「ようこそ、クソ野郎」。ある日、社員750人が会社から届いた必修の研修リンクを開くと、1ページ目でそう出迎えられた。教材を作った本人に悪意は微塵もない。人員削減のあおりで一人4人分の仕事を抱え、何十回と修正を繰り返していた側である。ただ、動作確認のときに名前欄へ打ち込んだ一言を、消し忘れただけだった。
※注:この話に出てくる「研修教材」は、社員が会社のパソコンで受ける学習用の教材のこと。専用のシステムで全社員に配信され、誰が受け終えたかも記録される。一度公開した教材はファイル単位で削除できず、同じ場所に新しいものを上書きして差し替える仕組みになっていることが多い。
何をやらかした?
📌 投稿者は人員削減で一人4人分の仕事を抱えるようになり、新たに社内研修の教材づくりも担当することになった。教材は1ページ目で受講者に名前を入力させ、以降はその名前で呼びかける仕組み。延々と続く動作確認に飽きて、投稿者は名前欄に冗談で「クソ野郎」と打ち込み、画面に出た「ようこそ、クソ野郎」を同僚に見せて笑い合った。そして教材を完成させ、全社員750人に「必修です」と書き添えてリンクをメールで送った。ところがこの教材、動作確認中に名前欄へ入れた文字を消さないかぎり、そのまま初期値として保存される仕様だった。750人全員が、開いた瞬間に「ようこそ、クソ野郎」と出迎えられたのである。
事の発端
人が減って、気づけば一人で4人分
投稿者の勤め先では、少し前に大きな人員削減があった。減ったのは人だけで、仕事はそのまま残る。結果として投稿者は、以前なら4人で分けていた業務をたった一人で回すことになった。本人の言葉を借りれば「ちょっと消耗している」状態である。そんななかで新しく引き受けた仕事のひとつが、社内研修の教材づくりだった。専門でやってきた分野ではない。それでも人がいない以上、誰かがやるしかない。日中は本来の業務で埋まっているから、教材の作業は必然的にすき間の時間と夜に押し込まれていく。
名前を入れると、その名前で呼びかけてくれる教材
この会社の研修教材には共通の作りがあった。1ページ目で受講者に自分の名前を入力させ、以降の画面では「◯◯さん、次はこの項目です」といった具合に、入力された名前で呼びかけてくれるのだ。受講者に「自分に向けて話しかけられている」と感じさせるための、よくある工夫である。作る側からすると、この名前欄は動作確認のたびに何かしら文字を入れなければ先へ進めない関門でもあった。投稿者は文章を直しては最初から通し、表示を直してはまた最初から通す、という作業を延々と繰り返していた。何十回目かの通し確認に差しかかるころには、正直、飽きていた。
やらかしの一部始終
暇つぶしに入れた一言が、思いのほか効いた
そこで投稿者は、自分を少しでも楽しませるために、名前欄へ本名ではなく罵り言葉を打ち込んだ。次のページに進むと、教材は律儀にこう表示した。「ようこそ、クソ野郎」。これが思いのほか効いた。投稿者は画面を同僚に見せ、「この教材、私が何度も直すもんだから、とうとう怒って罵ってきましたよ」と言った。同僚も笑った。疲れた深夜のオフィスにありがちな、ごく小さな笑いである。ここまでは、誰の目にも触れない身内の冗談でしかなかった。
完成、公開、そして750人へのメール
やがて修正はすべて終わり、投稿者は教材を完成させた。社内のシステムに公開設定で載せ、全社員750人宛てにリンクを貼ったメールを送る。文面には「この研修は必修です」とはっきり書いた。ここで一区切り、ようやく肩の荷が下りた——はずだった。投稿者が知らなかったことがひとつある。この教材、動作確認中に名前欄へ入力した文字は、自分で消さないかぎり初期値としてファイルに保存されるのだ。つまり投稿者が最後に打ち込んだあの一言は、教材の中にそのまま焼き付いていた。受講者が名前を入力する前の画面に、すでにその文字が入った状態で待ち構えていたのである。
750通の「ようこそ」が、一斉に開かれる
必修と書かれた社内メールは強い。真面目な社員ほど、届いたその場でリンクを開く。そして開いた全員が、1ページ目でこう出迎えられた。「ようこそ、クソ野郎」。投稿者のもとには、ほとんど間を置かずに上司たちからの画面写真が届き始めた。何が起きたのかを理解するまでに、そう時間はかからなかっただろう。
その後
投稿者はすぐ手を打とうとしたが、状況は思ったより悪かった。まず、社内のシステムでは公開した教材を削除できない。できるのは、同じ場所に修正版を上書きして差し替えることだけである。しかもこの教材はファイルがかなり大きく、直したうえで作り直して保存し終えるまでに数分かかった。その数分のあいだも、リンクを開く社員は増え続けている。並行して投稿者はメールの送信取り消しを必死に試したが、こちらもすでに手遅れだった。必修と書かれたメールは、すでに750人の受信箱の中で開かれきっていた。取り消せるのは未読のものだけで、この件に関して未読はほぼ存在しなかったのである。差し替えが終わるころには、話は完全に社内に出回っていた。投稿者いわく「明日、部門長から話があるらしい」。締めの一言はこうである。「幸運を祈っていてくれ」。誰も傷つけていないし、金銭的な損害も出ていない。それでも、いち社員が一度に700人以上を罵るという事故は、そうそう起きるものではない。
海外の反応
1. やらかし名無しさん
人に送る可能性のあるファイルには、たとえ一時的でもこういう言葉を使わないことです。癖にしてしまうと、いつか必ず自分に刺さる。自分も昔は「くだらない生物の課題」みたいなふざけた名前で保存する癖があって、そのまま提出してしまったことがあります。教授とは仲が良かったので笑って済みましたが、それ以来やめました。
2. やらかし名無しさん(>>1への返信)
一点だけ補足させてください。「人に送る予定のないファイル」でも同じです。自分は送らないつもりでも、いつか別の誰かが「これ全社で共有しよう」と決める日が来る。そうなってからでは、もう取り消しようがありません。
3. やらかし名無しさん(>>1への返信)
作業時間で料金をいただく会社にいたころ、お客様に出す見積書の表紙に「この見積の目的」を書く欄がありました。社内で確認しながら、冗談で「もっと請求できるようにするため」と入力したんです。その一行がその後どうなったかは、もうお察しのとおりです。
4. やらかし名無しさん(>>1への返信)
うちのきょうだいは、大昔にメールの差出人表示を「お前の母ちゃんは尻軽」みたいなふざけた文字列にしていました。何年もあとに大学の課題を教授へ送って、「あの、君は……お前の……母ちゃんは……という名前の人?」と真顔で聞き返されたそうです。設定したこと自体を完全に忘れていて、恥ずかしさで死ぬかと思ったと言っていました。
5. やらかし名無しさん
明日、その部門長には人生で一番面白いことをやるチャンスが回ってきていますね。呼び出した席で開口一番「やあ、クソ野郎くん」と言えたなら、その人は社内で永遠に語り継がれる存在になれます。
6. やらかし名無しさん(>>5への返信)
残念ながら、そういうユーモアを持った上の役職の人に、自分はまだ一度も出会えていません。だいたいは真顔で「再発防止策を書面でご提出ください」と言ってくる側の生き物です。
7. やらかし名無しさん(>>6への返信)
一度だけ出会ったことがあります。何週間待っても資料が出てこない部署の責任者に、つい「先延ばしって、そもそもやるつもりがある人が使う言葉ですよね」と言い返してしまったんです。部屋が静まり返って、自分も固まりました。ところがその人は大笑いして、わざわざホワイトボードにその一文を書き写した。おかげで資料もすぐ出てきました。
8. やらかし名無しさん
投稿者には本当に申し訳ないんですが、通勤電車で声が出ました。悪意はゼロ、被害者も実質ゼロ、なのに巻き込まれた人数だけは750人。ここまで規模が大きくて、なおかつ誰も損をしていない事故はなかなか起きません。
9. やらかし名無しさん
昔のコメディ映画に「やっぱりだ、俺の周りはクソ野郎だらけだ」という有名なセリフがあるんですが、あの状況が会社ぐるみで実現してしまいましたね。しかも今回は公式の研修という形で認定されている。
10. やらかし名無しさん(>>9への返信)
しかも必修なので、全員が自分の意思とは関係なくその挨拶を受け取らされている。「必修研修をしっかり受けろよ諸君」という文面が、急に別の味わいを帯びてきます。
11. やらかし名無しさん
実務的な助言をすると、「ただいま準備中です」とだけ書いた一枚ものの教材をあらかじめ作って手元に置いておくといいですよ。事故った瞬間にそれで上書きすれば、直し終わるまでの間だけでも被害を止められます。まあ、どっちに転んでもきついのは変わりませんが。
12. やらかし名無しさん(>>11への返信)
これは本当に良い助言だと思います。今回のように差し替えるだけで数分かかる仕組みだと、その数分がまるごと被害の時間になりますからね。空っぽの教材を一枚持っておくだけで、少なくとも血は止まります。
13. やらかし名無しさん
昔、作らされた機能があまりに理不尽で、プログラムの中に「これを考えた人間は正気じゃない」という趣旨の書き置きを残したことがあります。登録する前に消すつもりだったのに、深夜2時の頭でそのまま共有の保管場所へ上げてしまった。2日後には管理職3人と人事に囲まれ、設計担当者宛てに正式な謝罪文を書かされました。半年後にその会社を辞めました。
14. やらかし名無しさん(>>13への返信)
その失敗が、結果的に背中を押してくれたようにも読めます。自分も振り返ってみると、やらかした直後に動いた転職ほど条件が良くなっていました。教訓も残るし、悪い話ばかりではないですよ。
15. やらかし名無しさん
表に出す気のないものは、そもそも書き込まないことです。海外の家庭用ゲーム機で、エラー画面に開発中の内輪ネタがそのまま出てしまった例もありました。人の目に絶対触れない場所なんて、実際にはほとんど存在しません。
16. やらかし名無しさん
ポーランドの人間です。昔、大きな計算機を扱う仕事で、重要な処理がちゃんと動いているか確認する命令に好きな短縮名を付けられる仕組みがありました。キーボードで一番打ちやすいという理由だけで、私はそれを「ドゥパ」と名付けた。ポーランド語で「尻」です。担当の開発者に見つかったときは大笑いされて、「この処理にこれ以上ふさわしい名前はない」と褒められました。
17. やらかし名無しさん
株の売買ソフトを作る会社で、架空の商品を登録して売りに出す動作確認を任されたことがあります。商品名の欄に『ソイレント・グリーン』(人間が原料の食品が出てくる古いSF映画)と入れたら同僚には大受けでしたが、発注元が海外の会社で、上の人たちは誰も元ネタを知らなかったので何事もなく終わりました。
18. やらかし名無しさん
受け取った側の気持ちを代弁すると、正直これは嬉しいです。ただでさえ受けたくもない必修研修を押しつけられているところに、1ページ目でいきなり罵られる。今年一番笑った瞬間として記憶に残ると思います。ええ、私はクソ野郎で結構です。
19. やらかし名無しさん(>>18への返信)
私も同じ意見です。ああいう研修は毎年ほぼ同じ内容を早送りで流すだけの作業なので、開いた瞬間に予想外の言葉が飛んできたら、その日一日ご機嫌でいられます。むしろ受講率が上がるのでは。
20. やらかし名無しさん
笑ってしまってすみません。自分も昔、職場で口が悪すぎて上司の部屋まで歩いていく羽目になったことがあります。あれは全然面白くなくて、ただひたすら恥ずかしいだけの時間でした。それに比べれば、あなたには怒られたあとに人へ話せる面白い話が手元に残ります。
21. やらかし名無しさん
そもそも一人に4人分の仕事を押しつけている時点で、やらかしたのは投稿者ではなく上の人たちですよ。もし今回の件で職を失ったとしても、次はちゃんと一人分の仕事で済む職場が見つかるかもしれません。
まとめ
4人分の仕事に追われた末の、たった一つの消し忘れ。それが750人の受信箱に届き、上司たちからの画面写真になって一斉に返ってきた。海外の反応は投稿者を責めるどころか、「自分もやった」「むしろ受け取ってみたかった」という声で埋まっている。冗談は言えば消えるが、入力欄に残した文字は消えない。教訓としては、これ以上ないほど分かりやすい一件だった。


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