者はあとになって、自分の事故がその報道の一部として扱われているのを知ることになった。ニュースに寄せられたコメント欄には推測がいくつも並んでいて、なかには「警察に来てもらうために投稿者が銃があると言い出したのだろう」と書く人までいたという。実際には、車の残骸が道路一面に広がっていた時点で、警察は最初から来ることになっていた。
現場に来た救急隊は投稿者を診て、いま心配な点は見当たらない、ただし24時間は誰かがそばにいたほうがいい、気になることが出たら病院へ、と伝えた。投稿者が病院へ行かなかった理由は三つある。車が無くなった状態で、家から車で45分かかる病院に取り残されるのが困ること。家ではパートナーが生後11か月と5歳の子どもを一人で見ていること。そして、救急外来で何時間も待った末に「とくに問題なし」と言われる結末が、ほぼ確実に見えていたことである。
そして、請求書のほうが順番にやってくる。まず代わりの車である。イギリスでは車が全損になった場合、保険会社が代車を出さないのが近年は一般的で、そもそも直す車が存在しない以上、「修理中の代車」という理屈が立たない。投稿者の家では、もう1台あった車が車検にあたる検査に見事に落ちて直す価値もないと判断されていたため、壊れたこの1台が家の唯一の車だった。10日間レンタカーを借りて400ポンド、およそ7万6000円。事故のとき子どもたちは家で寝ていたが、車に積んでいたチャイルドシートは使えなくなったので買い直して150ポンド、およそ2万8000円。それに腕時計のベルトが駄目になって10ポンド、2000円弱。ここまでで合計560ポンド、日本円にしておよそ10万6000円である。
肝心のケンタッキーは、結局まともに食べられないまま終わった。投稿の最後の一行はこうである。「あの70ポンドのトルコ料理、今となってはずいぶん安く思える」
海外の反応
1. やらかし名無しさん
70ポンドのトルコ料理って、いったい何をどれだけ頼んだんだ。人数分の前菜から焼き物まで全部乗せたとしても、まだ高い気がする。本場から空輸でもしてもらう予定だったのか。
2. やらかし名無しさん(>>1への返信)
トルコ人だけど、こっちで同じものを頼んでもその金額にはならない。イギリスの持ち帰りの値段は本当にどうなっているんだ。
3. やらかし名無しさん
保険で代わりの車は出ないのか。こちらだと、事故で自分の車が修理に入っている間のレンタカー代は保険会社が持ってくれるのが普通なんだけど。
4. やらかし名無しさん(>>3への返信)
それは「修理中」の話で、全損だと事情が変わる。直す車がそもそも存在しないので、修理が終わるまでの代車という考え方自体が成立しない。イギリスの保険は、ここ数年で全損時の代車を外しているものが多い。
5. やらかし名無しさん
1万3000円を惜しんだ結果、車1台と10万円が消えた。差額の計算がひどすぎる。あの70ポンドを払っていれば、家に座ったまま受け取って、食べて、そのまま寝ていたはずなのに。
6. やらかし名無しさん(>>5への返信)
しかも実際に食べられたのは、駐車場でつまんだ数口だけなんだよね。1口あたりいくらになるのか、怖くて計算したくない。
7. やらかし名無しさん
「まさかこっちに突っ込んでは来ないだろう」——ここが本当の失敗だったと思う。運転しているときは、対向車が考えうるかぎり最悪の判断をしてくる前提でハンドルを握っておいたほうがいい。
8. やらかし名無しさん(>>7への返信)
とはいえ実際は5秒あるかどうかの世界で、その間に正解を出せる人はほとんどいない。歩道側へ逃げようとして横から食らっていたら、もっとひどいことになっていた可能性もある。
9. やらかし名無しさん
投稿のタイトルを見た時点では、ケンタッキーの広告か何かに出ることになった話だと思っていた。まさかこういう方向で全国ニュースになるとは想像もしなかった。
10. やらかし名無しさん(>>9への返信)
「指までなめたくなるうまさ」というあの売り文句が、ここまで重い意味を背負う日が来るとは誰も思っていなかった。
11. やらかし名無しさん
駐車場でチキンをつまんでいなければ、そもそもその時間にその場所を通っていなかったのでは、とつい考えてしまった。数分の差なんだよな。
12. やらかし名無しさん(>>11への返信)
その理屈でいくと、世の中の事故の半分はコンビニで立ち読みしていた人のせいになる。数分の遅れが何を引き寄せるかなんて誰にも分からないんだから、そこは考えないほうがいい。
13. やらかし名無しさん
自分もごちそうのつもりでシーフードの店に寄った帰りに追突されたことがある。2週間前に買ったばかりの車が全損になった。ただ料理のほうは無事だったので、事故の連絡を入れながら食べた。
14. やらかし名無しさん(>>13への返信)
その状況で食べられるのは相当に強い。自分なら手が震えて容器を開けることすらできないと思う。冷めていく料理を前に、ただ突っ立っている姿が目に浮かぶ。
15. やらかし名無しさん
パートナーは今後、食事の店を提案されるたびにこの日のことを持ち出してくると思う。一生ものの持ちネタを自分から渡してしまった。
16. やらかし名無しさん(>>15への返信)
「今日は安いほうにしておこうか」が、この家では二度と気軽に口に出せない一言になってしまった。値段の話が出るたびに、一瞬だけ空気が止まるやつだ。
17. やらかし名無しさん
トルコ料理のドネル(あの回転する肉の塊を削ぐケバブ)を断ったせいで、危うくドナーになりかけた、という話でいいのだろうか。英語でも音がほとんど同じなので、言われて妙に納得してしまった。
18. やらかし名無しさん
カーネル・サンダースのせいにするのは、さすがに気の毒だと思う。どう考えても、対向車線からはみ出してきた側の運転がまずかったのであって、責任の大半はそちらにあるはずだ。
19. やらかし名無しさん
10万6000円で済んだのなら、人生で一番安い出費だったのかもしれない。車があそこまでの状態になって、それでも自分の足で歩いて帰れたわけだから、そこはもう勝ちでいいと思う。
20. やらかし名無しさん
無事で本当によかった。チキンの話でずっと笑わせてくるけれど、中身は普通に大きな事故だし、小さい子どもが二人いる家から車が消えた話でもある。早く落ち着くといい。
まとめ
夕食を1万3000円のトルコ料理から、その3分の1で済むケンタッキーに変えた。それだけの判断が、車1台と10万円を超える出費、そして4時間の現場対応に化けてしまった話である。コメント欄は「70ポンドのトルコ料理は何を頼んだんだ」という値段への突っ込みと、「全損だと代車が出ないのか」という保険の話と、「駐車場で数口つまんだせいで、というのは考えないほうがいい」という慰めに、きれいに三分割されていた。節約が失敗するときは、たいてい節約とはまったく関係のないところから失敗する。買ってきたチキンが最後まで食べられなかったことだけは、全員が等しく気の毒がっていた。

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