一週間まるごと休みを取って、生まれて初めて本物の真っ暗な夜空を見に行く。そのために片道8時間を運転し、勢いで約10万円の望遠鏡まで買い、宿も少し奮発した。そして現地に着いた夜、空にはこれ以上ないほど立派な満月が浮かんでいた。海外の掲示板に投稿された、誰も傷つかないかわりに計画だけが丸ごと無駄になったタイプの告白である。
※注:ビッグベンド国立公園は、テキサス州の南西の端、メキシコとの国境を流れるリオグランデ川沿いに広がる国立公園。乾いたチワワ砂漠のただ中にあり、広さは東京都の1.5倍ほどもあるのに、周囲に街の明かりがほとんどない。アメリカでも指折りの「星がよく見える場所」として知られている。
何をやらかした?
📌 一週間の休みの締めくくりとして、投稿者は片道8時間かけてテキサスの砂漠にある国立公園へ向かった。生まれて初めて完全な暗闇の星空を見るために、勢いで約10万円の望遠鏡を買い、宿代も奮発している。ところが到着した夜の空に浮かんでいたのは、満月。しかもその晩の月は、夜のあいだほとんど沈まなかった。
事の発端
一週間の休みの、いちばん最後に置いた楽しみ
投稿者は、自分でも「よく働いているほうだ」と書くくらいには働いてきた人である。その見返りとして、ついに一週間まるごと仕事を休むことにした。旅程の締めくくりに置いたのが、テキサスの砂漠にあるビッグベンド国立公園まで車を走らせて、生まれて初めて「本物の真っ暗な空」を見る、という計画だった。
街で暮らしていると、夜空はどうしても白く濁る。街灯、看板、通り過ぎる車のライト。それらが空に反射して、見えるのは明るい星がいくつか、という程度になる。投稿者が見たかったのは、その明かりが一切届かない場所の空だった。
勢いで買った、10万円の望遠鏡
そして投稿者は、出発前に望遠鏡を買った。それも思いつきで、約10万円のものを。本人いわく「その夜を心ゆくまで味わうため」である。宿も、その日だけは相場より高い部屋を押さえた。ここまでは、休暇の使い方としてはむしろ立派な部類だと思う。
やらかしの一部始終
8時間走って、荷物を下ろして、空を見上げた
片道8時間の運転を終え、投稿者は砂漠のただ中にたどり着いた。空気は乾いていて、あたりは静かで、人工の明かりは本当にどこにもない。準備は完璧だった。あとは日が落ちるのを待って、あの望遠鏡を出すだけである。
日が落ちた。空を見上げた。真ん中に、満月が浮かんでいた。
満月の夜は、街中とだいたい同じ
知らない人のために書いておくと、と投稿者は本文で説明している。満月というのは、とんでもなく明るい。星を見るという目的においては、満月の夜の砂漠は街中とほとんど変わらない。空全体が月の光でうっすら白くなり、暗い星から順に見えなくなっていく。
つまり投稿者は、8時間かけて運転し、望遠鏡に10万円を払い、宿にも上乗せしたうえで、自宅の近所で新月の夜に見上げるよりも条件の悪い空を見に来たことになる。しかもその満月は、日を選び損ねたというより、単にその日がそうだった、というだけの話だった。
その後
投稿者は怒っていない。むしろ「今ものすごく自分のことを笑っている」と書いている。明日はハイキングができるし、砂漠の静かな夜そのものは、星が見えなくたって十分にいいものだ、と。締めの一行は「満月の日に星を見に行くな」だった。
ところがそのあと、コメント欄から予想外の方向の追撃が入る。「月の出と月の入りは調べたのか」という指摘が相次いだのである。満月であっても、月がまだ昇っていない時間帯や、沈んだあとの時間帯がある。夜の頭か終わりのどちらかには、たいてい暗い空の窓が開く。一週間も滞在するなら、星を見られる夜は必ずあったはずだ、というわけだ。
これを受けて投稿者は追記した。「月の出と月の入りの話をたくさんもらったけど、今の時期の月はほぼ一晩じゅう出ている。二重にやられた」。運の悪さまで込みで完成していたことになる。
それでも旅そのものは順調らしい。コメント欄で近況を聞かれた投稿者は、外のロッキングチェアに座って蚊に刺されまくりながら、その一秒一秒を心から楽しんでいる、と答えている。望遠鏡は今夜は出さないつもりだそうだ。翌朝6時から歩く予定なのに、出したら間違いなく朝3時まで起きてしまうから、という理由だった。そして「またビッグベンドに行かなきゃいけなくなったな、と思うことにしている」とも書いている。次に来るときは、望遠鏡の扱いにも慣れているはずだ、と。
海外の反応
1. やらかし名無しさん
星の中でいちばん明るく輝いているのは、まちがいなくあなたです。脱帽しました。……ところで、その日が満月だということは、行く前に知っていたんですか。
2. やらかし名無しさん(>>1への返信)
友達が前の晩に、それっぽいことを言っていた気がする。言われた記憶はちゃんとあるのに、頭の中でまったく結びつかなかった。今思えば、あれが最後の警告だった。
3. やらかし名無しさん
下調べが足りなさすぎる。月の出と月の入りというものがあって、満月でも月がまだ昇っていない時間帯や、沈んだあとの時間帯が必ずある。一週間いるなら、暗い空になる時間帯は絶対にあるはずだよ。
4. やらかし名無しさん(>>3への返信)
あなたは学者であり、聖人です。本気で助かった。今の今まで、満月の日は一晩じゅう月が出っぱなしなのだと思い込んでいた。
5. やらかし名無しさん(>>3への返信)
昼間に月が見えることがあるのは、まさにそれが理由なんだよね。太陽と月は別々に動いているから、月が空に出ている時間は一晩まるごとより短いことのほうが多い。日没の数時間後にはもう沈んでいる日もある。自分もこれを知ったのは今年に入ってからだった。
6. やらかし名無しさん
その望遠鏡で、月そのものは見てみた? 満月の月面って、それだけで十分に見応えがあるよ。自分も新しいレンズで昨夜撮ってみたけど、望遠が足りなくてクレーターの細かいところまでは写らなかった。
7. やらかし名無しさん(>>6への返信)
いいね。ただ今夜は出さないでおく。朝6時からハイキングに出る予定だから、望遠鏡なんて出したら間違いなく朝3時まで起きている自信がある。
8. やらかし名無しさん
自分はジョシュアツリー国立公園(カリフォルニアの砂漠にある公園)に、わざわざ月の出を見るためだけに行ったことがある。最高に良かったよ。自然は星以外にもいろいろ見せてくれるし、月だってすごい天体だ。せっかくだから満喫してきて。
9. やらかし名無しさん(>>8への返信)
ちゃんと満喫してる。今まさに外のロッキングチェアに座って、蚊に死ぬほど刺されながら、その一秒一秒を愛しているところ。
10. やらかし名無しさん(>>9への返信)
コーヒーの出がらしを缶に入れて焚くと蚊が寄ってこない、という動画をこの前見た。あとは刺されたあとのかゆみ止めを持っておくといい。それでも刺されるだけの価値がある夜なのは間違いないけど。
11. やらかし名無しさん
正直に言うと、これだけの時間とお金と手間を星空に注ぎ込んでおいて、その日が満月かどうかを確認しないのは、さすがにまぬけだと思う。調べるのに10秒もかからないのに。
12. やらかし名無しさん(>>11への返信)
それはもう、言われても仕方ない。ただ、だからといってこの旅行を台無しにする気はないよ。まぬけだったのは事実として、砂漠の夜は今も普通に良い。
13. やらかし名無しさん
まあ望遠鏡はもう手元にあるわけで、次の機会のための準備だけは完璧に整ったってことだよ。新月の夜にもう一度来ればいいだけの話。むしろ買っておいてよかったまである。
14. やらかし名無しさん(>>13への返信)
まさにそれ。「あーあ、またビッグベンドに行かなきゃいけなくなったな」という気持ちで処理することにした。そのころには望遠鏡の扱いにも慣れているはずだし。
15. やらかし名無しさん
あと、暗いところで手元を照らすときは普通の懐中電灯じゃなくて赤いライトを使うといいよ。白い光を一度浴びると、目が暗さに慣れ直すまでにまた何十分もかかるから。
16. やらかし名無しさん
せっかくその辺りにいるなら、マクドナルド天文台(テキサス大学が運営している天文台)にも寄ってみるといい。一般向けの星空観望会をやっていて、月が明るい夜の回もちゃんと面白いよ。
17. やらかし名無しさん
ビッグベンドにいるなら、リオグランデ川を手漕ぎのボートで渡ってメキシコ側に行ける場所があるよ。タコスを食べて戻ってくるだけなんだけど、テキサスでやったことの中で一番笑えた。あとはマーファ(現代美術の拠点として、そして正体不明の光の目撃談で知られる小さな町)も、金曜の夜は妙に楽しい。
18. やらかし名無しさん
去年の3月に同じ旅をした。6月に引っ越す予定だったのに、新月とうまく重なる日が一日もなくて絶望した記憶がある。あのとき初めて、月の周期がこっちの都合と完全に無関係にずれていくことを実感した。よくできてるよ、本当に。
19. やらかし名無しさん
たぶんその望遠鏡、月以外はそこまでよく見えないと思う。逆に言えば満月の月面はものすごく映えるから、今夜はむしろ当たりの日だよ。月が沈んでいる時間帯に出せば、肉眼では見つけられない銀河なんかも狙える。スマホを空にかざすと今どこに何があるか教えてくれるアプリを使うと探しやすい。自分は朝4時に起きて砂丘に寝転がったことがあるけど、あれは一生忘れない。
20. やらかし名無しさん
夜にそこで迷子になった知り合いがいる。砂漠は目印になるものが少ないうえに、暗くなると足元も見えなくなるらしい。明るくなってから自力で戻ってきたからよかったものの、話を聞いた限りではけっこう肝が冷える体験だったみたい。
まとめ
一週間の休みと、片道8時間の運転と、勢いで買った10万円の望遠鏡。そのすべてが、たった一晩の満月に持っていかれた。しかも今回の月は、ほぼ一晩じゅう沈まないというおまけ付きである。コメント欄は「調べれば10秒だったのに」という手厳しい声と、「月の出の時間さえ狙えばまだ間に合う」「望遠鏡はもう買ったんだから次がある」という助け舟に割れたが、当の本人はロッキングチェアで蚊に刺されながら笑っていた。旅の良し悪しを決めるのは、たぶん空の明るさではない。

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