去年買った3万円ほどの小さなギター。音は気に入らないし、チューニングはすぐ狂う。だから投稿者は、もっと良い1本に買い替えるために、それを楽器店の下取りに出した。買い取り額は思ったより良かったし、新しいギターは文句なしだった。ひとつだけ計算に入っていなかったのは、そのボロいギターで1年間、毎晩8歳の息子に子守唄を歌ってきたということである。
※注:この話に出てくる「下取り」は、アメリカの大型楽器店では当たり前の商習慣。古い楽器を店に買い取ってもらい、その額をそのまま新しい楽器の値引きに充てる仕組みで、買い取り価格は中古相場よりかなり安く付く。「グレッチ ジム・ダンディ」は、本体が小ぶりで軽い、いわゆるパーラーギター(膝に乗せて抱えられる小型のアコースティックギター)の入門機。金額は1ドル=約150円で換算している。
何をやらかした?
📌 8歳の息子に毎晩それで子守唄を歌っていた、3万円の小さなギターを下取りに出してしまった。買い取り額は約1万6千円。代わりに手に入れた新しいギターは、音もチューニングの安定も文句なしで、投稿者はすっかり満足していた。ところがその夜、暗い部屋で歌っている最中に、息子が声を上げて泣き出した。「あのギターを取り返してほしい」。
事の発端
借り物のボロギターから、3万円の小さな1本へ
投稿者にはこの春で8歳になる息子がいる。もともとギターは友人から借りた古い1本を使っていたのだが、これがとにかく弾きづらく、手に取る回数がだんだん減っていた。そこで去年、動画サイトのレビューをいくつも見比べたうえで、安くても評判の良さそうな1本を自分で買うことにした。
選んだのが、グレッチのジム・ダンディという小ぶりなギターだった。色はダークチェリーレッド。値段はおよそ200ドル、日本円にして3万円ほど。安いことは安いが、借り物より格段に抱えやすく、見た目もかわいらしい。投稿者はこれをきっかけに、また日常的にギターを弾くようになった。
毎晩の子守唄と、拭えない不満
それからというもの、投稿者は毎晩このギターを抱えて、息子が眠りに落ちるまで歌い続けた。弾いて、歌って、寝息が聞こえたらそっと部屋を出る。息子がどこまで真剣に聴いているのかは分からなかった。半分は寝る前の環境音みたいなものだろう、くらいに思っていた。
ただ、楽器としてのジム・ダンディには、はっきりした不満があった。まずチューニングが合わせづらい。しかも、やっと合わせても長くもたない。そして何より、音色が投稿者の好みではなかった。自分でも「この音が嫌いだ」とはっきり書いている。
弾く回数はこれまで持ったどのギターより多く、コードを押さえて歌うだけの使い方ではあったけれど、それでも毎晩付き合う相手としては、どうしても引っかかるものがあった。
やらかしの一部始終
259ドルの一目惚れと、思ったより高い下取り額
投稿者は数週間かけて、近所の大型楽器店に通ってアコースティックギターを見ていた。予算はもう少し上げてもいい。派手なものはいらないが、チューニングが狂わず、もう少しまともな音がするもの。ヤマハなら安価な価格帯でも作りが良い、という評判も後押しになった。本当にこれだと思える1本があるなら、800ドル(約12万円)までは出す気でいた。
そして数日前、一目で気に入った1本に出会う。驚いたことに値札は259ドル、約3万9千円。抱え心地も音も申し分なく、チューニングは合わせやすいうえに、合わせたまま狂わない。予算のはるか手前で理想に当たってしまった。
そこで店員から、古いギターを持ち込めば買い取ってもらえて、その分だけ新品が安くなると聞かされる。ただでさえ安い1本が、さらに安くなる。投稿者はジム・ダンディを車に積んで店に向かった。
提示額はせいぜい50ドル(約7,500円)だろうと思っていた。どうせ新しいギターが来れば、あれをもう一度弾くことはない。家から出してしまえばいい。そう考えていたところに、店から出てきた数字は105ドル。約1万6千円で、買ったときの半額以上が戻ってくる計算だった。
投稿者は売却に同意した。その上さらに1割引きが乗って、新しいギターは掘り出し物と言っていい値段になった。手続きを済ませた帰りぎわ、投稿者は店の壁に吊るされたジム・ダンディをもう一度だけ見た。あのギターで、息子に何曲歌っただろう。少しだけ寂しくなって、やっぱり手元に残そうかとも思った。ただ、そこまでする理由を自分に説明できず、そのまま店を出た。
「ギター2本になったね」
家に帰った投稿者は、妻と息子に新しいギターを見せた。自分でも惚れ惚れする1本で、息子も気に入ったようだった。ところが息子が「これでギターが2本だね」というようなことを言ったので、投稿者は「古いほうはもうないんだ」と答えた。
そのときの息子の顔が、妙だった。がっかりしたような、悲しいような、うまく言えない表情。息子は自分でギターを弾くことには一切興味がない。それでも「前のギターが好きだったのに」「まだあってほしかった」と口にした。
投稿者は面食らった。息子はあのギターの話をしたこともなければ、触ろうとしたことすらなかったからである。
その後
その夜、絵本を読み終えたあと、投稿者はいつものように暗い部屋で歌い始めた。新しいギターの響きが心地よかった。息子は少し鼻風邪気味で、ときどき妙な音を立てていたが、体調のせいだろうと思っていた。しばらくして、投稿者はそれが泣き声だと気づく。息子は声を殺して、激しくしゃくり上げていた。
理由を尋ねると、息子は「前のギターがいなくなったのがさびしい」と答えた。新しいほうが音がいいのは分かるし、これも好きだ。でも前のほうが好きなのだ、と。どこが良かったのか聞いても、息子は「分からない」としか言えなかった。
泣き声はどんどん大きくなった。手元の新しいギターがかえって息子を追い詰めているように見えたので、投稿者はそれをしまった。息子は「売らないでほしかった」「ただ、取り返してほしいんだ」と繰り返した。
やがて妻が部屋に入ってきて、息子をなだめた。投稿者も長い時間、隣で話し続けた。さびしい思いをさせてごめん。まさかこんなに悲しませるとは思わなかった。新しいギターにした理由はこうで、これならもっと上手に弾いてあげられるんだよ。それでも息子は泣き止まず、投稿者はとうとう自分では慰めきれずに部屋を出た。
10分ほど経った頃、息子が投稿者のいる部屋に入ってきた。そして膝の上に座り、自分から話そうとした。投稿者に言わせれば、これはかなり大きなことである。この子は、大きな感情を言葉にするのがいつも苦手なのだ。
投稿者は、あのギターのどこがそんなに好きだったのか、もう一度だけ言葉にしてみてほしいと頼んだ。息子はこう答えた。
「パパ、ぼくが寝るときに、ずっとたくさんの歌を弾いてくれたでしょ。1年分くらいの歌。だからぼくは、ただあれが好きなんだよ。ただ、取り返してほしいんだ」
1年間歌い続けたギターはもう手元になく、息子の心は折れていて、その原因は自分にある。あのとき数分だけ迷ったとおりに手元へ残していれば、どのみち歌うのは新しいほうだったのだから、こんなことにはならなかった。それが分かるだけに、投稿者はやりきれなかった。
妻はこの一件をあまり理解していない。「単なるモノへの執着でしょう」という受け止め方だった。投稿者はそれを否定した。息子が手放したくないのはモノではなく、そのモノにくっついた1年ぶんの時間のほうだ、と。
最終的に投稿者は、息子にこう伝えた。店が買い取ってくれた値段で売り戻してもらえないか、聞くだけ聞いてみる。ただし、店が仕入れたものに利益を乗せて売るのは商売として当たり前なので(そのしくみを息子に説明するところから始めなければならなかった)、店頭価格をそのまま請求されたら、それは払えない。それと、何がどうなっても新しいギターは手放さない。ごめん、そして、パパの歌がそんなに大事だったなんて、本当にうれしいよ。
1万6千円か、少し上乗せした程度で買い戻せるなら、そうするつもりでいる。たぶん無理だろうと思いつつ、約束はできないと息子には伝えてある。投稿者の書き込みは「今もひどい気分のままだ」という一文で終わっている。
海外の反応
1. やらかし名無しさん
まだ売れてなければ、あの店は普通に売り戻してくれると思う。だから急いで戻ったほうがいい。ただ、1万6千円で買い取ったなら、店頭では2万3千円くらいを提示してくる可能性が高い。少し損は出るけど、息子さんのためならその価値はあるんじゃないかな。
というかこの話を読んで、自分もあの小さなパーラーギターが気になってきた。1本買ってしまいそう。ギターは2本あって困るものでもないし、いつか息子さんと並んで弾く日が来るかもしれないよ。
2. やらかし名無しさん(>>1への返信)
店の人にこの経緯をそのまま話してみたらいい。どうして取り戻したいのかを聞けば、買い取り額と同じ値段で戻してくれるかもしれない。
3. やらかし名無しさん(>>2への返信)
それは正直あまり期待できないと思う。あそこは全米チェーンの大企業で、利益を出すために動いているのであって、人情で商売しているわけじゃない。よくて少し値引きしてくれる程度じゃないかな。
ただ投稿者は元々12万円まで出す気だったわけで、そこから考えれば追加の7千円くらいは痛手というほどでもない。ちなみに中古のジム・ダンディを調べてみたけど、2万3千円を切るものはほとんど出てこない。だいたい3万円前後だった。
4. やらかし名無しさん(>>3への返信)
自分なら2万3千円でも取り返しに行くよ。差額の7千円が今後の人生で持つ意味より、あのギターが息子さんにとって持っている意味のほうが、どう考えても大きい。
5. やらかし名無しさん(>>2への返信)
逆に「この客はどうしても欲しいんだな」と足元を見られて、7万円くらい言われる可能性もある。
子どもがここまで参っているのは気の毒だけど、これはむしろ「1年分の歌はギターが生んだんじゃなくて、パパが弾いて歌ったから生まれたんだよ」と伝える機会になると思う。あの子が本当に好きなのはギターじゃない。
6. やらかし名無しさん
あの手の大型店は、下取りで引き取った楽器を実際に店頭に出すまで2週間の猶予期間を置くことになっている。数日前の話なら、たぶんまだ倉庫か壁にそのまま残っているよ。
7. やらかし名無しさん(>>6への返信)
自分の住んでいる州だと、盗品として届けが出ていないかを確認するために、下取り品は30日間そのまま保管する決まりになっている。地域によってはもっと余裕があるかもしれない。
あと、これは別の解決策だけど、ギター本体と同じくらいの費用はかかるにせよ、糸巻きの部品を交換すればチューニングは合わせやすくなるし、狂いにくくもなる。手放さずに直すという道もあった。
8. やらかし名無しさん
自分が子どものころ、母がギターを弾きながら歌ってくれていた。それが今でも人生で一番いい思い出のひとつになっている。母が歌っていたのは英語圏の子守唄の定番曲で、あのときどんな気持ちだったかを、四十を過ぎた今もはっきり覚えている。
投稿の内容とは直接関係ないけれど、思い出させてくれてありがとう。
9. やらかし名無しさん
息子さんが恋しがっているのは、たぶんギターそのものというより、あなたがあれを抱えて歌っている光景と、そのときの空気ぜんぶなんだと思う。あのギターは二人のあいだをつないでいたものだった。
もし手元に残していたら、あの子は何十年も持ち続けて、見るたびにあの夜を思い出したかもしれない。いつか自分の子どもを寝かしつけながら、これはおじいちゃんがパパに歌ってくれたギターなんだよ、と話す日が来たかもしれない。気持ちはすごくよく分かる。
10. やらかし名無しさん(>>9への返信)
うちにあるのは、子どものころ父が弾いていたギターのほうだ。父が後から自分に買ってくれた、性能で言えば明らかに上等な1本ではなく。
それに、最初のギターの音そのものに、あの子だけが感じ取っている特別な質があるのかもしれない。まだ言葉にできないだけで。
11. やらかし名無しさん
8歳だぞ、本人にとっては人生を揺るがす一大事だよ。とりあえず今の1本で1年分のレパートリーを全部録音して、家族用のアルバムにしてしまえばいい。あの子が守りたいのは音のほうなんだから、形にして残してやれば通じるものはあるはず。
あとは前向きでいること。二人ともそのうち乗り越えられるって。
12. やらかし名無しさん
その子はちゃんと大丈夫になる。親の役目は、子どもをあらゆる負の感情から守り抜くことじゃなくて、いろんな感情を安心して味わえる場所を用意してやることだと思っている。
引っ越し、飼っていた動物との別れ、仲のいい友達の転校、両親の不仲。どの子も何かしら通る道で、この子にとってはそれがたまたま大好きなギターだった。それは別に、悪いことじゃない。
13. やらかし名無しさん
子どもにとって、変化を受け入れるのは大人が思うよりずっと難しい。あの子の頭のなかに一生残る絵は、あの安っぽい赤いギターと、毎晩それを抱えて歌ってくれた父親の姿なんだよ。
14. やらかし名無しさん(>>13への返信)
でも今は、少し違うギターで思い出を積み直せる機会でもある。無理に買い戻さなくても、これから一緒に新しい記憶を作っていけばいい。
あの子がつらいのは、たぶん「いつの間にか消えていた」という部分だと思う。相談もされないまま(気持ちを知らなかったんだから仕方ないけれど)、お別れを言う機会もなかった。だから一緒に店へ行って、壁に吊るされているのを見せてあげるのも手ではある。最後に1曲だけ弾かせてもらえないか頼んでみてもいい。ただ、逆にもっとつらくなる子もいるから、そこはあなたが一番よく分かっているはず。
ついでに、下取りというしくみを教えてあげるのもいいと思う。あのギターはこれから、そんなに高い楽器を買えない別の家の子が、最初の1本として手に入れるんだよ、と。
自分は子どものころ、兄がギターを練習する音で眠りに落ちていた。その何年かで兄は何本も持ち替えたけれど、自分の記憶は特定のギターじゃなく、兄と、音そのものに結びついている。
15. やらかし名無しさん
あなたはいい父親だ。すぐ店に戻って、あのギターを息子さんのために買い戻してこい。
そして買い戻した最初の夜、歌い終わったところでベッドの端に叩きつけて粉々にし、人生でもっとも重要な教訓を教えてやるといい。この世は喪失と絶望に満ちている、と。
なお自分に子どもはいないので、たぶん子育てとはこういうものだと思う。
16. やらかし名無しさん(>>15への返信)
それをやるなら、まずザ・フー(ステージの最後に楽器を叩き壊すのが名物だった英国のロックバンド)のカバーを何曲か覚えるところからだな。作法というものがある。
17. やらかし名無しさん
あなたが大人で、彼が子どもだ。子どもが変化を飲み込むのに時間がかかるのは当たり前だとして、ここで何を学ばせるかという話になる。
これから先、予期しない変化が起きるたびに、この子はどう処理していくんだろう。元の状態に戻るまで泣き崩れるのか。それとも起きたことを受け止めて、慣れて、自分の感情を扱えるようになるのか。
これは二人にとっての学びの時間だと思う。人生に変化はつきものだし、予告なしにやってくるものはもっと多い。毎晩のあの時間が二人にとって大事だったことは、もう十分に証明された。あとは形を変えながら、一緒に育っていけばいい。あなたはちゃんとやっているよ。
18. やらかし名無しさん
かわいそうに、生まれて初めての失恋みたいなものだな。あなたのせいじゃないよ、知りようがなかったんだから。
本音を言えば「買い戻さないほうが人生の勉強になる」と書きたいところなんだけど、こちらも親なので、店の人に事情を話したら同じ値段で譲ってくれることを願ってしまう。うまくいくといいな。
19. やらかし名無しさん
ひとつ引っかかっているんだけど、そもそも12万円まで出す気で探していたんだよね。それが3万9千円の1本に決まって、下取りと割引でさらに安く済んだわけで。
だとしたら、店に定価で買い戻してくれと言われたところで、当初の予算からすればまだ全然下じゃないか。そこで「それは払えない」となるのが、正直よく分からない。
20. やらかし名無しさん
変化は人生の一部で、これはその練習をするいい機会だと思う。本人たちが揃って「こっちのほうが出来が悪い」と認めている物に、わざわざお金を払い直すより。
それに、子どもが感情を爆発させるたびに何か具体的な行動で応える必要はない。抱きしめて、どうしてそう感じたのかを一緒に言葉にする。それで足りている場面のほうが多い。
古いギターにお金を使うのはやめて、いい楽器で新しい思い出を作って、人は前に進めるんだということを見せてあげてほしい。
21. やらかし名無しさん
みんなの言っていることには賛成だし、自分でも同じことをすると思う。
ただ、うちの息子だったら、翌日にはきれいさっぱり忘れて何事もなかったように過ごしている可能性もそこそこある気がしている。あの日はただ、鼻風邪と眠気で全部の感情が決壊しやすくなっていただけ、というのもありうる。
22. やらかし名無しさん
本当にいい話だし、思い出の値段だと思えば買い戻すのはそう難しくもなさそうだ。
とはいえ公平を期して言うと、自分もそのくらいの年齢のとき、家の冷蔵庫を買い替えたときに泣いた。冷蔵庫に何の思い入れがあったのか自分でも謎なんだけど、中身を出してマグネットを剥がしていくあいだ号泣していたのは覚えている。しかもなぜか、電源が抜かれて運び出されるまで、その冷蔵庫のそばにずっと座っていた。最後の時間に付き添っているつもりだったんだろうか。子どもの感情というのは、本当によく分からない。
まとめ
音色が気に入らず、チューニングも狂いやすい3万円のギター。買い替えるにあたって下取りに出したのは、どう考えても合理的な判断だった。ところがそのギターには、8歳の息子が1年かけて溜め込んだ「毎晩の歌」がまるごと乗っていた。父親のほうも、店の壁に吊るされたそれを見て一度は迷っている。あと数分踏みとどまっていれば、何も起きなかった。
コメント欄は真っ二つだった。急いで買い戻せ、事情を話せば売ってくれる、という声と、ここで戻してしまうと「変化には慣れるしかない」という一番大事な学びを取り上げることになる、という声。加えて、そもそも子どもが好きなのはギターではなく父親が弾いて歌ったことのほうだ、という指摘や、翌日にはケロッとしている説まで出た。
それでも読んでいて残るのは、8歳が自分から膝に乗ってきて、うまく言えない気持ちを必死に言葉にしたあの一言のほうである。1年分の歌。もし皆さんが同じ立場だったら、店に電話しますか。


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