「ナレーションの声が、なんとなく違う」授業で安全教育ビデオを流した先生が気づいたときには…

「ナレーションの声が、なんとなく違う」授業で安全教育ビデオを流した先生が気づいたときには… 職場

「せっかくだから、授業でちょっと気の利いたことをしよう」。人前で何かを教えたことのある人なら、一度は思ったことがあるはずだ。海外の掲示板に投稿されたのは、工業系の専門学校で教えている人の告白。その日の授業のテーマにぴったりの、業界では知らない人がいない安全教育ビデオを流そうとした。動画サイトで検索し、見覚えのあるサムネイルをクリックし、教室のスクリーンに映す。ここまでは完璧だった。問題は、再生が始まった動画が本物ではなかったことである。

※注:「デルタP」は水中での「圧力の差」を指す現場用語であり、同時に、その差がどれほど危険かを教える実在の安全教育ビデオの題名でもある。途中にカニが水中パイプの穴へ吸い込まれて消える場面があり、これがインターネットで有名になった。そのため、元の映像はそのままに、解説音声だけをまったく別の内容に差し替えた改変版がいくつも出回っている。今回はその改変版のうち、かなり下世話な内容のものを引いてしまった、という話である。

何をやらかした?

📌 工業系専門学校の教員が、空気圧のしくみを教える授業で「圧力の差」の話題になり、有名な安全教育ビデオを教室のスクリーンに流した。ところが再生されたのは、元の映像に下世話な解説音声を当て直した改変版。ナレーションの違和感に気づいたときにはもう手遅れで、学生は大爆笑、教員は顔から火が出る思いのまま授業時間を過ごすことになった

事の発端

空気圧の授業で出てきた「圧力の差」

投稿者は工業系の専門学校で教えている。その日の授業は、空気の圧力を使って機械を動かすしくみの回だった。装置のどの部分で圧力がどう変わるのかを計算していくうちに、話は自然と「そもそも流体はどうやって流れるのか」という基本に戻っていく。

空気にせよ水にせよ、流体がある場所から別の場所へ動くためには、その二点のあいだに圧力の差がなければならない。圧力が高いほうから低いほうへ、差の分だけ押し流される。現場ではこの圧力の差のことを、頭文字を取って「デルタP」と呼ぶ。デルタ(Δ)は差を表す記号、Pは英語で圧力を意味する pressure の頭文字である。

「せっかくだから、あの動画を見せよう」

この圧力の差は、潜水作業の世界では命に直結する。水中の構造物やパイプに穴が開いていて、その内側が外の水より低い圧力になっていると、水は差の分だけ猛烈な勢いで穴へ突進する。近くにいるものは、人だろうと何だろうと同じ流れに引き寄せられる。しかも水の中では、穴の存在も流れの向きも目で見て分かるとは限らない。

その危険を教えるために作られたのが『デルタP』という安全教育ビデオである。10分ほどの長さで、潜水や配管の世界では定番中の定番。とくに、パイプの穴の上をカニが横切った瞬間、そのまま吸い込まれて消えてしまう場面は、動画の中身を知らない人でもどこかで一度は目にしているくらい広まっている。

「圧力差の話をしているんだから、あれを見せない手はない」。投稿者はそう考えた。教科書の数式だけでは伝わりにくいことが、短い映像なら一発で伝わる。気の利いた授業になるはずだった。

やらかしの一部始終

サムネイルは、確かに見覚えのあるものだった

投稿者は動画サイトを開き、検索欄に「Delta P」と打ち込んだ。並んだ一覧の中に、記憶にあるとおりのサムネイルがある。迷う理由はなかった。クリックして、教室のスクリーンに映す。

映像は普通に始まった。ただ、ひとつだけ引っかかることがあった。ナレーションの声が、どうも記憶と違うのである。しゃべり方の調子もなんとなく違う。「思っていたほど出来のいい動画ではなかったかな」——投稿者はその程度に受け流し、そのまま再生を続けた。

「これは違う」と気づいたときには、もう手遅れだった

やがてナレーションは、圧力とも潜水ともまるで縁のない方向へ話を転がし始めた。安全教育とは何ひとつ関係のない下世話な話を、大真面目な口調のまま、堂々と語り出したのである。投稿者はそこでようやく理解した。これは本物ではない。元の映像に、まったく別の音声を当て直した改変版だ。

とはいえ、教室にはすでに学生が座って画面を見ている。ここで唐突に止めれば、それはそれで「今のは何だったんですか」になる。投稿者はとっさに、いちばん見せたかった場面——カニが吸い込まれるところまで早送りした。あそこだけ見せて切り上げれば、被害は最小限で済む。そういう判断だった。

これが、この日いちばんの判断ミスになった。ナレーターは、圧力に差があると吸い込みが起きる、というところまでは至極まっとうに説明する。カニがパイプの穴の上へ移動し、次の瞬間には消えている。そこまでは本物と同じである。ところが直後、改変版のナレーターは、カニが「異次元送りになって二度と戻ってこない」と、下品な言い回しでにぎやかに実況し始めたのだった。

※注:「異次元送り」は原語では「ファントムゾーン」。映画『スーパーマン』シリーズで、悪党を閉じ込めておく別次元の牢獄を指す言葉である。

学生たちは死ぬほど笑っていた。そして投稿者のほうは、恥ずかしさで死にそうだった。本人の言葉である。

その後

投稿者は掲示板への書き込みの最後に、問題の改変版へのリンクまで律儀に貼っている。おかげでコメント欄では、どの動画なのかが即座に特定された。「その動画なら知ってる」「あの改変版を作っている人は伝説だ」「途中でやめずに、腹をくくって最後まで流し切るべきだった」——同情よりも先に、その動画への愛が並ぶという展開になった。

そして何人もの人が、同じことを指摘している。この失敗は、授業としてはおそらく成功しているのではないか、と。人間の頭は、真面目に説明されたことより、笑ってしまったことのほうをよく覚えているようにできている。あの教室にいた学生たちは、圧力に差があると吸い込まれるという一点を、たぶん一生忘れない。本物の教材を粛々と流していたら、こうはならなかった。

とはいえ、そこから引き出せる教訓ははっきりしている。授業や会議で動画を見せるなら、事前に自分で一度、最後まで再生しておくこと。冒頭だけ確認して安心するのでは足りない。改変版というのはたいてい、序盤ほどまともな顔をしているものだからである。

海外の反応

1. やらかし名無しさん
それ、たぶん例のあの人の改変版だよね。元の映像に自分でデタラメな解説音声を当て直す動画で有名な投稿者がいるんだ。貼られたリンクを見たら、やっぱりそうだった。というか、あそこは腹をくくって最後まで流し切るべきだったと思う。

2. やらかし名無しさん(>>1への返信)
あの改変版、冗談抜きで自分が今まで見た中でいちばん出来のいい安全教育ビデオかもしれない。全編ふざけているのに、圧力の差というのは怖いものだという一点だけは、なぜかきっちり伝わってくる。

3. やらかし名無しさん(>>2への返信)
声を聞いた瞬間に分かった。工場の製造工程を紹介する番組をふざけて吹き替えることで有名な人と同じ声だ。本物のナレーションらしい落ち着いた調子はそのまま保って、中身だけを全部でたらめにするのが本当にうまい。

4. やらかし名無しさん
悪いことばかりでもないと思う。授業で見せられた映像の中身なんて普通は三日で忘れるのに、これだけは絶対に忘れないやつだ。教える側からすると、うらやましいくらいきれいに定着している。

5. やらかし名無しさん(>>4への返信)
本物のほうを見せていた場合より、確実に頭に残っていると思う。教育効果という一点だけで採点するなら、これはむしろ大成功の部類だよ。先生が払った代償が大きすぎるだけで。

6. やらかし名無しさん(>>4への返信)
実習中に誰かが「異次元送りになるぞ」と叫んで、全員がいっせいに開口部から離れる光景が目に浮かぶ。安全標語としてはむしろ理想的な出来では。

7. やらかし名無しさん
元の動画のほうは、何が起きているのかを理解してから見ると普通に怖い。カニがあのあとどうなったかを想像すると笑うどころじゃないので、初見の学生には改変版のほうがかえって優しかった可能性すらある。

8. やらかし名無しさん
圧力の話を真面目にすると、こういうことになる。水の中では、上にある水の重さがそのまま下の物にのしかかる。だから深い場所ほど圧力は大きい。パイプの中が外より低い圧力だと、その差の分だけ水は穴へ向かって突進していく。カニはたまたまその通り道にいただけで、抵抗する手立ては最初から何もなかった。

9. やらかし名無しさん(>>8への返信)
分かりやすい。要するに、水面から1メートルの場所にある穴なら大した勢いにはならないけれど、湖や海の底となると話がまったく変わるということだよね。同じ大きさの穴でも、深さ次第で危険度が桁違いになる。

10. やらかし名無しさん(>>8への返信)
柔らかい生き物ほど、穴の形に合わせて押し込まれてしまうというのが、地味にいちばん嫌な部分だと思った。硬い物なら引っかかって止まるところが、そうならない。

11. やらかし名無しさん
先生には同情するけれど、授業で動画を使うなら一度は自分で通して見ておくべきだったとは思う。「検索して上のほうに出てきたから」で再生ボタンを押すには、教室というのは人の目が多すぎる。

12. やらかし名無しさん(>>11への返信)
それはそうなんだけど、この動画に限っては本物と改変版でサムネイルがほとんど同じなんだよ。しかも冒頭の数分はまともに解説している。事前に頭のところだけ確認して安心していたら、同じ罠にきれいにはまっていたと思う。

13. やらかし名無しさん
うちの学校でこれをやったら、翌日には保護者から連絡が入って始末書コースだと思う。専門学校で相手が大人だったのは不幸中の幸いだよ。笑い話で済む環境かどうかは、けっこう運の要素が大きい。

14. やらかし名無しさん(>>13への返信)
分かる。学生の年齢と学校の空気次第で、これは「面白い先生」にも「問題のある授業」にもなる。まったく同じことをやって、片方は語り草で片方は処分というのは理不尽だけれど、現実にそうなんだよな。

15. やらかし名無しさん
ちなみに、もしフォークリフトの安全教育をやることがあったら、こっちは本当におすすめできる映像がある。ドイツの短編で、主人公の運転手が次から次へと大惨事を引き起こしていくやつ。特撮に妙な気合いが入っていて、最後までまったく飽きない。

16. やらかし名無しさん(>>15への返信)
日本語だと『フォークリフト運転手クラウス』と呼ばれているやつだよね。ただ念のために言っておくと、あれは安全教育ビデオの体裁を借りた完全なパロディ短編で、本物の教材ではない。とはいえ、見た人が全員フォークリフトを警戒するようになるという意味では、そのへんの本物よりよほど効いている。

17. やらかし名無しさん
古い安全教育映画には、この手の妙に有名になった名作がいくつかある。アメリカの建設機械メーカーが作った、直訳すると「危険と握手する」という題の短編も、その筋では語り草だ。作り自体は大真面目なのに、事故の場面の演出が濃すぎて、逆に頭から離れなくなる。

18. やらかし名無しさん
そもそも、あの改変版を「安全教育ビデオ」として語る流れになっているのが面白い。作った本人はただふざけたかっただけのはずなのに、結果として世界でいちばん多くの人に圧力差の危険を教えた動画になっている可能性がある。

19. やらかし名無しさん
笑わせてもらった。学生さんもきっと同じ気持ちだったと思う。授業でこういうことが起きた日って、その回で習った内容よりも、起きた出来事のほうを何十年も覚えているものだから。

20. やらかし名無しさん
自分が学生の側だったら、たぶんその瞬間から先生への好感度が跳ね上がっている。何もかも滞りなく完璧に進めてくる先生より、ああいうときにちゃんと恥ずかしがってくれる先生のほうが、人として信用できる気がする。

21. やらかし名無しさん(>>20への返信)
逆に、顔色ひとつ変えずに「はい、では続けます」と何事もなかったように授業を進める先生も、それはそれで一生語り継がれるやつだと思う。どっちに転んでも伝説になる場面だ。

まとめ

授業を面白くしようとして選んだ定番教材が、よりによって下世話に作り替えられた改変版だった——という、教える側なら誰でも背筋が寒くなる失敗談。コメント欄は同情するより先に「その動画なら知っている」「最後まで流し切るべきだった」と盛り上がり、途中からは圧力の差がなぜ危険なのかという真面目な解説まで出てきた。「事前に通して見ておくべき」という正論と「あのサムネイルでは見分けがつかない」という擁護が両方あったのも、いかにもありそうな話である。恥ずかしさと引き換えに、学生たちの記憶にはたぶん一生残った。

元ソース: 授業で間違った安全教育ビデオを流してしまった

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